概要
東方Projectに登場する射命丸文と本居小鈴の二人によるカップリング。
文は『東方花映塚』(または『東方文花帖』)、小鈴は『東方鈴奈庵』に初登場した。
二人は『鈴奈庵』で出会っており、この出会いの際に文は自らの正体を小鈴に明かしている。
小鈴と文の関係性は、作中で登場する人間の里で生活する一般の「人間」が獣人や半人半妖など(例えば上白沢慧音や森近霖之助)人間の性質も持つ存在を除いた純然たる「妖怪」と個別に、人間の側が相手を妖怪と認識しつつ繰り返し接触を持つ様子が明確に描写される特筆的なケースの一つである。
小鈴以外で人間の里に住まいながら多数の妖怪との接触が窺えるものとしては数多の妖怪を取材した稗田阿求などのケースがある。
『鈴奈庵』
文々。新聞を通して
二人の出会いは文が自身の発行する新聞である文々。新聞を人間の里でも広めるべく鈴奈庵の小鈴に接触したことに始まる。
このときの文の名乗りは「 社会派ルポライター あや 」。
丁寧にお辞儀をしつつ名刺を差し出す様も描かれている。
小鈴は既存の「 瓦版 」の存在を念頭に売れ行き予想には否定的な姿勢を示すも、文は文々。新聞が伝える情報の斬新さをもってさらに推す。そして文は自らの正体を明かすのである。
「 実は天狗なんですよ 驚きました? 」(文、『鈴奈庵』)
小鈴は大変驚き声を出そうとするも、文は瞬時に小鈴の背後を捕り、その手で口をふさいでいる。
そのまま小鈴の耳元で声をかけるなど、小鈴はこのとき笑顔で丁寧な口調ながら強いプレッシャーを与える文らしい様を間近で体験している。
文が鈴奈庵から去ってすぐ、小鈴は博麗神社へ急ぎ博麗霊夢に相談するも、霊夢は(それが文だろうと見たうえで)文がすでに小鈴の周辺のリサーチを済ませているであろうことや、その上で小鈴やひいては霊夢も文の依頼を断ることができないであろうことを見切っているのだろうとし、自身による記事の事前の確認などを条件に渋々ながら鈴奈庵での文の新聞の取り扱いを承認する。
この後、文は風呂敷に包んだ状態で自ら鈴奈庵に持ち込むようになり、「 文々。新聞 人間の里版 」はその安価さもあって初版分の売れ行きは成功。以後とある事情から売れ行きが沈んだことはあったものの総じて好調な売れ行きで文々。新聞は鈴奈庵のラインナップの一つともなった様子である。
文も鈴奈庵を通した人間の里への情報発信に期待している様子で、情報戦となった際など緊急時の号外の上空からのばらまきといった例外はあるものの、通常は鈴奈庵を通しての販売を続けている。
訳あって鈴奈庵が休業した際などは困惑する様子も見せた。
また文は新聞だけでなく自身による新しい著作物の取り扱いの依頼も考えていた。
文の発言にみる「発禁にした」という点から、これは「文々春新報」のことを指すものと思われる。
ただし発禁の判断を下した時点(見本版がすでに出来ている時点)で小鈴にその話は伝えられておらず、実際に文々春新報創刊号には鈴奈庵の広告なども掲載されていない(『東方文果真報』)。
「人間」と「天狗」
新聞を通した交流以外では、台風の日に里の外に出て暴風に巻き込まれた小鈴(霧雨魔理沙の予測では暴風による飛来物が頭にぶつかって気絶でもしていたか)を文ら天狗が密かに救助し、天狗らによる暴風からの守護が及ぶ範囲である人間の里へと密かに戻している。
また別の機会では小鈴は文に「天狗から見た人間」という問いを通して人間と妖怪の関係性についてかなり直接的な質問もしており、文からその回答を得ている。
この際の文からの呼びかけとして、「 小鈴さん 」、あるいは鈴奈庵にいる間の小鈴について「 鈴奈庵の小鈴さん 」とも呼ばれている。
これは小鈴が感じていた、対妖怪という場面においても相手の個性による、個々のケースを見る必要性という考え方を後押しする一助ともなっている。この小鈴の様子は以前に阿求から示された人間と妖怪が決定的に相容れないとする「 ルール 」への反論に際して言いよどんだ際の様子とは大分異なる。
服装という観点からは、文は小鈴が人間の里に住まう関係もあって小鈴の前に現れるときは人間の里向けの服装で登場しており、小鈴は里の中では文の天狗としての服装についてその頭襟以外は目にしていない。
一方で台風の日のエピソードではイメージ的なものながら気絶していた小鈴を運んでいる普段の衣装の文と思しき天狗が描かれており、二人の出会いにみる里の中と外でのオンオフは、文の服装という要素を通しても見ることができるものとなっている。
この他の場面では
『鈴奈庵』に関連して上記以外のものとしては、『鈴奈庵』単行本第五巻裏表紙にやはり文に捕まった小鈴が描かれている。文が小鈴の首に腕を回しているなどこちらでも濃い接触がみられている。
二次創作では
二次創作では先述の『鈴奈庵』での二人の様子のほか、『鈴奈庵』で実際に出会う以前からも様々な二人の交流が想像されていた。
小鈴にみる妖怪に対して比較的オープンな様子や、時には興味のままに怪異に踏み込んでいくこともある様子などから、同じく様々な怪異を追って新聞記事を生み出す文と積極的なメンタリティや行動範囲を通しても相性よく捉えられることもある。
出会って以後、文の熟練した話術や知識に知らず知らず小鈴が丸め込まれていたり、あるいは逆に小鈴の情熱に文が押されたりと、二人の交流はそれぞれのキャラクター性の違いも相まってにぎやかなものとなることもある。
アクティブな小鈴や多数の妖魔本を所蔵する鈴奈庵自体が騒動の渦中、発端として想像されるケースなどでは文がその様子を取材しようとしたり、あるいは文が巻き込まれる側となったりすることもあるなど、交流の発端が小鈴側に由来するものとなることもある。
原作中で交流が描かれてからは、新聞を鈴奈庵に届ける文とそれを受け取る小鈴や、台風の日に強風に巻き込まれ傷が癒えるまで文に保護されていた時間といった原作の行間部分のシーンにアプローチする創作もみられている。
あるいは妖怪との接触の可能性も模索する人間と里に近い天狗との交流という観点でカップリング的にも、シリアスにも展開し得るなど、二人の交流についての想像は二次創作においても様々な可能性をもって展開されている。