概要
マッチ棒は本来、黄燐マッチと呼ばれるそれ単体で発火可能な代物であった。黄燐マッチはその辺の石などで擦れば簡単に発火するのだが、黄燐の発火点はたったの34℃であり、夏場はポケットに入れて持ち歩くだけで火が上がるほど危険だった。何でそんなに危険なら開発時期に気付かなかったんやねんと突っ込みたくなるがそれはさておき、1830年に発明された黄燐マッチはその発火点の低さと毒ガスの発生原因となることからたちまち廃れることになる。
以降は発火しにくいマッチを創ることが重要視され、19世紀半ばにはマッチの軸に硫黄、マッチ箱に赤燐を塗った赤燐マッチ(安全マッチ)が開発された。
現在のマッチは全て赤燐マッチであり、箱と棒軸の摩擦により着火を可能とする。危ないので学校の理科実験でも使わなくなっており若い人に使えない人が多いとか。
「マッチ」の種類
現代でも利用されているもののみを取りあげる。
- SAW
Strike AnyWhere(どこでも擦れる)の略。頭薬の上に発火剤が塗られており、名前の通り専用の側薬のみならずどこで擦っても着火する。アメリカ等で今でも販売されている。その外見からバードアイマッチとも呼ばれる。
「トムとジェリー」等のアメリカンカートゥーンで時折見られる、適当にそこらでマッチをこすって着火するシーンは、このマッチを念頭に置いていると思われる。
- ブックマッチ
櫛形に切れ込みの入った厚紙に頭薬を塗った廉価なマッチ。素材特性上側薬にこすりつける程度の耐久性を持たないため、1本ごと引きちぎって「表紙」と側薬面で挟み込み引き抜くことで着火する。現代においてはどちらかと言うと広告素材としての運用の方が多い。
ちなみに、20世紀半ば頃のように成人が喫煙していることが普通のことだった時代はリンク先の動画(YouTube)の様な洒落た着火のやり方もあったようだ。
- 防水マッチ
頭薬を蝋でコーティングし、耐水性を持たせたマッチ。あくまで頭薬が濡れても着火能力を失わないというだけであり、水中で着火できる訳では無い。
- オイルマッチ
パーマネントマッチとも。フリントを中心に通した金属製の筒に芯を通したものと、これにオイルを浸透させるためのタンクから成る。タンクにオイルを満たした上で芯を漬け込み、充分に浸透した所でタンク脇のヤスリと軸のフリントをこすり合わせて着火する。原理的にはオイルライターと同じ。
- メタルマッチ
広義の「マッチ」とは原理が異なるものであるが便宜上取りあげる。単純にファイアスターター(着火器)とも呼ばれる、火口に対して着火を行うことを主目的とする器具。マグネシウムの塊と、フリント部から成る。火口に対して専用のヘラやナイフ等でマグネシウムを削ってその粉を作り、それに対してフリントで火花を放つことで着火、火口へと引火させるものである。マグネシウム塊がフリントも兼ねている形のものもある。マグネシウムよりも容易に激しい火花が出せるフェロセリウムを用いているタイプもあるが、価格はやや高価。