概要
中国を中心とした東アジアにおいて使われてきた単位系。ヨーロッパにおけるヤード・ポンド法同様、身体の寸法や穀物の質量などをもとにして定められたものである。前漢の頃に出された「秬黍黄鍾説」の時点で既に明確な単位の基準が定められるようになっており、後に各王朝によって定義の改定が行われつつも唐王朝期以降はほぼ値が固定されている。
中国国外では日本や朝鮮など東アジア一円でこの単位系が取り入れられ、各国で独自の進化を遂げつつも、やはり中国唐王朝期に定められた値から大きく変化する事はなかった。
日本では1893年施行の度量衡法によって尺貫法が、中国では1929年施行の度量衡法によって市制が、それぞれメートル法に基づいて再定義される事となった。しかしながらその後それぞれの国は公式の単位系としてメートル法を引き継いだ国際単位系を採用する事となり、現在では中国で細々と市制が用いられている他はあまり尺貫法が多用される事はない。例外的に真珠の取引用として「もんめ(日本の尺貫法における匁が由来)」が(国際単位系上非公式ではあるものの)用いられている。
日本では1959年以降(土地や建物の計量に限り1966年4月以降)、上述の真珠を扱う場合を除き尺貫法の単位を直接用いた取引や証明を行う事は完全に禁じられている。ただし、尺貫法に基づいたサイズを「型番」として使用するなど、計量法に反しない範囲においては依然として尺貫法の基準が残っている。
例:
- 日本酒の酒瓶について、一升瓶・五合瓶・一斗樽はこの名残ともいえるが、現在は小数点以下切り捨てとなっている。
- 木材など板材の寸法を「3尺×6尺」と「内部で」呼ぶのは構わないが、別の会社と取引(発注・受注など)するときや役所へ提出する書類・図面に尺を使ったりしてはならない。ただしこの寸法は「3×6版(さぶろくばん)」という呼称で呼ばれている。
主な単位の一覧
以下、日本の尺貫法における単位について記す。なお、国際単位系での近似値については1952年施行の計量法施行法(1993年廃止)に準拠するものとする。
長さ(度)
単位名 | 定義 | 国際単位系による近似 | 備考 |
---|---|---|---|
尺 | 10/33m | 0.3030303m | 高さを表す単位は尺のみ。また本定義に基づく尺(曲尺)以外にもその1.25倍の長さを表す鯨尺という単位が用いられる場合もある。 |
寸 | 1/10尺 | 0.03030303m | |
丈 | 10尺 | 3.030303m | |
間/尋 | 6尺 | 1.818182m | 間は長さの計測用、尋は深さの計測用に用いる単位 |
町 | 60間(360尺) | 109.090109m | |
里 | 36町 | 3927.2723927m |
体積(量)
単位名 | 定義 | 国際単位系による近似 | 備考 |
---|---|---|---|
升 | 2401/1331L | 1.803906837L | 新京升(縦横4.9寸、深さ2.7寸の枡)の体積に準拠 |
合 | 1/10升 | 0.180390684L | 後述の通り、質量の単位としても転用されている |
勺 | 1/10合 | 0.018039068L | 後述の通り、質量の単位としても転用されている |
斗 | 10升 | 18.039068L | |
才 | 1立方尺 | 27.826474L | |
石(米の計量に関して) | 10斗(100升) | 180.390684L | 武家の身分秩序の基準となった「石高制」は、領地の総合的生産力を玄米収穫量(石高)に換算したものである |
石(それ以外) | 10才 | 278.26474L |
質量(衡)
単位名 | 定義 | 国際単位系による近似 | 備考 |
---|---|---|---|
貫(貫目) | 3.75kg | 3.75kg | |
両 | 1/100貫 | 37.5g | |
匁 | 1/10両 | 3.75g | 明治時代までは「銭」とも。上述の通り、現行計量法下においても真珠の計量単位に限り「もんめ」表記で使用可能 |
斤 | 16両(0.16貫) | 600g | 現在の食パン1斤は公正競争規約上340g以上とされており、厳密な質量を表していない |
合 | 1/10斤 | 60g | 上述の体積の単位を流用したもの |
勺 | 1/10合 | 6g | 上述の体積の単位を流用したもの |
分量単位
これらの単位は、長さの単位である「寸」または質量の単位である「匁」に続ける事によって、その何分の一かの量を示すのに用いられる。
尚、歩合(割合)の単位として用いられる割(10%)に対してこの分・厘・毛を続ける用法もあるが、あくまで「割」の何分の一という意味合いであり、分=1%、厘=0.1%という意味ではない事に留意されたい。