「ロボット コマンドゥ」とは、イギリスの出版社「ペンギン・ブックス」から出版されていたゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第22弾「ROBOT COMMANDO」の日本語版タイトルである。出版社は社会思想社。
作品解説
ある惑星の、ある世界。
そこでは、巨大な恐竜が棲息していた。そして、恐竜の被害から人々を守るため、そして恐竜を飼いならすため、様々な形式や形状の巨大なロボットが建造され、実用化されていた。
ロボットは恐竜に対する防御や飼育の他、鉱石の採掘や、建築や土木作業、物資の運搬など、あらゆる作業に用いられてきた。そしてもちろん、人間同士の戦争にも。
主人公=君が住む国は「タロス」。
そして君は、多くのタロス国の国民が従事しているように、恐竜飼いの仕事に就いている。
このタロス国と敵対しているのが、軍事国家カロシアン。カロシアンもまた、タロス同様に様々なロボット……特に軍事用のそれを開発し運用、タロスと対立していた。
ある日の朝。恐竜飼いの君は朝食を食べ終えて、仕事に向かおうとした時。部下の一人がキッチンに入り込み、そのまま眠ってしまった。
起こそうと試みるも、彼は起きない。外に出てみると、目につくのは眠り込んだ人々の姿。
ラジオをつけると、途切れ途切れに聞こえてくるのは「タロスの国民が皆眠っている」「カロシアンの攻撃」「眠った者は起きられない」という言葉。
君は仕事場に赴き、部下たちや友人に冷たい水をぶっかけたりして、なんとか起こそうとするも……やはりだめだった。
そして、頭上にはカロシアン国のロボジェットの姿。君はこれで、事態を悟った。
カロシアンは何らかの方法で、タロスの国民たちを眠らせてしまったのだ。……君をのぞいたすべての人々を。何らかの理由で、君一人だけが眠る事を免れ、こうやって目を覚ましていられるらしい。
それから数時間。敵の通信や情報や事実の断片から、君は状況を組み立てていった。
これまでカロシアンの指導者・ミノスは、事あるごとにタロスを侵略しようと試みていたが、タロスの擁する勇敢な兵士や軍隊、それに多くの軍事用戦闘ロボットに対して攻撃する事は避けていた。
そこで、スパイを用いて強力な眠り薬をタロス中に散布し、目論見は成功した。
ミノス自身の命令も聴いた。現在、無力化したタロスをカロシアンのエリートたちが侵略している。そしてこれは始まりにすぎず、ミノスはタロスに略奪の限りを尽くすだろう。
タロスの富とロボットは全てがミノスのものとなり、人々は奴隷にされる。
だが、たった1人とは言え、起きているタロス人がここにいる。
君は父親の残した古い剣を腰に止め、ロボットの格納庫へと向かった。カロシアンの侵略軍を止められるのは、君一人しかいないのだ。
シリーズ22弾。
「電脳破壊作戦」から4作目、SF……というか、再びタイタン以外、ファンタジー以外のジャンルである。
著者はスティーブ・ジャクソン(米)。アイデアマンである彼らしく、今回は「バトルテック」を彷彿とさせる、ロボットものジャンルである。
舞台となるタロス国は、平原の中に各都市が存在している。
たった一人眠らずに済んだ主人公は、それら都市を行き来しつつ、この状況を解決するための手がかりを探していくという、双方向性の作りになっている。一度赴いた場所は、再訪できるのだ(とはいえ、状況が変化するために無事とはいかないが)。
本作の特徴は「搭乗式ロボット」が多数出てきて、それらをいろいろ乗り換えて移動し、戦闘する事、この点に尽きる。
このようなロボットが存在するのは、タロスには恐竜が多く生息しており、これらへの対処と、飼いならすための道具として……という、シンプルな理由付けもされている。
また、ロボットの中には元ネタが感じられる機体も多く見られ、それを探していくのも楽しみの一つである。
戦闘ルールは、等身大での剣での戦闘(通常のシリーズ同様、技術点と体力点とを用いる)の他、ロボットに搭乗する事での戦闘がある。
ロボットには、体力点に相当する「装甲点」が設定され、その他に「速度」と「戦闘用ボーナス」「特殊能力」が存在する。
技術点は搭乗者のものになり、戦闘時には相手にも技術点が設定されている。そして等身大戦闘と同様に戦闘を行い(その際、戦闘用ボーナスがあればそれに従いプラスまたはマイナスを行い)、相手の装甲点を減らしてゼロにした方が勝ちである。
使用できるなら、特殊能力も使用できる(特別な武器の使用や、変形機能や、回避能力など、様々なものがある)。
また、ジャクソン(米)らしく、本作はマルチエンディングであり、難易度もそれほど高くはない。半面、ややストーリーの方は弱く感じられるが、それでも「様々なロボットを駆って、恐竜や敵国のロボットと戦っていく」事を楽しめる点は大きい。
ファンタジー以外のジャンルでも、このような斬新な作品が出せるという、ファイティングファンタジーシリーズの底力を感じさせる、佳作の一つである。
登場人物
主人公=君
本作では、タロス国の国民で、恐竜の牧場を経営しているらしい。
格納庫には、人型と飛行型の二種を待機させている。
ミノス
敵国カロシアンの指導者。
大きな体の逞しい男。縮れた黒ひげを生やし、制服には金箔をちりばめ、モールの飾りも付けている。
タロス国と敵対し、隙あらば侵略しようとしていた。眠り病のカプセル散布で国民全員を眠らせる事で、侵略に成功。主人公のみ起きている事を知らずに、タロスの政府所在地である首都に主力基地を展開し、陣取っている。
好戦的な軍人上がりらしく、自身も専用のロボット「スーパー戦車」に搭乗し、選択次第では主人公のロボットと対決する。
登場ロボット
この世界観では、恐竜が存在し、恐竜に対抗するために種々雑多なロボットが開発され、運用されているという設定である。そして対恐竜戦のみならず、国家間の戦争における兵器としても用いられている。
また、恐竜自体は多くが飼いならされてはいるものの、野生の恐竜は数多く存在している。野生の大型恐竜は、肉食のみならず草食であっても、極めて危険な存在である。そのため、全てのロボットには防御用の砲が搭載されている。
カウボーイ・ロボット
人間型をしたロボットで、歩行型。獰猛な恐竜に対処するための武器を搭載しているが、戦争用ロボットほど強力ではない。カウボーイロボットは通称で、正式名称は「マーク5A万能型」。恐竜を相手にするのに「カウ」ボーイロボットと呼ばれている。民間に最も多く運用されている型らしい。
表紙にて、ティラノサウルスと戦っているロボットは、このカウボーイ・ロボットと思われる。
ドラゴンフライ・モデルD
トンボにそっくりの、飛行型ロボット。唸る翼をはばたかせて飛行するが、その分装甲は薄い。操作性が良く、超高速で飛行する事が可能。
※開始時には、上記二体のうちどちらかを選択して搭乗する。
スーパー・カウボーイ・ロボット
カウボーイ・ロボットの上級タイプ。通常のカウボーイ・ロボットよりも重武装かつ重装甲で、大型の恐竜を扱う時に用いられる。軍事用の戦闘ロボットと、ほぼ同程度の性能を備えている。
恐竜誘導用に、通常の砲とともに「音波発生器」を搭載している。
掘削用ロボット
巨大なブルトーザーに、リフト用のマニピュレーターを側面に取りつけたような形状をしている。前面にはブルドーザーのブレードが、後方にはパワーショベルが装備。後方のパワーショベルで攻撃すれば、非常に命中しにくいものの、通常の三倍のダメージを与えられる。
カニ・ロボット
タロス国の首都で使用されている、貨物用ロボット。
カニに似た形状で、荷物を持つ二つのハサミ状のマニピュレーターを持ち、八本足で移動する。胴体部には大量の荷物や装備を運ぶことができる。
建設用ロボット
タロス首都にて、建設現場で使用されていた作業用大型ロボット。下半身は八輪の大型車両で、上半身の四本腕はあらゆるものを処理できる。劇中では、恐竜からの防御専用砲だけを持って登場した。
トライポッド・ロボット
タロスの燃料工場で使用していた作業用機械で、警備用にとカロシアン人が徴発した。箱型の胴体を三本足が支え、銃器や様々な装置を操る金属の触手を備えている。その動きは素早い。
歩行ロボット
タロスにて、民間の旅行用に製造されたロボット。自動車のような胴体部に、長い四本脚とマニピュレーターを備えた形状をしている。その脚部で、どのような地形も楽々進んで行ける。
ハリネズミ・ロボット
対空戦闘用の発射装置とミサイルを装備した、タロスの対空迎撃・防衛用ロボット。全体に鋭い武器で覆われている形状から、ハリネズミ・ロボットと呼ばれている。
元は飛行型恐竜への対空防御戦力として開発されたが、同様に飛行型ロボットに対しても効果がある。
サーペントⅦ
巨大な蛇のような形状のロボット。その形状から、ジャングル内では高速で移動が可能。頭部に折りたたみ式のマニピュレーターを備えている。タロスのジャングルにて、恐竜に巻き付き捕獲するために開発された。
足高ロボット
丈の高い、骨組みの華奢なロボット。ビル上層部の塗装および各種作業のために製造された。そのため、手足は非常に細く長い。戦闘には全く向かない。
穴掘りロボット
ドリルタンクロボット。しかし地中を掘削し進行する以外の機能は無く、装甲も薄い。防御砲もなく、マニピュレーターも無い。挿絵に描かれているデザインはこれに酷似している。
ロボット・カー
娯楽用にデザインされた、小型の四輪車。戦闘には全く不向き。
農場用ロボット
農業に用いる、作業用ロボット。カウボーイ・ロボットよりも戦闘には向かない。
ワプス戦闘機
タロス軍の実験戦闘機。流線型の超高速ロボット戦闘機で、装甲は薄いが操作性が髙く、攻撃によっては相手に対し、自動的に二回のダメージを与える事が可能。
機動兵Ⅺ
タロス軍の標準タイプの戦闘ロボット。ミュルミドンと同じく、歩行型のヒューマノイド形態と、戦闘機形態とに変形できる。機能的、形状的にこのロボットを連想させるが、性能はミュルミドンよりこちらがやや上。
ミュルミドンにはない防御用シールドを有し、こちらの攻撃力が髙ければ、ダメージを受けずに済む事がある。
戦車ロボット
タロス軍が擁する、精鋭の最前線用マシーン。機動兵Ⅺと同様に、最強クラスの戦闘能力を有する。
戦車の下半身に、巨大な人型ロボットの上半身を取り付けた形状をしている。その姿に違わず、低速ではあるが重装甲で強力なパワーを有する。
下半身には戦車同様に、二門の強力な主砲を装備。片方は通常の攻撃用の砲だが、片方は特殊音波砲で、全部で三度使用できる。使用すると、無防備な人間は即死、ロボットや恐竜相手にも、大ダメージを与える事が可能。
ロボット・ティラノサウルス
タロス、「産業」市のロボット実験センターにて、ティラノサウルスを模して開発されたロボット。操縦者がおらずとも、搭載された破壊指向のあるプログラムから、フルオートで活動する事が可能。挿絵のデザインでは、これのこれに極めて似ている。
戦闘機ロボット
カロシアンで使用されている、戦闘機のロボット。矢のような形で、足を延ばし着地は出来るが、人型への変形機能はなく、歩行も出来ない。
クラッシャー・ロボット
カロシアン軍で運用されている、要塞および塹壕の破壊用ロボット。ヒューマノイドタイプだが、巨大な両足を持ち、それを用いて押しつぶす事が攻撃方法。通常のカウボーイ・ロボットより二倍は大きく、防御用の砲も搭載していない。
命中するたびに、二倍のダメージを相手に与えられる。
ミュルミドン
カロシアン軍の標準タイプの戦闘ロボット。歩行型のヒューマノイド形態から、戦闘機の飛行形態に変形する事が可能。挿絵では、どこかこのロボットに似たデザインをしている。
バトルマン
カロシアン軍の重装甲戦闘ロボット。ミュルミドンと異なり非変形型のヒューマノイドタイプだが、攻撃力が多い場合、追加ダメージを相手に与える事が可能。
スーパー戦車
カロシアンのミノスが操縦する、最大かつ最強のロボット兵器。人型はしておらず、とてつもなく巨大で不格好とさえいえる戦車で、巨大な主砲が搭載している他、いたるところに小型砲が格納されている。そのため、交戦した場合、ラウンドごとに勝っても負けても相手にダメージを与える事が可能。
万能型ロボット
カロシアンの一般使用タイプのロボット。ヒューマノイドタイプで、特筆すべき性能や装備は有していない。劇中に登場した時には、半壊した状態で出て来た。モチーフはこれと思われる。
登場恐竜
本作では、当然ながら恐竜も多く登場する。
中には首長竜や翼竜といった恐竜以外の爬虫類も登場するが、それらもひっくるめて、広義で恐竜としている(なお、「ザウルス」の表記は原文ママ)。
ティラノザウルス
最初に、主人公の牧場から「産業」市へ赴く際、ドラゴンフライを選ばずカウボーイ・ロボットを選んでいた時に岩場で遭遇する。この世界でも「恐竜の帝王」と呼ばれているなど、特別視されている様子。
プテラノドン
「知識」市に向かう際に遭遇。飛行型にしては大型とのこと。
トリケラトプス
「知識」市の恐竜保護地区にて遭遇する、三本角の角竜。
二頭同時に登場し、攻撃してくる。(なお、この項目の挿絵でトリケラトプスと戦っているロボットは、型式や名称は不明だがこの作品のこのロボットに酷似している)。
タイロザウルス
「嵐」市の海岸から海中にて遭遇する、海竜の一種。巨大な爬虫類と鮫の混血のような恰好をしており、足の代わりにひれ状の水掻きを持つ。
ブロントザウルス
「嵐」市の海岸で、大群で海草を食んでいた。基本的に人に慣れており、ロボットで近づくとゆっくりとした動きで離れていく。ただし、発砲するとパニックになり暴走する事も。
イグアノドン
「ジャングル」市近くにて遭遇する、二足歩行の草食恐竜。タフで重量があり、トゲの着いた腕の親指は絶好の武器。
ノトザウルス
「ジャングル」市で遭遇。腐肉あさりの四本足の海棲爬虫類。
アンキロザウルス
「ジャングル」市にて、ジャングル内で遭遇する四足歩行の恐竜。小型で草食だが獰猛で、身体のあちこちが鎧状、尻尾の先端は大きな骨の塊があり、矛のように振り回し叩き付ける。
対戦する場合、搭乗しているロボットが二足歩行、または四足歩行のロボットの場合、戦って攻撃を受けたら転倒する。起き上がるためには次の戦闘ラウンドは防御のみの扱いになり、勝っても起き上がるだけでダメージを与えられない。
タロス各都市
「産業」市
燃料生成工場やロボット実験センターが存在する都市。普段は賑わっている。
実験センターでは、兵器開発や新型ロボットの設計・開発が行われている。
「知識」市
タロスで最高の大学や博物館が揃っている。医科大学、タロス博物館、恐竜保護区、軍事大学がこの都市には存在する。知識を得る必要が生じたら、この都市を訪ねるのがベストである。
「ジャングル」市
比較的小規模だが、探検家・植物採集家・野生愛好家といった者たちの拠点となる都市。郊外には広大なジャングルが広がっており、野生の恐竜がこの都市の通りにまで出てくる事がある。
また、ジャングル内には食人植物などが生息しており、ロボット無しで歩き回る事は自殺行為。
「娯楽」市
タロス国のリゾート地域。飛行場やゲームセンターが常設されている。ゲームセンターのゲームの中には、実験用戦闘機ロボットのシミュレーションにも匹敵するものが存在する。
「嵐」市
タロスの海岸べりにある、美しい都市。しばしば激しい雷雨に打たれる。
気象庁が存在し、気象情報を得るならばここが最適である。
「宗教」市
全体が聖堂、神殿、教会、墓地などのために作られている。市内にある神殿は「平和」「恐怖」「無」「栄光」の四つが存在する。
ガーディアン市
軍事防衛都市。場所は公開されておらず、その情報を知って訪問しようとしても、簡単には入れない。劇中でも主人公は、この状況下でもレベル0(自由度がかなり低い)でしか訪問を許されなかった。ただし、強力な戦争用ロボットへの乗り換えは、この都市でしかできない。
首都
タロスの政府所在地。気品のある白い大理石の建物が立ち並ぶ。
国立病院、国会議事堂、国立宝物殿の他、運動場が存在。眠りで市民を眠らせたカロシアン軍とミノスは、この首都を占領し、前線基地としている。
関連項目
モチーフ元。