概要
国は民に対し各種の利益を与える見返りにいくつかの義務を課す。このうち、「国を守るために兵士としての労役を提供する」ことが兵役である。これには「実際に兵士として国を守る」以外に「国防のための財源を提供する」ことも含まれる(いわゆる「軍布」、人頭税の一種)。
性別や年齢により一定の期間課され、代替手段がある場合とない場合がある。
兵役には、『自由兵役』と『強制(義務)兵役』に大きく分けられる。
自由兵役は、いわゆる『志願兵』『義勇兵』といった、自由意思で兵士の募集に応じて軍務に服すること。
強制兵役は、いわゆる『徴兵』などのように、国家が強制的に軍務に服させることである。
歴史
この義務は古代においては中国や日本などのアジアにおいては一般的にみられた。ギリシャやローマにおいては自由民に対して課されていた。
と同時に、戦になると真っ先に矢面に立たされる(重装歩兵)彼ら自由民が発言権を求めたことから古代ヨーロッパの民主主義がスタートしたため、過去欧米社会においては長らく意識下で民主主義と徴兵制がリンクしてきた。
中世においてはこの形式はすたれ、職業軍人である騎士や傭兵が主となった。ただし戦闘が大規模化した場合や志願により兵士になる人員が少ないは発動されることもあった(ただしこのような兵隊は士気や錬弩が低く、あまり役に立たなかったといわれている)。
近代においてはフランス革命をはじめとする「国民国家」が成り立ち、「国家のために死ぬ人材」の育成が容易になったこと、また戦争の変化(具体的には死者および負傷者の増加)により志願制では兵士を賄いきれなくなったことによりこの制度はまた見直されることとなり、多くの国で導入された。
第二次大戦後、現代においては冷戦時代までは広く行われたものの、次第に戦争の変化(高度な技術の必要性)、思想および良心の自由の侵害、経済活動への悪影響、男女の平等の問題などにより、この義務を遂行させるよりも「税金で志願兵を賄う」ほうが有利として、この方式はすたれていった。ただし戦争状態の継続により志願兵が少なくなった場合発動する可能性がある。
また、兵役を利用して福祉など人手の足りていない分野の補充に利用するということも可能であるが、これも事実上の強制労働であり問題がある。