概要
アメリカ合衆国のアリゾナ州に19世紀末頃に現れ人を襲ったという怪物と、その背に乗っていたのは骸骨であったという怪談。
1883年、イーグルクリークにある牧場に、二人の男が見回りに出かけているときにそれは起こった。
留守番をしていた妻は、犬の吠え声と誰かの叫び声を聞いて窓の外を見ると、悪魔のような者を載せた赤い毛を生やした大きな獣が歩いてるのを目撃して、驚いて扉に鍵を掛けて隠れたのである。
しかし男達が家に帰ると、外出していたほうの妻は、何か大きな生き物の蹄で踏み殺されていたのだった。
残された足跡をたどると、茂みの中に赤い毛が落ちており、その数日後には近くで砂金を探していた探鉱者のキャンプが何者かに引き裂かれ、そこにも赤い毛が落ちていた。
さらにその数日後には、背丈が30フィート(約9m)もある怪物に2台の荷馬車が倒され、その場にはやはり赤い毛が落ちていたのだという。
カウボーイたちはこの怪物を投げ縄で捕らえようとしたが、ほとんどの者は地面に引き倒されて殺されてしまったといわれる。
その後、この怪物はグリズリーを殺して食べ、追いかけると空中に消えていったと、非現実的な特徴が語られはじめるが、共通してその背には白骨化した人間が乗っていたという証言があった。
目撃されてから数ヶ月後に、5人の男達が遭遇して銃撃すると怪物は逃げ去ったが、背に乗っていた骸骨の頭は撃ち落とされ、まだ頭髪と皮が残っていることが確認された。
その骸骨の正体については諸説あるが、下記の部隊に配属されたいつまでたっても乗るのが不得意だった若い兵士であるとされ、仲間が上達させるために縛り付けたところ、乗ったものごと砂漠に逃亡してしまったために、乗り手が死した後にも放浪していたとまことしやかに語られている。
今でもアリゾナ州の砂漠では、頭が無い骸骨を背中に乗せた、赤い毛を生やした怪物が放浪しているのだともいわれている。
異説
下記の部隊から相棒として買い取ったジェイクという探鉱者が骸骨の正体で、採取した砂金を街に売りにきたことからポール・アダムズという悪党に目をつけられ、鉱山で射殺されたために亡霊となってつきまとい、最終的にアダムズ一味は保安官に自首したという伝承もある。
正体?
この怪物の正体とは、乾燥環境にある西部開拓のために陸軍長官ジェファーソン・デイビスの提案によって30,000ドルの予算を使って設立された、ラクダを運用する実験部隊がモチーフとなっていたといわれている。
1855年に開設されたラクダ部隊は当初はうまくいっていたものの、南北戦争によって継続が難しくなり、ラクダたちは売却または放棄されてしまったので、アメリカ西部ではしばらくの間、野良化したものが徘徊していたのである。
1893年にマズー・ヘイスティングスという農夫が庭で餌を食べているものを射殺するまで、レッドゴーストは人気の怪談であったという。
そのため別名「レッドゴーストキャメル(Red Ghost Camel)」や「ゴーストキャメル(Ghost Camel)」とも呼ばれる。
なお射殺されたラクダの背には、人が乗るための革製のストラップとサドルがきつく固定されており、それによってすれた傷があったといわれているため、背中に白骨死体が乗っていたという伝承の理由ともされている。
余談
- ラクダ・グアナコ・ビクーニャはバクやウマや他の生物と共に北アメリカが故郷であり、キャメロプスが最後まで生き残っていたが、他の多くのメガファウナと共に人間に滅ぼされたと考えられている。現在も野良化したラクダやリャマがアメリカやメキシコに少数が生息しているが、これとは別に「リワイルディング」の一環として本格的にこれらのラクダ類を北アメリカに「再導入」するべきだとする声も少なくない。