曖昧さ回避
- 大日本帝国海軍の海大3型a潜水艦4番艦の事。 → 伊号第百五十八潜水艦で解説
- 大日本帝国海軍の巡潜乙型改二潜水艦3番艦の事。 → 本項で解説
概要
終戦直前にアメリカ海軍重巡洋艦「インディアナポリス」を撃沈したことで有名。
艦型は「巡潜乙型改二潜水艦」。
横須賀海軍工廠で建造、就役は1944年9月7日と太平洋戦争末期。戦時急造型で、船体内殻は軟鉄になる、主機械も低出力のものになるなど割り切った造りであった。設計上は水上偵察機1機を運用できたが、実際に搭載されたことはない。
伊号第五十八潜水艦に搭乗した回天特攻隊は輸送船団を目標に3度に渡り計5本の回天で攻撃し、敵側を混乱こそさせたものの戦果はなかった。
太平洋戦争開戦時に、同名の潜水艦が鬼怒麾下の第四潜水戦隊に存在していたが、そちらの伊号第五十八潜水艦は、1942年5月20日付けで伊百五十八と改名された。
太平洋戦争の末期には奇しくも回天の輸送に従事、終戦まで戦い抜き、同じ日、同じ場所で、米軍によって海没処分されており、共に長崎県の五島列島沖の海に眠っている。
最後の連合国艦艇撃沈
1945年7月29日午後11時半過ぎ、伊号第五十八潜水艦はマリアナ近海で、テニアン島へと原爆輸送任務を終えてレイテ島へ向かっていたアメリカ海軍重巡洋艦「インディアナポリス」を捕捉した。
伊号第五十八潜水艦の艦長・橋本以行(はしもと・もちつら)中佐は、敵艦を完全に捕捉しているため通常魚雷で対処可能と判断、夜間であったこともあり「回天」出撃は取りやめとなった。
30日、午前零時頃、伊号第五十八潜水艦は魚雷6本を発射。そのうち3本がインディアナポリスの右舷前部に命中。第二砲塔弾薬庫が誘爆し、わずか15分で艦前方から沈没した。
しかも、急激な浸水により電気系統が失われてしまい、SOS信号がわずか1回しか発信できず、乗組員の救助が遅れ、食料の欠乏、精神錯乱、低体温症、サメの襲撃等によって、インディアナポリス乗組員1119名中、生存者は316名にとどまった。
大型艦撃沈で伊号第五十八潜水艦の乗組員の意気は揚がったが、「回天」搭乗員は「なぜ我々を発進させてくれなかったのか」と橋本艦長に抗議した。
伊号第五十八潜水艦によるインディアナポリス撃沈が、日本海軍による最後の連合国艦艇の撃沈記録である。
橋本艦長は「アイダホ型戦艦撃沈確実」と報告したが、自らが沈めたこの艦がインディアナポリスであったこと、そしてその艦が広島市・長崎市に投下された原子爆弾をテニアン島に輸送したのちに、レイテ島に移動中だったことを知ったのは戦後であった。
この件に関してインディアナポリスのチャールズ・B・マクベイ艦長が軍事裁判に掛けられる事態にまで発展し、伊号第五十八潜水艦の橋本艦長は必死に擁護したが、マクベイ氏は有罪となり1968年に拳銃自殺した。京都・梅宮大社の神主となっていた橋本氏は後にテレビ番組のインタビューに応じ、インディアナポリスの沈没後に適切な情報管理がなされず乗組員が多数殉職した責任を、全てマクベイ艦長に擦り付ける流れが尋問中に作られていた事を語っている。
1997年、映画「ジョーズ」でインディアナポリス撃沈事件に興味を持ったハンター・スコット(当時11歳)により、マクベイ氏の軍法会議の誤審が提起された。2000年10月30日、アメリカ合衆国議会はマクベイ氏を無罪とする決議を可決し、その名誉は回復された。橋本氏は5日前に死去していたため、その知らせを聞くことはなかった。
時は流れて
2017年5月25日、五島列島沖深さ約200mの海底に潜水艦が突き刺さっている様子を撮影したと、浦環(うら・たまき)九州工業大特別教授らが発表した。
旧日本海軍「伊58」? 海底に突き刺さった潜水艦発見(ライブドアニュース)
この潜水艦は伊号第五十八潜水艦に艦形が似ているが、該当箇所には戦後米軍に接収された旧日本海軍の潜水艦が20隻以上海没処分されており、この時点では特定にまでは至らなかった。
後に同年8月22日~25日に行われたdwango、ラ・プロンジェ深海工学会、情報通信研究機構による合同調査プロジェクト「『伊58』特定プロジェクト」及びその後の解析調査によって、最終的には海底に斜めに突き刺さっている潜水艦こそが伊号第五十八潜水艦である事が判明した、と9月7日の報告調査会見にて発表された。
伊号第五十八潜水艦をモチーフにしたキャラクター
- 伊58(艦隊これくしょん)@艦隊これくしょん ― 潜水艦娘として登場する伊号第五十八潜水艦を擬人化したキャラクター。
- 伊58(アズールレーン)@アズールレーン ― 伊号第五十八潜水艦を擬人化したキャラクター。