概要
『死亡遊戯で飯を食う。』は、MF文庫J出版のライトノベルである。
鵜飼 有志 (著), ねこめたる (イラスト)
ジャンルとしてはデスゲームものにあたるが、デスゲームそのものよりも「それを"生業"として生きる一人の少女の物語」が主題であり、このジャンルに一般的な「極限状態のドロドロした人間ドラマ」のようなものは殆ど描写されない、ばっさりとドライ&クールな展開が持ち味となっている。
全体的なストーリーは99連勝に向けて進んでいくものの、個々のエピソードは必ずしも時系列に沿っておらず、前後することがある。
また、あくまで「デスゲームを生業とする主人公の物語」であるため、エピソードによってはその回のデスゲーム展開はダイジェストで流されてしまうこともあるなど、必ずしもデスゲームを主題としない場合もある。
世界観
舞台としては現代日本だが、その裏側で謎の組織による目的不明のデスゲームが開催されている。
運営の正体も目的も不明ながら「どこかに観客が存在する、ある種のショービジネスの側面がある」ことが示唆されており、以下のような特徴がある。
- プレイヤーは全員、容姿の見栄えがする若い女性で占められている。
- ゲームごとに何らかのテーマがあり、プレイヤーはテーマに沿った衣装を着させられる。
- プレイヤーの血液には特殊処理が施され、出血が即座に止まるため、即死級の傷以外では死ににくい。
- ゲームバランスの概念があり、基本的には生き残る人数の方が多い。
- ゲームに生き残ったプレイヤーには、数百万単位の賞金が出る。
- ゲームへの参加、引退は任意である。
- 負傷はゲーム終了後に運営が治療してくれる。手足がもげた程度なら傷も残さず完治可能。
以上のように、本作のデスゲームはアフターサポートまで含めて「競技性が整っている」という特徴があり、それ故に、主人公のように「生業としてデスゲームに参加する」というスタンスが成り立っている。
ゲームのルール
作中に登場したゲームの一覧は下記。
本作に登場するデスゲームには様々なパターンがあるが、どのゲームにも共通する、以下のような「基本ルール」がある。
- ゲームの種類は「制限時間内にステージから抜け出す"脱出型"」「指定期間のあいだ生き延びる"生存型"」「プレイヤー同士で殺し合う"対戦型"」の三種、またはそれらを組み合わせたものとなる。
- ゲームバランスは大抵「生存人数が約七割」になるように設定されている。ただし、プレイヤー間で殺し合えばそれ以上に死ぬこともある。
- 初参加のプレイヤーは、まとめて参加するように調整されることが多い。
- トラップなどは序盤は致死性が低く、後半に行くほど凶悪で致死的になる傾向がある。
- ステージ内に配置される飲食物は基本的に安全で、「メインコンセプトがそういうゲーム」でない限り、毒などが仕込まれてる事はない。
- 武器や装備の持ち込みは禁止。ただし「本人の身体の一部」扱いで許されるケースもあり、ゲームで失った四肢を生身よりも性能の良い強化義肢に変えている、鉄板を皮膚下に仕込んでいる、爪を研いで簡易な刃物のようにしているなど、肉体改造をしているプレイヤーも多い。
プレイヤー達について
プレイヤーは、運営によってスカウトされた若くて見栄えの良い少女達である。
プレイヤー達には「殺人エンタメ、ショービジネスだからそうなってる」と理解されているが、実際には運営の真の目的の為に「若い女性達によるデスゲーム」が必須らしい、ということが示唆されている。
- 選考基準
基本的には「見栄えの良い、若い女性」が選ばれている。
この基準の幅は広く、年齢だと下は12歳、上は自称28歳(見た目と雰囲気が一致していない年齢不詳で、更に高い可能性も)まで登場している。
見栄えについても「ポッチャリというより明確にデブ」らしき子や、身長2m近くの筋肉ムキムキのマッチョ美女、イモくさくてパッとしない顔だが、実は殺人鬼のボクっ子など、対応性癖の幅が広い。
また、性格や環境的に「実社会で生きづらいタイプ」、たとえば「他人に無関心すぎて社会に溶け込めない異端者」「ルールを守らされて生きるのが苦しくなった優等生」「極めつけの厭世家」「シリアルキラー」等々、アウトローたり得る要素がある者を積極的にスカウトしている。
- スカウト方法
スカウトは、運営のエージェントたちが「街なかで、見込みのありそうな女性を探して声をかける」という形で行われている。
あくまで自由意思による参加を原則としており、デスゲームものでよくある「同意なく拉致されて強制参加」のようなプレイヤーは居ない。
ただし同意さえあれば良いらしく、単に「稼げる仕事だよ」としか言われていない「騙されて参加」勢も一定数存在している。
(もっとも、スカウトするエージェントは「黒スーツにサングラス」といういかにもな外見であるため、それに「稼げる」と言われて内容も確かめずついていく時点で……)
- プレイヤーネーム
ゲーム中、プレイヤーたちはゲーム用のプレイヤーネームを名乗る。
基本的に漢字二文字のネームを、本名および本人のキャラ性を考慮してつけるようで、以下のようなパターンがある。
プレイヤーネーム | 本名 | パターン |
---|---|---|
幽鬼(ユウキ) | 反町 友樹(そりまち ゆうき) | 本名の読みはそのまま、漢字を変えたパターン。漢字の選択は明らかに本人の雰囲気(幽霊女)から。作中描写から、イントネーションも変えている可能性あり |
金子(キンコ) | 金子(かねこ) | 本名(苗字)の漢字はそのまま、読みを変えたパターン |
藍里(アイリ) | 一瀬 藍里(ひとせ あいり) | 漢字も読みも本名そのままのパターン |
白士(ハクシ) | 白津川 真実(しらつがわ まなみ) | 本名の漢字の一部と、孤高の求道者めいた雰囲気からつけていると思われるパターン |
言葉(コトハ) | 琴野 詩織(ことの しおり) | 本名の読みの一部と、文学少女めいた雰囲気からつけていると思われるパターン |
プレイヤーネームを用いる理由は「ゲーム外での身バレを防ぐため」という説明があるが、上記の通りダイレクトに本名そのままのパターンもあるため、真偽のほどは不明。
また、つけているのが運営側なのか本人なのかも明言されていない。
ただし、本名とイコールのプレイヤーはいかにも生真面目そうな者が多かったり、逆に中二病気味のキャラのネームがそういう方向性だったりするため、程度はともかく本人の意思が介在している可能性はある。
ゲーム運営
本作のゲームを運営する、正体不明の組織。
デスゲームをエンタメとして見世物にしているが、それはあくまで「手段」に過ぎず、その先にある何らかの目的のために活動している。
- エージェント
運営の手足となって働く、黒スーツとサングラスに身を固めた構成員。
プレイヤー達をゲームに招待・送迎するほか、新規プレイヤーのスカウト、ゲームの情報が実社会に漏れないよう秘匿処理をするなど様々な働きをする。
ゲームを数回以上継続したプレイヤーには、専属のエージェントがついて付き人のような役割をする。
給料は担当プレイヤーの活躍に応じた歩合制らしく、最低限のお役所仕事しかしない者もいれば、給料分の範疇を越え、自分の身を危険にさらしてでもサポートする者もいる。
- その他の職員
ゲーム内容に、プレイヤーとは別の人員が必要な時に駆り出される構成員。役割は「お化け屋敷のお化け役」「会場内を徘徊する殺人鬼役」など様々。
ゲーム展開によってはプレイヤー達に殺されるケースもあるようだが、特に問題とはならない様子。
- 超技術
ゲーム運営は、主に医療面において現代の水準を遥かに超える技術を擁しており、頻出する「血液が体外に噴き出た瞬間、綿状の物質になって凝固する止血処置」をはじめ、バラバラになった人体を完璧につなぎ直す外科技術、更には記憶の消去処理など、様々なものがある。
ただし万能ではなく、パーツが原型をとどめてない部位は復元できないほか、目などの繊細な部位へのダメージは完治できないことがある。
観客たち
ゲームの「観客」についてはメインストーリー中では存在がほのめかされるのみだが、桁違いの資産を持つ好事家たちであるらしいことが示唆されている。
巻末特典や書店特典のSSで一部の観客が直接登場したこともあるが、おおむね「デスゲームものによくいる悪い金持ち」の類である。
ゲームを生き残った「勝者」に与えられる賞金は一人当たり数百万円、そして前記の通り基本的にゲームバランスは「参加者の七割生存」であるため、1ゲームあたりすくなくとも数千万、場合によって億単位の金が動く計算となる。その賞金の出どころである「観客」たちの保有資産も推して知るべし、というところである。
また観客たちはそれぞれの「推し」に対しては賞金を上乗せしたりするらしく、プレイヤーたちが「観客ウケ」を意識して振る舞う描写がしばしば登場する。
さらには、別途にお金を積むことでそれ以上のこともできるらしく、書店特典のSSにおいて、とある観客が自分の推していたプレイヤーについて、運営からとんでもないモノを買い取る様子が描かれている。
なお、デスゲームものではゲーム運営それ自体が「悪い金持ちの道楽」な事もあるが、本作では単に金払いの良い顧客に過ぎないようで、運営に関わっている様子はない。
ゲームにまつわるジンクス
本作のデスゲームについては、いくつか「オカルト」的なジンクス、謎が語られている。
三十の壁
作中でたびたびプレイヤーたちによって言及される、有名なジンクス。通算で30戦目となるプレイヤーを「通常なら考えられない不運」の数々が襲う、というもの。
単なる思い込み、では説明がつかない不可解な逆境に追い込まれるようで、実際に30戦越えのプレイヤーは、29戦以下のプレイヤーに比べ極端に数が少なくなっている。
99連勝
主人公・幽鬼の目標であり、彼女の師である白士の目標でもあった連勝記録。
幽鬼は「数字そのものに意味はない」と認識しているが、実はこの記録の突破者を産み出すことがゲーム運営の「真の目的」に繋がることが、折に触れて示唆されている。
主要登場人物
本作の主人公。本名は「反町 友樹」
作中たびたび「幽霊のような」と評される、生気と現実感の欠けた風貌をしている。
実社会への不適合からデスゲームの世界に入り、師と仰いでいたプレイヤー「白士」が目指していた「このゲームで99連勝する」を受け継ぎ、目標としている
身体能力や戦闘スキルは相応に高いものの超人的というほどではなく、単純な戦闘力においては対戦相手に後れを取ることもしばしばある。
しかし生死に関わる出来事への勘の良さや、判断能力の高さ、土壇場での思い切りの良さなどで死地を潜り抜けていく。
幽鬼の師。年齢不詳の長身の美女。本名は「白津川 真実」
まだデビューしたての頃の、天性のセンス任せでゲームをクリアしていた幽鬼を叩きのめし「この先を生き延びていくための攻略法」を教え込んだ人物。
95連勝を誇る伝説のプレイヤーであったが、目標としていた99連勝を目前にして敗北。その目標は、幽鬼が受け継ぐこととなる。
黒スーツにサングラスで固めた成人女性。幽鬼の送り迎えを担当している。
ビジネスライクな付き合いではあるが関係性は良好で、幽鬼が私生活の困りごとを相談することもある。
その他の登場人物
デスゲームを扱うテーマ上、名前やイラスト付きのキャラが出てきてもその回かぎりで死亡してしまうことも多い。一方で「基本的には七割生存するゲームバランス」であるため、初登場時はモブ同然のキャラでも、のちに思わぬ形で再登場することがある。
以下に、複数の巻に渡って本人または名前が登場するなど、出番が多めのキャラを上げる。
まだゲーム経験が少ない頃の幽鬼と対戦したプレイヤー。
プレイヤーとしての実力は問題外だったものの、萌黄との短い出会いをキッカケに幽鬼は「死亡遊戯で飯を食う」決意を固めることとなり、彼女に後々まで記憶されているプレイヤーの一人となっている。
真正の殺人鬼であり、参加したゲームの他プレイヤーをゲーム内容と無関係に皆殺しにしている恐るべき人物。
とあるゲームにて幽鬼に倒されるが、彼女に様々な意味での傷跡を残した。
萌黄の師でもあり、彼女たちとの戦いを通じて、幽鬼は「99連勝を目指す」という大目標を固めた。
強い目的意識はなく、流されるように何となくで参加している厭世的な少女。
参加したゲームが本来の想定を外れた大荒れの展開になりがちだが、本人は生き残る、という悪運の持ち主。
義体職人
例えるならドワーフのような「低身長で筋肉質、髭もじゃ」な見た目の中年男性。本作では珍しい、男性のレギュラーキャラ。
プレイヤーたちが四肢を失った際に、代わりとなる人工義肢を作ってくれる職人。
職業がら顔が広く、交友関係の狭い幽鬼が情報源として頼る事もある。
自信満々で高飛車なお嬢様。
とあるゲームで出会った幽鬼を「口だけの自称ベテラン」と侮るも、格の違いを見せつけられて叩きのめされてしまう。
しかしその悔しさをバネに奮起し、後に思わぬ強敵となって幽鬼の前に立ちふさがる。
長身のマッチョ美女。見た目通りフィジカル全振りタイプのベテランプレイヤーであり、他のベテラン勢ですら「複数人でかかっても難なく叩き潰される」と、力押しは即座に諦めるほどの別格。
またサバイバル的な知識・判断力も高く、およそ弱点らしい弱点のない強豪プレイヤー。
幽鬼とは幾度かのゲームで顔見知り。
とあるゲームで幽鬼と出会った初心者の少女。
行きがかりで助けてくれた幽鬼を「師匠」と見込んでまとわりついてくる。
「自分が弟子を取ること」についてかつての自分と師匠を重ねてしまった幽鬼は、彼女との関係性に色々と悩むことになる。
とあるゲームで幽鬼と出会ったプレイヤー。
やたらに芝居がかった喋り方をする、白黒メッシュ髪のマニッシュな美人。しかし初対面の際は「その他大勢」扱いで他のプレイヤーともども一蹴されてしまい、幽鬼にまったく記憶されていなかった。
鏡に映った自分の姿にいつまでも見とれる事が出来るなどネタキャラ感も強いが、ゲームの「業界」について事情通であるそぶりを見せるなど謎が多い。
全盲でありながらゲームをプレイしていた、という凄腕の元プレイヤー。幽鬼の師である白士よりもさらに前の世代にあたる古参だが、見た目は若々しい美女。
とある理由で彼女を訪ねた幽鬼に、実戦同様の訓練を課す。
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幽鬼役は中島由貴。