概要
作中で初めて言及されたのは第一部13章EX-2話である。 律者人格を制御するための訓練を受けていたキアナが渡世の羽で自身の脳髄に取り付いたフカに「なにか得意技は無いの?」と聞いたところで明らかとなった。
神州で精衛仙人の手によって立ち上げられたものであり、この武道を習得したものは並外れた実力を持っている。「魔に堕ちたものは死すべし」というモットーの元、妖獣狩りや、崩壊エネルギーの濫用によって暴走するリスクのある術を根絶やしにしていた。
五蘊
太虚剣派には5つの構成要素があり、これを全て扱えることで生身でも魔(崩壊)に立ち向かえる力を得られる。これら5つを纏めて「太虚剣気」と呼ばれる。
心蘊/太虚剣心
一番の基礎であり、極めるには最も難しい要素。雑念を消し、心を鎮め、世の本質を見通す技。
これの習得度によって以降の技の習得度も変化し、本気で極めるのなら幼い頃から習得しなければならず、一生をかけて成長させる。聖フレイヤ学園の戦乙女心理訓練はこの剣心をオットーが発展改良したものである。
習得深度として、下から順に止水・無塵・明鏡・太虚となっている。どんなに努力をしてでも、一生をかけて無塵に行ければ良い方であり、最大深度の太虚は開祖を除けば500年の歴史の中で五番弟子の程凌霜と七番弟子の娘李素裳の二人しか到達出来ていない。
習得には「剣心訣」と呼ばれる全462音の経のようなものを唱える必要があるが、林朝雨曰く、文字による記録は無く口訣。ただの音の羅列のようで、意味を成していないとのこと。しかし唱えていると不思議と心得が身に付き、その後の成長にも役立つとのこと。ブローニャの言を借りるのであれば「自分にかける催眠術」のようなものだが……
形蘊/太虚剣形
剣を操る術、応用として拳でも通用する二十一の技。いわゆる武道や武術での「型」にあたるもの。
意蘊/太虚剣意
古剣・軒轅と心を通わせる術。各々が専用の軒轅を持っており、能力も十人十色となっている。
魂蘊/太虚剣魂
武器の形に囚われること無く、その武器をあたかも自分が使いこなしいている武器のように扱えるようになる。別の作品で例えるならばこれに近い。
神蘊/太虚剣神
フカ曰く「神とはは変化を極め、万物に優れるものであり、一つに留まるものではない」のが太虚剣神の真理であるとのこと。脳髄と癒着していることから発動の際は、額から雷のようなエネルギーが放出し、頭上に巨大な文様が浮かび上がる。
劇中では50階建ての高さ数百メートルある天命のシベリア実験棟を両断し、周囲の大地が赤熱化しており、律者と力の供給源である崩壊の神との接続を解除したり、素裳の必殺モーションでは空から巨大な剣を降らしている。
この通り、物質・概念関係なくあらゆるものを切断することが可能な技となっている。
メンバー
弟子である太虚七剣のメンバー全員の名前のモデルが中国最古の詩集『詩経』から取られている。
開祖・精衛真人
太虚剣派開祖。魔に堕ちたものを討つべしという思想のもと、来る崩壊に備えて太虚剣気を教える。初めは朝雨のみを弟子に取るつもりしか無かったが、両親を殺してしまった償いや、行き場を無くした神音適正の高そうな子供の引き込み等で7人を抱える程にまで拡大。そして……
軒轅剣の名は太虚の拳。第十の神の鍵であり、千本あったため銭稼ぎで売ったり配ったりしていた。仮にも前文明のロストテクノロジーで造られたものだが、崩壊エネルギーの扱いに精通していなければただの美しい剣でしかないため、危険性の低さも鑑みて売却していたと思われる。弟子の軒轅剣もこれらが変化したものである。
太虚七剣首徒・林朝雨
CV.折笠富美子
リン・チョウウ
一番弟子。物静かでどこか消え入りそうな雰囲気を持っている。
両親は「蚩尤」を信奉している邪教団の一員であり、この「蚩尤」というのが、審判型崩壊獣のことで精衛仙人とも因縁のある相手。これを復活させるというのは以ての外であり、その危険な思想を持っていたことで教団員は全員抹殺される。まだ幼子であったため精衛仙人に拾われ育てられる。
18歳の頃、当時名を馳せていた聖火教という武術一派のトップを単独で倒したことで、神州で太虚剣派の知名度を一気に押し上げる。
本編では第一部20章にて登場。既に故人であるが、フカの渡世の羽に残っていた彼女の意思が太虚山に残り、太虚山の守護者として、主人公達と邂逅。フカの記憶集めを手助けする。
本編や公式漫画では若い頃(10~20代)の姿だが、ビジュアルノベルでは白髪交じりの妙齢(56歳)の姿が見られる。顔に皺はあるが、強かな女性であるとすぐに分かる雰囲気。
5歳の頃に引き取った彦卿に一目惚れしており、そのままゴールインしている。尚彦卿に惚れた時の彼女は22歳。おねショタどころかおばショタとも言える年齢差での初恋であった。
軒轅剣の名は軽塵柳。軽くしなやかで堅牢な中華剣。
太虚七剣第二徒・蘇湄
スウメイ。
当時絶世の美女とも称される程の美貌を持った赤髪の女性。「湄」という字は日本語に無く、ゲーム内でもフォントが対応していない。意味は湖のほとりや川辺を意味する。
3歳の頃、崩壊エネルギーの汚染によってゾンビ化した両親を精衛仙人に眼の前で殺され彼女に拾われる。初めは「親殺しの仇を親と思うのは無理だ」と反発していたが、自分と同じ境遇の子供たちを次々と迎え入れられたことにより、剣気の教えを門下の弟/妹弟子に教えるように。
軒轅剣の名は無双。二振りの直剣…だがデザインがかなりサイバーチック。
太虚七剣第三徒・江婉兮
ゴウ・エンケイ。
紫髪を持つ双子の片割れ。ルーズサイドテールを三つ編みにした、少々勝ち気な性格。
林朝雨の聖火教打倒の際に開放された聖火教の聖女。二人に保護された後に妹と共に弟子入りする。
軒轅剣の名は風清揚。音を操る力がある。
太虚七剣第四徒・江婉如
ゴウ・エンニョ。紫髪を持つ双子の片割れ。髪は姉より短い。
彼女がきっかけで太虚剣派が散り散りになる出来事が起こってしまう。
軒轅剣の名は落無着。名前のみの登場で詳細不明。
太虚七剣第五徒・程凌霜
(画像左の人物。右は秦素衣。)
テイ・リョウソウ。
弟子の中で唯一太虚剣神を取得した、当時の天命最強と比べても人類最強といっても過言ではない実力の持ち主。聖火教を打ち倒したフカと朝雨に、江姉妹と共に引き取られた。
素裳の師匠でもあり、修行のために強盗団蹴散らしてこいと言うほど少々ズレた倫理観の持ち主。その過程で重症を負い、目覚めた素裳に対してかけた第一声が「あなたも、あなたの母親も男を見る目が無いようね」というものであり、お茶目?な一面も。
フカの記憶を読み取った識の律者には「あの子こそ本当の化け物です」と、人類の敵対者である律者にすらそう言わしめる程の実力らしく、現代組の実力と比較しても相当上位に位置すると思われる。また、ケビンも認知しており、聖痕計画の成功例としている。
太虚剣意の習得に失敗しているので彼女の軒轅剣は存在しない。
が、得物が無いのは格好がつかないのか刃不破というその辺りで拾った木の棒を加工した鞘付きの剣を装備している。
太虚七剣第六徒・馬彦卿
バ・ゲンキョウ。
七剣の中の黒一点で最年少。羅刹人の血が混じっており、ビジュアルは金髪碧眼の髭面のおじさん。いわゆるイケオジ。名前とビジュアルの通り『崩壊:スターレイル』の彦卿の元ネタ…もとい3rd世界の彦卿といえる存在。性格はスターレイルの彼と違いやや粗暴。
林朝雨とは夫婦にあるが年の差22歳。彼が16歳の頃に結婚したとき朝雨は38歳。そして彼は常に気をかけてくれる朝雨よりも厳しさの中に時折感じる優しさを振りまく蘇湄に惚れていたが、朝雨と結婚するように進言したのは他でもない蘇湄であったためしぶしぶ受け入れる……と思いきや結婚式の場で人が変わったように大暴れし、名前を馬非馬に改名すると宣言。
ビジュアルノベル時点での実力は軽くいなす程度で素裳を圧倒するも、その辺の拾った木で武装した凌霜には本気を出しても手も足も出ないくらいの実力。前述の通り凌霜が当時の人類最強であることを考慮すれば仕方の無いことである。
戦闘スタイルもあちらの彦卿と似ており、軒轅剣を分身させ飛ばすファンネルスタイル。彼との違いとしては、剣の色が青ではなく赤色に輝き、名字の通り馬に乗っていることであろうか。馬の名前は夜血。作中描写から汗血馬と推測出来る。
軒轅剣の名は赤絶影。九尺五寸の大剣であるが羽のように軽く、専ら片手で扱っている。光を操る力がある。
太虚七剣第七徒・秦素衣
シン・スイ。
引き取られた際には記憶喪失になっており、太虚山が彼女の故郷、精衛仙人は彼女の親、七剣は彼女の兄弟となっていた。
その後散り散りとなった太虚剣派。行く先が無く死にかけていたところを剣術家の放蕩息子李紳に助けられ、結婚。娘を授かる。その後成長した彼女の才能を見抜いた彼女は、夫の元で才能を腐らせる危機ところを、姉弟子である程凌霜のもとに送ることで回避。それから10年。蘇った師匠によって殺されてしまう。
軒轅剣の名は墨染香。娘に譲りその形を変えてしまったため、どういったものであったか不明。
太虚剣派の関係者によって太虚剣気を習得した者達
新太虚剣派
精衛仙人から独立した朝雨と彦卿によって設立された分派。五蘊をさらに簡易化し、彦卿の武学を織り交ぜた太虚真訣を開発。現代に残っている太虚剣派はこの派閥であり、崩壊獣討伐を生業としている。
リ・スショウ。
末弟の秦素衣の娘で、人類最強である程凌霜の一番弟子。詳しくは個別キャラ詳細にて。
カレンの再生の手がかりを求め神州に訪れていたところ、素裳と出会う。その後精衛仙人を友人と呼ぶに至った出来事があったらしい。太虚剣心を戦乙女の教育プログラムとして改造。
程立雪
CV.青木瑠璃子?※
テイ・リツセツ
精衛仙人……もといフカが正式に太虚剣気を教えた最後の弟子。第二次崩壊時には天命部隊総指揮官として参戦。疑似炎の律者と対決し一時敗走。その後は決死の一撃を放った師匠と崩壊の神と接触した影響で万全では無い主教を撤退させるために自らを囮に第二律者と対決し、死亡。彼女の犠牲によって二人は脱出出来た。
※ゲーム内ムービーでの声が、彼女の武器と外見を模して作られた武装人形「若水」と同じ声であるが、公式から明言はされていない。
剣心と剣神をフカから教わった。識の律者との対決や律者を封印せんと自己犠牲をしようとしたフカの救出で使用。この学びが次への成長に繋がったのは間違いないだろう。
【ネタバレ注意!】太虚の崩壊
その後も、着々と力を付けていた太虚剣派であったが、四番弟子の江婉如が崩壊エネルギーに浸蝕される。それを見た精衛仙人は婉如を死ぬべき対象としてみなす。当然今まで家族同然に暮らしてきた一人を殺すということに、教えを理解はしても納得出来ない蘇湄を筆頭とした弟子達は仙人を殺す計画を企てる。ここにいる全ての人は親を仙人に殺されているため、動機は十分にある。7番目の弟子がこの出来事を仙人に伝えようとしたが、後から入ってきた2番目の弟子の姿を見て、言葉を詰まらせた。3番目の弟子が音を奪い、6番目の弟子が光を奪う。とどめを一番弟子が取る計画だったが、彼女はためらってしまった。その後、仙人はなにかを言うも、5番目の弟子に脳髄を砕かれ全身は弟子の剣で串刺しにされた。
師が死んだことにより、弟子は散り散りとなり、独自で武術を編み出す者、俗世から離れたものとそれぞれの道を歩むことになった
【さらなるネタバレ注意!】太虚剣気の真実
劇中では李素裳を含めた現文明の太虚剣派が扱う術は仙術のように認識されていたが、以下の事実は開祖のみぞ知る。
- 太虚剣心の雛形は、メイ博士が華に施した『神音』実験。その手術の内容は
未成熟の脳をアポニアの戒律を用いて改造し、崩壊エネルギーの扱いに精通させる
というものである。手術とあるが、メンタルセラピーと投薬なので外的切開等はしない。しかし脳髄を直接弄る洗脳行為のため、失敗すれば精神が破壊される。その上、この施術を施されて生き残ったのは華ただ一人のため、相当無茶な実験であった。
また、デメリットとして融合戦士が持つ人為的崩落という能力が使えなくなる。崩壊現象に対する衝動的な殺意を抱くことによって、一切の容赦無い戦士が誕生するが、同時に崩壊現象の一つである崩壊獣の因子を埋め込まれた融合戦士自身にもその殺意が働くため、理性が薄れる人為的崩落状態では即座に自害してしまう。
心蘊とは、この神音を再現するために開発した前文明の共通語…ムー大陸で話されていた言語を音節化し、現文明の人々でも会得出来るようにしたもの。そのため当該言語を知らなければ意味がわからないのは当然である。
神音によるデメリットによって、華は融合戦士の能力が一部封じられていたが、弟子の謀略によって脳髄が破壊され、それと同時に神音も失った。剣心の習得度も無塵にまでしか到達せず、剣神も使えなくなったが、最終決戦にて人為的崩落が使えたのはこのためである。
- 「魔に堕ちたものは死すべし」というモットーは、ただの心構えではなく神音に備えられた崩壊に対する殺戮衝動を言語化したもの。
- 意蘊と魂蘊は第十の神の鍵:軒轅剣の扱い方の極意であり、形蘊はフカの祖父の武術を女媧、伏犧、神農らと共に改良したもの。「先人たちが創り上げた」というのはまさに、彼女の家族と友の手によって紡がれたものである。
- よって極論を言えば剣心と剣神さえ出来れば他の蘊は習得しなくても良いが、それが出来たのは律者であるキアナと識ちゃんだけである。しかも後者はフカの人生経験値が詰まった身体を持っているため厳密には「覚えた状態で産まれた」というのが正しい。
余談
- 朝雨に限らず、太虚七剣は20章にて全員分のボイスがあるものの、誰がどの声を担当しているのか公式でも明かされていない。セリフ数の多さに加え、その声色から蘇湄の声優は大原さやかではないかとファンの間では言われているが、公式からの言及は一切されていない。
- 500年前の神州の出来事が描かれ、この記事に登場したキャラクター達が活躍するビジュアルノベル『神州折剣録』だが、2021年7月をもって更新が停止しており、江姉妹の具体的な人物像や、素衣の死の真相等々回収されていない伏線や不明な点がかなり多い。