健忘
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けんぼう
一定期間内の記憶の一部または全体が思い出せない状態。
(50音順)
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It's painful to smile already, I want to stop. Ⅱ
今、咲也は、自分のことを、全く知らない。他の人のことは、散々憶えている癖に。 全生活史健忘とは、精神障害(解離性障害)の一つで、自分に関するもののみを全て忘れてしまった、という場合が圧倒的に多く、他人に関することまで忘れたというのは少ないから、自分だけがただ異質なものに映ってしまっている。それが、さらに、咲也を苦しめないと、良いんだけど…… その、きっかけを作ってしまったのは、紛れもなく、この俺、なのだと。それが、どれだけの大罪で、どれだけ謝罪しても、きっと何の贖罪にもならない。 今、咲也は、笑顔がないどころか、今まで大切だと思っていたMANKAIカンパニーのことさえ何も興味を示さない。まるで自分の意志が消えたから、他に目を向ける気など、全く以て関心がないと言わんばかりで、それが、俺をさらに苦しめる。今まで、あんなに、何事も一生懸命だった子が、何も関心を示さなくなったことを、俺は、他のMANKAIカンパニーのメンバーに、どう伝えれば良いの。単に、怒られるだけだったなら、甘んじて受けることができただろうな。でも、こうなってしまった以上、みんなは、優しいから、俺は、さらに、苦しい。 でも、もっと苦しかったのは、咲也だったのに、こうして、自分の保身に走っている俺が、とても恥ずかしい。1,111文字pixiv小説作品 - It's painful to smile already, I want to stop.
It's painful to smile already, I want to stop.
咲也から、笑顔を消したのは、間違いなく、この場にいる、俺なのだと。 だから、咲也が、再び笑顔を取り戻すのは、他の誰でもない、俺の役割なんだ、と。1,111文字pixiv小説作品 - It's painful to smile already, I want to stop.
It's painful to smile already, I want to stop. Ⅴ
そろそろ朝食を作るかって時、至さんから、電話がかかってきた。いつもなら、電話なんてかけてこないから、その時点で、何かあるなと思って、すぐ電話を出た。千景さん曰く、あいつは残業があって、出先機関の近くのホテルを取って出張に行ってるよ、と言われていた。そんな至さんが、何か急用で、俺に電話をかけてきた。だから、その時点で、千景さんの話しは、そこで、ようやく嘘だったと、気付く。だから、面倒くさそうな態度を取りつつ、至さんの急用とやらが、知りたかった。 俺と電話をして、至さんの一言目が、俺と連絡が付いたことへの安堵感だった。ということは、何か、不安なことがあったという証明になる。まぁ、俺的には、悪魔の証明だと思ってるけどね!でも、至さんの声音は、そこまで明るくなく、寧ろ、暗い。それこそ、至さんが、ガチャでドブっている時より、遥かに暗かった。 そこで、至さんが、話しやすいように、用件を聞く体を取ったら、何と、今日から、2日前、至さんが、寮に帰ってこなくなった、あの日。至さんは、何らかの方法で、咲也と合流して、ストリートACTをしていて、それが終わった後、至さんを庇って、咲也が車に轢かれたと、言う。その声は、今にも、泣きそうな声にも、聞こえた。 それで、俺は咲也の容態が気になった。それで、流れで、至さんに問うた。生憎、身体には大きな怪我もなく、入院が長引くということはなさそうだった。でも、頭部外傷を負った、と聞いて、サーッと血の気が引いた。頭部外傷を受けたとなれば、当然、気になるのは、後遺症のことだ。至さんの何とも煮え切らない態度が、俺をイラつかせたが、でも、ふと気付いた。至さんが咲也との話しをしていた際、至さんは、こう言った。 『咲也が至さんを庇って』起きた事故であると。だから、責めるにも、責められず。寧ろ、今、とても罪悪感に満ちていることに気付いて、俺は喉元から相手を責めるような言葉を出てこようとするのを何とか止めた。 でも、聞き出せることなら、至さんの口から、事情を聞き出そうと思った。でも、至さんは、曖昧な表現しかしてこなくて理解に困った。 至さん曰く、咲也は、何をするにも意欲が起きないということを説明してきたのだが、いまいち状況が上手く掴めない。それに、至さんは、口で説明するより実際に見にきて欲しいと、訴えかけた。その方が、いち早く状況を把握できるだろうと。その上で、昨日、どうやら病院に行ったらしい、月岡さんと高遠さんに、事情を聞けば状況把握はできるから、その2人に聞いてみて、と至さん。何とか古市さんにも、この状況を伝えた方が良いだろうと、判断した俺は、何とか、至さんに、咲也が、交通事故に遭ったことを伝えても良いかと尋ねる。これには、さらに、煮え切らない態度を取るものの、至さんもそれが、最適解であることを理解したのかな。嫌そうに、頷いた。そんなに、怒られることが怖いのか。でも、どの道、古市さんには、寮にいるみんなは、気付いてしまうだろう。だったら、早く情報を共有した方が良いと判断した俺は、電話を切って、多分、この時間が高遠さんの朝のジョギングタイムだったから、早めに談話室に向かった。 でも、咲也のことが気になって、朝食を作ろうにも身が入らず、昨日、作ろうとしていたものが上手く作れず、なんか別のものを作ってしまい、何だかなぁと、思いながら、玄関を眺めながら、様子を窺っていると、古市さんの方が、先に来てしまい、何やら怪しい動きをしている俺が、気になったのか、何かあったのかと尋ねてくる。だから、ひとまず、先に、古市さんに、事情を話し、だから、高遠さんに、事情を聞きたいんです、と答えるに、留める。でも、意外にも、古市さんは、話しを内密にしていたこと自体は、それが、最適だったと、寧ろ、ようやく自分の言葉で伝えられるようになったことを評価していた。 それで、高遠さんが帰ってくるまで、朝食作りに協力してくれた。そして、高遠さんが、帰宅した時、事故の詳細のことを、今、咲也の身に、起きていることを、教えてくれた。その際、高遠さんは強く言った。今の至さんは、誰かに断罪されたいと、強く思っている。決して、至さんが悪い訳じゃないのに、と。 それは、念の為に聞いてみた、月岡さんも同じく至さんが、悪い訳じゃないのに、何故だか自分を責めてしまう。だから、ガツンと、自分のことを、責めてしまう至さんに、ハッキリ伝えてやって、と。俺たちも言うことは、言ったんだけど、俺に、そんな連絡をするなら、多分、まだまだ罪の意識は、消えていないと。だから、お願いします、と寧ろ、自身の頭を下げながら、頼んできた。 そして、何より咲也くんを、よろしく頼むね!と、言われた。俺たちも協力は、惜しみなくするつもり。寧ろ、今の咲也は、誰かの補助がないと、生活するのも大変なのだと聞いた。それが、実際、咲也の様子を窺って、判断した結果なら、それが、正しいのだろう。 俺は、そんな話しを聞いていて、至さんがようやく、ヘルプを出せるようになったのはこの2人のおかげなのだと嫉妬した。でも、ようやく自分の言葉で、言えるようになって、ヘルプを求めたのは、他の誰かでもなく、この俺なのだと思うと、何だか感慨深いものを感じた。ここは、春組の≪家族≫の一員として、何としてでも協力してやろう!そう、心に誓った。3,332文字pixiv小説作品 - It's painful to smile already, I want to stop.
It's painful to smile already, I want to stop. Ⅳ
今日は、色々なことがあった。 佐久間が、もの言わぬアンドロイドのようになってしまったこと。それが、茅ヶ崎の心を痛めて、こいつの心が病んでしまったこと。俺たちが茅ヶ崎の前に訪ねた際、まるで、自分が何もかも悪いと顔に出ていて、俺たちは誰も責めていないのに、茅ヶ崎は自分が何もかも悪いから、自分を断罪しに来たのだと思っていた。いや、確実に、今も、内心、責め続けてはいるとは思う。 茅ヶ崎からの説明は、簡潔だったが、いざ、医師から話しを聞いてみると、茅ヶ崎が思っている以上に、酷い有り様で、でも、話しを聞いていたら、茅ヶ崎だけが悪いのではないと気付くのに、なんで、こいつは、自分が、諸悪の根源のように、思っているのかが、甚だ、疑問だった。 確かに、事故に遭った原因自体は、相手の飲酒運転が原因だけど、その時、茅ヶ崎は、音楽を聴いていて、反応に遅れた。ただただ、それだけのことだろうな。そもそもの話し。茅ヶ崎が気付こうが、気付かなかったとしても、運動音痴な茅ヶ崎が、何か、反射神経で動けたようにも思えなかった。だから、早く気付けば良かった、なんて簡単に済むような話しではなかったと思うんだが?? でも、佐久間も佐久間だよ。≪常に笑顔でいることが相当な精神的苦痛≫だったなら、無理してまで、笑っている必要なんてなかったのに。無理して笑って、それで、周りを苦しめる結果になっても、誰も喜ばないのは、すぐ予想できただろうに。 まぁ、一番悪かったのは、佐久間は、何処かで、SOSを出していたにも拘わらず、そこに誰も気付けなかった。ただただそれだけで、もし、可能であったなら、佐久間もわかりやすくSOSを出すことと、それに加えて、俺たちは、佐久間の尊厳を殺さない程度に、ただただ寄り添ってあげる。それだけで、事は、こんなにも、深刻にはならなかっただろうな。 そこで、前例の少ない記憶喪失になって、対処方法が、特殊で、今の佐久間じゃ、到底望んでいないことを述べられている時、茅ヶ崎は、顔色が、顔面蒼白で、どう答えるのが最適解なのか、わかっていなかったから、自分の思う存分、心にあることを真っ先に伝えれば良い。ただ、それだけのことなのだ。 まぁ、こういう時、幼なじみってやつは、以心伝心なのだろうか。俺が答える前に、紬が答えたが、俺も似たような答えだったので、それに、乗っかる。 そして、診断室から出て、佐久間のいる病室に戻ったら、虚空を眺めているというより、何か、訴えたいことがあって。でも、自分では、『答え』が出せない状況にあった。だから、赤ん坊が、自分の意思を伝えようと、涙していた。それを見て、茅ヶ崎は、【感情がなくなってしまった】と勘違いしていたようだが、寧ろ、その逆なのではないかと思った。佐久間は、一旦、感情をリセットして、また【新たなる感情を創り出している】のだと。 ある種、≪刷り込み≫なのかもしれないと、思う。でも、多分、他の奴らより自分を責めてしまう茅ヶ崎だからこそ、≪刷り込み≫の如く、自分が何か悪いことをしてしまった。でも、原因は、思い浮かばない、葛藤に襲われて、自分を責めてしまった結果が、自分の前からいなくなってしまったのだと錯覚を起こした。だから、佐久間は、茅ヶ崎が、自分の前からいなくなってしまったのが、とても、辛かったのだと思う。 まるで、≪刷り込み≫。佐久間は、元来明るくない過去を持っている。だからこそ、笑顔でありたい。笑顔でいなければならない、と強く思い込み過ぎていたのかもしれない。だが、この際、その根本的な思い込みを、正せるチャンスなのかもしれない。 しかしながら、そう簡単にはいかない。今の佐久間は、まるで赤ん坊。【感情を生み出す過程】にあって、茅ヶ崎と共にいたい理由が、自分の中でもわかっていない。自分でも、わかっていない『感情』が、他の奴らにわかる訳がない。それに、ここでのしかかってくるのが、≪常に笑顔でいることが相当な精神的苦痛≫であること。だから、【感情】を【表情】には出せない。そして、赤ん坊によく多いのが、【元々何も考えていないこと】。だから、時が、解決してくれるのではないだろうか。佐久間は、いくら思考回路が、赤ん坊のようになってしまっても、言葉を知っている、それを表現する方法を、知っているはずなんだ。 だから、茅ヶ崎、もう少しの辛抱だから、何とか気を病まないでくれ。 後、紬、何気なく問題発言をするな。それじゃ、例え当人が望んで、医師から言われた治療法を受けたとしても、効果ねぇええだろうが!でも、多分、すぐに、そこまで辿り着くことはないだろうが、佐久間が自分から記憶を戻したいと、思うまでは、俺は、こき使われる運命にあるんだろうな、とつくづく思う。でも、これは、茅ヶ崎からの又聞きだが、佐久間も茅ヶ崎と同じく、対人関係に難ありなのだ。だからこそ、茅ヶ崎は、佐久間の懐に入れたのだろうな。同じ境遇とまではいかなくても、『自分と共感できる相手』であるお前がな。多分、≪刷り込み≫で、自分のことを好きになったとかではないからな。そこんとこ間違えて解釈するなよ。でも、少しくらいはある……かもしれないな?? でも、そこまで教えてやる義理はねぇよ!だが、茅ヶ崎は頭は良いんだから、どうか自分で、俺が思う最適解を乗り越えるくらいの気概で、やってくれよな。3,333文字pixiv小説作品 - It's painful to smile already, I want to stop.
It's painful to smile already, I want to stop. Ⅵ
.。o○.。o○ ここは一体何処なんだろうか。でも、ここにいるとホッとするが、それと同時に何だか胸がとてもざわつく。ここはきっと私が安心していられる場所であると、同時に何だか頭がとても、痛くなってくる。でも、至さんはおいでよと言う先にあったのは、ボロボロの建物。私は身体をビクつかせて、恐怖を示す。ドクンドクンと鼓動が速くなる。何だか怖い、怖い、怖い。でも、私は、どうやって相手に伝えたら、良いのか、わからない。 記憶を辿る。だけど、私に、他の人と、誰かは誰かと同じ重さにはなれない。だから、同じ熱量で対応することなんてできない。 それが、私のルール。 じゃなかったら、夢の中でまた泣いている、責められている自分がいる。殺した迷いが、息を潜めて嘘を嗅いでいる。もういいよ、もういいよ。どうしたって離れない。どうか赦さないでくれ。だから、終わりが欲しいよ。私は、心の何処かで、始まりの終わりを望んでいる。 さぁ、ゆっくり目を閉じて。後悔なんか飾って、誰かのためのあなたを願おう。ねぇ誰がやってきたって、また変わらない表情で分からないからこそ怖くない気がした。 だから、倫理なんて妄想だよ。朝が来ても罪は、罪のまま。色のない感情を残したまま、どこかへ逝けるかな。 また、感情が沈んでいく。1,111文字pixiv小説作品