概要
2013年11月26日に講談社ノベルスから発売された、西尾維新による小説。
小説内には挿絵は無い為、pixivにある悲報伝の絵はイメージイラストとなっている。
悲鳴に立ち向かう組織「絶対平和リーグ」が活動を展開する『四国』にて繰り広げられる悲痛な戦争と、その終結に動き出す女装少年の悲惨な戦いを描く。
『四国編』の山場である「春秋戦争」が主軸となっており、高知、愛媛の両県を舞台に四国ゲームが一つの転換点を向かえる物語。
各話多数の死者を出してきた本シリーズだが、今作では第一作以来の数で名前持ちの死者が続出する。終盤二つのチームが前面衝突を迎える場面では息つく暇もなく美少女が死んでいくため、耐性がない読者にはトラウマもの。しかも死ぬのは美少女だけではない。
主な登場人物
主人公勢
守るもののない正義こそ、最強。
13才の主人公。地球撲滅軍第九機動室室長『醜悪』。
前々作で四国に上陸して以降、拷問されるわ極太ビームぶっぱされるわ使用済みパラシュートで民家へダイブするわ挙げ句の果てには水死するわと波瀾万丈。しかも前作から地濃がパーティーに加わっているため心労が絶えない。
そして今作では新兵器『悲恋』が予想外の早さで四国に投入されてしまい、さらに魔法少女同士の戦争に巻き込まれることとなる。目下の目的は同盟相手である鋼矢との合流だが、接触したのがチーム『スプリング』だったため、意図せずして彼女とは敵同士になってしまった。
「敵よりも味方を多く殺す」という触れ込みは純然たる事実である。
思い通りにならないなら、思わなければいい。
地球撲滅軍不明室室長左右左危によって開発された新兵器の人造人間。ニセの魔法少女『ニューフェイス』。
「不明室」内部のクーデターにより、安全に起動するためのステップが完全実行されないまま「四国を破壊する」という目的のみを持って発進。高知桂浜に辿り着いた空々達の前に、すっぽんぽんのまま高速の平泳ぎで太平洋を泳ぎきって着岸というスキャンダラス極まりない形で登場した。
その後は何一つ情報を与えられていなかったこともあって機動室長である空々に従い、魔法少女達に立ち向かう。上陸直後こそ融通の利かないポンコツという雰囲気だったが「すっげー戦える」「白兵戦なら魔法少女にも負けない」という本人の弁に嘘偽りはなく、武器も飛び道具も無しで魔法相手に戦えるため、空々陣営の頼もしい戦力となった。
均衡を崩すことは、崩壊を起こすことだ。
壊滅状態となった香川県の魔法少女チーム『サマー』の元メンバー『パンプキン』。前作で『スペース』に受けた妨害によって空々と分断されてしまったため、今作ではチーム『オータム』に協力している。黒衣の魔法少女の一角『シャトル』を仕留める、『ジャイアントインパクト』の存在を空々に伝えるなど、前作から要所要所で活躍している素敵なおねーさん。でも17才である。
今回は最年長魔法少女としての柔軟な発想で、コスチューム・シャッフルなどの大胆な作戦を提案し『オータム』メンバーの度肝を抜く。特に魔法少女の生命線とも言えるコスチュームを自ら手放し、道に倒れることで一般人を装うという剛胆にもほどがある作戦は、直接戦闘に役立てられない不便な魔法を与えられた彼女ならではのアイデアと行動であろう。実際この四国ゲーム中、現役の魔法少女で鋼矢と同じ発想に至った少女は一人もいない。
彼女の誤算は、合流を目指していた空々が高知に回ってしまい、『スプリング』に加入してしまったことだった・・・・・・。
血は水よりも濃いが、水は血より澄む。
地濃鑿
前作で初登場した、徳島県のチーム『ウインター』最後の一人『ジャイアントインパクト』。
他人のペースを引っかき回す謎めいた言動は今作でも健在で、あの空々が悩みの種としているほど。
魔法が戦闘では役立ちにくいこともあってか龍河洞でかんづめと共に待機させられるが、自慢の『リビングデッド』は今作でも大いに振るわれる。
君の賢さは、君の手を引きもするし、君の足を引っ張りもする。
彼女も前作初登場。鋼矢が地濃に依頼して捜索させていた『魔女』と思しき謎の少女。
肉体年齢に似合わぬ賢しさで空々をバックアップしている。
会話文は相変わらずのひらがな表記。
愛媛県
諦めることはできなくとも、忘れることはできる。
忘野阻(わすれの・はばみ)
愛媛県を拠点とするチーム『オータム』のリーダー。『クリーンナップ』。
戦力の差が薄く『スプリング』と膠着状態に陥っていたが、大胆不敵な作戦で自身を制圧した上、協力して『デシメーション』を撃退した『パンプキン』こと杵槻鋼矢を自身のチームに引き入れた。そして戦力差を頼みとし、鋼矢が提案したコスチューム・シャッフルを実行した上で『スプリング』の拠点に総攻撃をかける。
両軍とも犠牲を出さずに戦争を終わらせようとしているが、『スプリング』のとあるメンバーと浅からぬ因縁を持っているようだ。
シャッフル以前に元々持っていた魔法は『透過』。壁などの障害物を自在にすり抜ける魔法である。
休むことが必要なのは、働いている時だけだ。
五里恤(ごり・じゅつ)
『オータム』の天然少女。『ロビー』。
全魔法少女中最年少であり、幼い言動が目立つ。
性格に反して勘が鋭く、愛媛へ向かう空々の車をいち早く発見し決戦の火蓋を切った。
チームメイトにすら理解されない筋金入りのアホの子だが、苦楽をともにした仲間たちの事は常に気にかけている模様。
手袋や地濃と同様の部類であり、『絶命』という作中最強といっていい脅威の固有魔法を持つ。
竿沢芸来(さおざわ・げいらい)
『オータム』の頭脳派。『ワイヤーストリッパー』。
演技力に長けており、オータムに寝返る可能性を秘めた空々に決裂が前提の交渉を迫る。
その時点では正体不明だった空々への対応を真っ先に引き受けるなど、チームへの情が窺える少女。
本来の固有魔法は「消滅」。文字通り物体を跡形もなく消し去る魔法。
品切しめす・ころも(しなぎり・)
『オータム』の双子。『カーテンレール』『カーテンコール』。
魔法少女では珍しい血縁関係を持った一卵性双生児で、よく言動がシンクロする。外見もコスチュームがなければほぼ見分けがつかない。二人きりになった時は「ころもちゃん」「しめすちゃん」と呼び合っている。
固有魔法はしめすが『反射』、ころもが『切断』。いずれも読んで字の如く、『反射』は致命傷だろうと攻撃してきた相手へ跳ね返せ、『切断』はマルチステッキが届く範囲に限りあらゆる物体を両断できる。なおチームの中で『切断』のみ、マルチステッキの名称が「ロングロングアゴー」であることが判明している。魔法の特性がため、一般的なステッキよりも長い。
高知県
穴があったら入りたいと思うなら、人は穴を掘るべきだ。
『アスファルト』
空々が成り行きで加入したチーム『スプリング』のリーダー。
チームが武闘派で謳っていることもあってか強気な姿勢を崩さず、空々と嘘だらけの交渉を繰り広げた曲者。
チームメンバー達の魔法に対しより有効な使い道を考案する戦術家気質であり、総攻撃をかけてきた『オータム』を自軍の本拠地に罠を張って待ち受けた。
固有魔法は『伝令』。耳たぶに触った相手のバイタルを、たとえどれだけの距離が離れようと監視し続けられるというもの。これを仲間達全員に施しているため、メンバーが死亡したり感情に乱れがあったりした場合ノータイムで感知できる。
本名は終盤に明らかとなる。
損得勘定だけで動けるなら、世の中いい人ばっかりだ。
『スプリング』の先鋒『ベリファイ』。
桂浜で悲恋と合流した直後の空々一行を攻撃した。『デシメーション』と組むことで互いの魔法を活かし合うことができるらしい。
固有魔法は『砂』。マルチステッキ『マッドサンド』により、自身の周囲に存在する砂を自在に操れる。砂浜では砂の闘犬を作り出せるなど地の利を活かせるが、砂を動かせるだけで物理的攻撃力が低いのが欠点。
春秋戦争最初の犠牲者。
いずれも作中でで本名が登場せず、マルチステッキの名称が明らかになったのも『デシメーション』の『コミッション』のみ。
上記二名は最終決戦時、『アスファルト』がたてた戦術をもとに龍河洞で『オータム』を迎え撃ち、共に戦果を上げている。
『デシメーション』は序盤、松山市街で『パンプキン』と『クリーンナップ』を襲撃したが、魔法を逆手に取った鋼矢の奇策に敗れ、仲間達に殉じるため壮絶な自死を遂げた。
固有魔法は上からそれぞれ『融解』、『摩擦』、『振動』。共通点として、いずれも無機物にのみ効果がある魔法である。
チーム『白夜』
軽んじられたんじゃない。懐の広さを示すチャンスをいただいたんだ。
前作でその存在が明らかになった、黒衣の魔法少女チーム『白夜』のメンバー。
ひねくれ者を自称し、「水使い」『シャトル』が死亡したことについても敵討ちなどは毛頭考えていないと語る。コテコテの土佐弁で喋ることも相まって、なんとなくぬらりひょんのような印象を与える少女。
『ベリファイ』を撃退した空々の前に現れ、ある依頼をする。
固有魔法は『土使い』。地面そのものを自由自在にできるほか、質量に頼らずとも土や砂に直接殺傷力を付与できるなど『ベリファイ』の完全上位互換であり、その底知れ無さで空々を戦慄させた。
チーム『白夜』のリーダー。
マイペースかつ怠け者の少女で、四国ゲーム中も一切働かず川の流れに身を任せていた。
いつも浮ついた笑顔を浮かべ語尾をのばした喋り方で話しており、他のメンバーは彼女の精神を指して「感情がない」と評している。
『スクラップ』に促される形で、上司からの招集に応じ本部へと向かった。
固有魔法は『火使い』。作中で披露してはいないが、その気になれば吉野川と並ぶ一級河川仁淀川を一瞬で蒸発させられるだけの力を持つらしい。
『炎血』が既にいるのに『火』のほうが強いとは此れ如何に。