概要:ボロン・ザカブとは
ボロン・ザカブ(Bolon Dz'Acab)とはマヤ神話において王の親族や血統を司る神です。
時に稲妻や蛇神として描かれます。「ボロン・ツァカブ(Bolon Tz'Acab)」とも呼ばれています。語義は「9代目の者」を意味し、爬虫類のような顔と伸びた上唇が上にまくれあがった鼻を持つ姿で描かれます。一般的に煙の立っている煙草や斧、鏡を持っており、時に下半身(や右足)が蛇の姿となり裸婦と交わっている姿で描かれています。マヤ古典期においては「カウィール(K’awiil)」と呼ばれ、バカブの一人ホブニルと同じく東と暦日「カン」を担当しています。イツァムナーはチャクと関連して描かれることが多く、ボロン・ザカブはアステカ神話のテスカトリポカに相当・前身となる神と考えられています。
物語
世界の創造と人類誕生の準備を扱うマヤ創世神話において重要な役割を雷光として果たします。
「ポポル・ヴフ」(グアテマラのスペイン征服以前にキチェ族の人々によって書かれた説話。「民衆の書」と訳される。他の多くの資料がスペインのコンキスタドールによって焚書されている中で残存した貴重な資料)の宇宙論では、三柱の稲妻の神は原始の海から地球を創造し、動物を人々に変えます。
チラムバラムの予言書の中で、ボロン・ザカブは種と同一視されています。
雨の神々やその稲妻がかつてトウモロコシ山を開け、トウモロコシの種を人類が利用できるようにしました。
カウィール(K’awiil)
ボロン・ザカブがその名で呼ばれるようになったのはスペインによるマヤ文明征服後であるとされています。
ボロン・ザカブは元はカウィールという名だったそうですが、詳細はスペインのコンキスタドールによって焚書されています。
カウィルまたはカウィール(K’awiil)とは稲妻、蛇、繁殖力とトウモロコシで識別されるマヤの神です。彼は、大きな目、長くて上向きの鼻、そして細くなった蛇の歯や鏡(や虫眼鏡)の頭を特徴としています。通常、煙や葉巻が彼の額から出ており、蛇の足は稲妻を表しています。
稲妻は「雨の神・農耕神」と「王や王の戦争・戦神」の両方を象徴しています。
カウィール(K’awiil)のカ(K’a)は象形文字的に「強力な」を意味する単語であり、ユカテクの文章では神の称号とされています。
カウィールはまた、陶磁器からしか知られていない謎めいた古典的な場面にも登場します。
そこでは身体の一部を大蛇と化し、貴族の若い裸の女性と絡み合い、交尾をしているように表現されています(彼の右足が蛇と化しているように見えることと、テスカトリポカの右足は蛇の義足なのだという説から、両者の関連性が補強されているようです)。
当然のことながら、その場面の意味は神話的というよりは儀式的なものです。
関連するパレンケの資料では稲妻の模様と蛇行した脚を持った赤ん坊を抱いている王(女王)も描写されています。
カウィールは「無数の世代」の約束をする神であり、その「王の就任、王位への加盟の儀式」がパリコーデックスに図解されています。
カウィールの稲妻は王や戦争の力の具現だけではなく、農業の繁栄をもたらす力も象徴しています。
稲妻の神は穀物神、特にトウモロコシとカカオの種の神でした。カウィールはしばしば奇妙な存在感を持つ「穀物の袋」として描かれています。
外部資料
俗説
世界中にある竜蛇神の神話、特に「人に知恵や文化を授ける蛇」の正体は、古代人類を導いた宇宙人や恐竜の末裔である爬虫人類であるという陰謀論や都市伝説があります。
ボロン・ザカブの稲妻は、破壊者の力だけでなく、雨で育まれる「種」(農業以外にも支配者の血統、品種改良した人類の樹系図)の象徴とされます。
同じメソアメリカ文化のアステカ神話で人類を導いたケツァルコアトルと対立するテスカトリポカの元型はボロン・ザカブであるという説から、竜蛇の戦いは、人類の導き手である同じ神(宇宙人、恐竜人、先史文明人)の方針の違いによる対立だという陰謀論もあります。
マヤ・アステカ文明を支えた川はセノーテ(地下水脈網)であり、これは恐竜絶滅を引き起こしたユカタン半島の巨大クレーターに由来しています。
竜蛇神の多くは雷や嵐や災害を伴って飛来し、人類に知恵や災厄をもたらす存在として語られています。
ボロン・ザカブは「種」の神でもあり、ひょっとしたら動物を品種改良して人類を生み出した宇宙人やその装置なのかもしれません。
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