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猪木アリ状態

いのきありじょうたい

プロレスラーのアントニオ猪木とボクサーのモハメド・アリが対決した時に起こった状態のこと。
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猪木アリ状態とは、一方が仰向けになり足を突き出せるように構え、もう一方は立って構えている体勢のこと。

仰向けになったのはアントニオ猪木、立って構えているのがモハメド・アリであったことからこう呼ばれるようになった。


世紀の一戦編集

1976年6月26日に行われた日本の人気プロレスラー、アントニオ猪木とボクシング世界ヘビー級王者のモハメド・アリの対決。


アリは予てから「ボクシングと自分こそ最強であることを証明したい」と考え、莫大なファイトマネーを自ら用意して世界中から挑戦者を募った。

アリのサポート陣営はすぐさまこの挑戦を撤廃し、アリを宥めてほとぼりが冷めるのを待つつもりだった。


ところが猪木がこれにいち早く名乗りを上げ、さらにアメリカの知人を通じてメディア関係者に手をまわして宣伝させ、アリのサポート陣営の退路を断って試合の実現に乗り出した。

これにアリ本人も意気軒昂に迎撃の姿勢を見せ、サポート陣営もとうとうアリの闘争心を止められない状態に陥ってしまった。


この世界初の異種格闘技の公式戦に試合前からファンは大いに沸いた。

プロレスボクシングで試合をしたらどうなるのか、全く予想が付かなかったからである。

「投げや固め技があるプロレスの方が強い」

「アリの重い一撃と素早さに猪木は翻弄されるだろう」

など、とにかくプロレスとボクシングにある技を惜しみなく使った「世紀の一戦」になることが期待されていた。


世紀の凡戦編集

いざ試合が始まると、猪木は滑り込みながらのキックを繰り出した後、そのままリングに寝そべり足をアリに向けて戦う姿勢をとり続けた。


ボクシングを始めとした「立ち技」は立っている相手を倒すための技術であり、既に寝ている相手に対して有効な攻撃手段を持たない。

対してレスリングを始めとした「組み技」は相手に組み付いて制するための技術であり、立って殴り合う必要に迫られない。


試合は完全に硬直し何度も仕切り直しが行われるも、再び同じ状況が繰り返されるばかりで観客たちは大いに落胆し「世紀の凡戦」と言われるようになってしまった。


当時は漫画や実写ドラマなどで構築されたロマン溢れる空想上の異種格闘技のイメージが強かった時代でもあり、本物の異種格闘技におけるロマンの欠片もない泥仕合を目の当たりにしたファンが面食らったことは想像に難くない。

猪木はなんとか寝技に引きずり込もうと執拗に脚を狙っていたが、アリは最後まで膝をつく事はなく、試合は判定による引き分けとなった。


対戦後の評価編集

当時未公表だったルールが明確になるにつれ「猪木は立った状態でのキック禁止」を始めプロレス技のほとんどを禁止される相当不利な試合だったことが明らかになり、酷評されていた猪木の評価は高まっていった。


より正確には「アリがマットに膝を付けたら猪木は寝技を仕掛けても良い」という抜け道が用意されていたのだが、アリは最後まで立ち続けたため猪木はアリをマットに引きずり込めず、アリが膝を屈するまで蹴り続ける以外の手段がなかった――というのが大凡戦の真実だった。

猪木は立ち技では敵わない事が分かっていたからこそ最善策を取ったのである。


実はアリ陣営は猪木が真剣勝負を挑んでくることを想定しておらず、アメリカでプロレスと言えばヒーローショー的なパフォーマンス性の強い興行という認識が一般的であり、真剣勝負こそエンターテイメントとする武道的な日本のプロレスとの“差”を精査せず、アリの闘争心に押されて受けてしまい、偵察先の猪木の練習風景を見て相当焦ったという。


このため猪木はアリ側に試合放棄されることだけは避けるべく「何を言われても呑め」とアリとの試合実現のためにアリ陣営の無茶振りを全て受け入れる方針を取った。

また猪木もかつて「柔道vsボクシング」が日本で催された記録を知っていたので、アリ側にどんな無茶な制限を言い渡されても戦える自信があったと明かしている。


最強の呼び声も高かったボクシングとの公式戦を成立させ、プロレスで対抗して見せた一例としては世界的にも大きく評価され、猪木は同年12月12日にパキスタンにて噛み付き、目潰しすら許容されるノールールマッチに挑むことになる。


アリは猪木に何度も蹴られた脚が大きく腫れ上がり、帰国後もしばらく不自由な生活を余儀なくされ、この原因となった滑り込みキックは「アリキック」と呼ばれた。

この猪木の奮闘を称え、アリは自身の入場曲「炎のファイター」と「Ali, Bomber yeah!!」の掛け声を暖簾分けしている。


40年後の2016年、日本記念日協会により猪木アリ戦が行われた6月26日は「世界格闘技の日」と認定された。


総合格闘技での再現編集

後の時代で総合格闘技の試合が盛んになると、この猪木アリ戦と全く同じ状況が頻繁に起こってしまい、試合が円滑に進まなくなってしまう。


バーリトゥード(何でもあり)を謡っていても試合である以上、金的などの急所攻撃は禁じられているため、立っている相手ができることは寝ている相手の脚を蹴ることくらいである。

膝を付けばダウン扱いされるルールならともかく、寝技が許容される状況において足への打撃は決定打になりにくく、無理に上半身を踏みつけようとすれば逆に組み付かれるリスクを伴う。


互いの武術の有利とする状況が全く違い、互いに打開策が見出せないまま試合が硬直してしまうため、総合格闘技ならではの問題点として注目された。

この状況は「猪木アリ状態」と呼ばれ、猪木の取った戦法の実践性が図らずとも証明されたのである。


競技として成熟しつつある現在では


・打開策の発見

・寝技/打撃の技量バランスの向上

・レフェリーによるブレイクといったルールの整備


と言った要因により長引くことこそ減ったものの、下手に動けばその次の一手で決着が付きかねず、駆け引きを生む状態・戦法としては今なお健在。


リアルファイトにおいては編集

喧嘩などの実戦の場で猪木アリ状態に陥ったという事例が(少なくとも公の場には)確認できないため、リアルファイトでの実用性については未知数であるが・・・


常識的に考えるのならば非常にリスキー過ぎる。

とは言え、低姿勢で相手の攻撃を避け、そこからの反撃に繋げるという動作は様々な格闘技や武術にも存在するため、全くの無意味と断言するのは早計である。

ただし、そもそもルールで制限された試合と違って、相手が急所攻撃を行わずに1対1の素手の戦いに付き合う保証がない状況で、自ら仰向けになって股座をさらけ出すのはハッキリ言って自殺行為にも近い。

加えてこの体勢だと睾丸(キンタマ)の位置が臀部側に下がるので、ケツにローキックが入ればその時点で金的が成立してしまう


余程寝技などの低姿勢での技に自信が無い限り使用はお勧め出来ない。



関連イラスト編集

あやせ黒猫状態ンモー


関連タグ編集

総合格闘技 プロレス ボクシング

アントニオ猪木 モハメド・アリ

ジェシー・メイビア バキ

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