概要
咒皇百鬼夜行篇の主人公。史上最高とまで言われる稀代の陰陽師。
飄々としたマイペースな性格で、他者を煙にまくような発言を連発する。物腰は丁寧だが他人にほぼ関心がなく、自分の付属品程度にしか考えていない。加えて非常に捻じ曲がった美意識を持ち、従者である爾子達からも面と向かって変態呼ばわりされている。
御門龍水とは許嫁の関係にあり、彼女からは強く慕われているが、夜行本人はあまり関心を抱いていない。また、彼女の母である御門龍明にはそれなりの敬意を払っている。
生まれたときから太極位に位置しており、高度な術を操るのはもちろん身体能力においても覇吐や刑士郎を凌駕するなど人間として規格外の能力を持つ。しかし、本来太極の発現に必要な渇望が夜行の中に存在しないことからその太極は「無形」と呼ばれる未完成のものである。
当初は東征に参加する気はなかったが、自分をより成長させ、高みへと登らせる「蝉」を探すために東征軍に同行。淡海で海坊主を瞬殺してその力の規格外さを見せつけるが、不和之関での戦いで天魔・母禮の太極によって視力を失い、以降は額に第三の目「天眼」を開眼させる。その後、天魔・大獄を自身の「蝉」と認識し、彼との激闘の末に自身の太極を完成させて勝利。以降は天魔・夜刀らが相対した第六天波旬に興味を持ち、彼を打倒すべく独自に活動し、ついには彼の下にたどり着くが・・・
胡散臭い言動とチートじみた能力など、明らかに黒幕のような雰囲気を漂わせているせいで当初は「いつか裏切るのではないか」と予想されていたものの、実際はそんなことは一切ないどころか、終盤では波旬に対して熱い啖呵を切って見せたりと、主人公としての素質を十分に持ち合わせた御仁。しかしそのぶっ飛んだ思想ゆえかドラマCDなどでは強烈なネタキャラとして扱われている。
太極
太極・無形
物語開始当初の夜行の太極。太極の根幹である渇望が存在しないことから形がはっきりしない、「何の型にも嵌められていない状態」。そのため太極としては最低レベルの能力しか発揮できないが、それでも常人を逸脱していることには変わりはない。
太極・夜摩閻羅天
大獄との戦いの中で選択した「全てを殺したい」という渇望によって発現した夜行の真の太極。その能力はありとあらゆる死を実現させるというものであり、大獄の太極と同様、対象に絶対の死を与える能力である。生者のみならず、概念さえも殺すことが可能であり、同等の能力を持つ大獄とは、互いの一撃必殺の攻撃を殺し合うという壮絶な即死合戦を繰り広げた。
自分がさらなる高みへと登ったことへの嬉しさから後述の詠唱は非常にノリノリであり、特に「貪・瞋・癡」の部分はファンから「TON☆JI☆CHI」と表記されるほどテンションが高い。そのためファンから頻繁にネタにされていたが、後にホワイトデーのムービーやコンシューマー版発売のカウントダウンボイスでも公式でネタにされている。
詠唱
太極
喝采せよ、あらゆる存在の救世主。今こそこの地に降りたまえ
汝ら我の蓮座にひれ伏すべし。我はすべての苦悩から、汝らを衆生を解き放つ者
我はあまねく万象の、現在過去未来を裁く者
中臣の、太祝詞言い祓え、購う命も誰が為になれ
東嶽大帝・天曹地府祭――急々如律令奉導誓願何不成就乎
オン・ヤマラジャ・ウグラビリャ・アガッシャ・ソワカ
ナウマク・サマンダ・ボダナン・エンマヤ・ソワカ
貪・瞋・癡
――我、三毒障礙せし者、断罪せしめん
――太・極――
神咒神威――夜摩閻羅天
計都・天墜
ざんざんびらり、ざんざんばり、びらりやびらり、ざんだりはん
つくもふしょう、つかるるもふしょう、鬼神に王道なし、人に疑いなし
総て、一時の夢ぞかし
ここに天地位を定む
八卦相錯って往を推し、来を知るものは神となる
天地陰陽、神に非ずんば知ること無し
計都・天墜――凶に敗れし者、凶の星屑へと還るがいい
符界
阿迦陀・須多光・刹帝魯――罨・蘇陀摩怩娑婆訶――
(あかだ・しゅたこう・さっていろ――おん・そだまにそわか――)
次元断層
吐菩加身依美多女――祓い給え清め給え――
(トホカミニミタメ)
寒言神尊利根陀見
(かんごんしんりそんだけん)
正体(ネタバレ)
その正体は、龍水の異能によって彼女の渇望通りに作り出された存在。故に彼の存在そのものが龍水の妄想から生まれたものであり、彼の持つ自己意識もすべて龍水が与えたものである(ただし、龍水にも夜行にもその自覚はない)。彼の持つ太極は、そんな彼の在り方に目を付けた波旬によって彼の力のごく一部(波旬曰く糞)を与えられたものであり、これによって夜行は自分自身も気付かぬまま、波旬の滅尽滅相を実現するための波旬の触覚に仕立て上げられていた。
これらの事実を突きつけられたことで自分の矜持を傷付けられた夜行は、激昂して波旬に挑みかかるも圧倒的な力によって返り討ちとなり死に至る。その後、龍水の太極によって蘇生し、以降は誰かに作られたものではない、本当の自分自身の在り方を示すために仲間たちと共に再び波旬に挑む。
これに際して前述の太極も生を終えた魂の行先を決定して導く能力に変化。結果、生者に対しては何一つ影響を与えられなくなったが、波旬が死後の世界すら存在しない滅尽滅相の促進剤として生み出した力を死後の魂を導く力に作り替えたことは、波旬に対する強烈な意趣返しとなっている。