概要
日本標準産業分類において食堂の定義はあるが、大衆食堂の具体的な定義は存在していない。傾向としておしなべて安価(昨今では物価上昇の影響もあり1000円を超える場合もあるが、かつては400円ぐらいで収まることもあった)であり、学生や労働者のために手早く料理を提供することが多い。そのため作り置きの効く定食類の提供が多い。
昭和時代にはよく見られた形態で、家族で切り盛りするような店も少なくなかった(ミスター味っ子の日の出食堂など)が、飲食店の専門化、多様化、大手定食屋チェーンや弁当屋の進出などによって大衆食堂と呼ばれるフリースタイルの飲食店は大幅に減少している。また、かつては惣菜などをあらかじめ陳列しておいて、それを客が適宜手に取るスタイルの店も多かった(セルフ食堂と呼んだりもした)。
現在も下町、工業都市、ビジネス街や学生街界隈には相対的に多く定食屋とも呼ばれたりする。また、そういう店の中には朝から酒類を提供している店もある。
定番料理としてカツ丼、親子丼などの丼ものや温かいうどん類、定食、一品料理としてだし巻き卵、おひたし、魚の煮付けなどがあり、豚生姜焼き、さばの味噌煮、トンカツ、コロッケなどが定番化したのは大衆食堂の影響も少なからずある。大手チェーン店にはこの大衆食堂のスタイルを踏襲した店もありやよい軒、半田屋、大戸屋、まいどおおきに食堂などがある(業界では定食屋チェーンという)。
そばは専門店で供されるが、うどんはとりわけ西日本では大衆食堂の定番メニューである。中でも鍋焼きうどんは大衆食堂で供されるのが一般的であり、全国的に知られるようになった松山市の場合も、大衆食堂から始まっている。
また、かつてはラーメンを提供することも多く、喜多方ラーメンでは大衆食堂にて提供されるスタイルが一般化している(◯◯食堂という名店が多いのはその名残である)。高知県須崎市発の鍋焼きラーメンも大衆食堂のメニューが名物になったもの。
カレーライスも大衆食堂の定番メニューだったが、それこそ専門化によってほとんど見られないメニューとなった。
似たスタイルの店
日本では大衆向けの中国料理店を中華料理屋(俗称で町中華とも)、また洋食中心の店を洋食屋と呼んでいることが多い。フランスのビストロ、イタリアのトラットリアなどは元来、この大衆食堂に近いスタイルでもある。