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つまるところ、自分さえ生まれなければ、世界(ワタシ)はこんなにも平和だった

概要

CV:置鮎龍太郎

伝奇小説『空の境界』第六章、「忘却録音」に登場。

黒桐鮮花が通っている礼園女学園の男性教師で、外国語を担当している。

放火事件でやめた教師の代わりに働くことになった。

人物

笑顔の絶えない、覚えやすいのに覚えにくい、という印象をもたれている。

ただ、いつもニコニコと優しく笑っているが、本人によると笑っているわけじゃなく、それが素の顔らしい。生徒達からは、「どこか抜けていて忘れっぽい人」と評されている。

ウェールズの片田舎の生まれで、神童と言われるほど頭が良かった。10歳の時に妖精に攫われ、戻ってきた後に日本人の元へ養子に出された。「玄霧」は彼を養子にもらった日本人の姓で、皐月もその日本人がつけた名前。それ以前の名前は不明。

妖精に攫われて以来物事を「再認」することができなくなっており、彼にとって過去は「情報の集合体」と化してしまっている。

いわば文字に書かれた情報だけを頼りに存在を判別しているような状態であり、自分の手ですら「これは自分の手なのだろう」と仮定することしかできない。

式と鮮花曰く黒桐幹也に似た雰囲気らしい。

正体

その正体は封印指定を受けているアトラス院出身の魔術師。

ゴドーワード、という名を持つが、蒼崎橙子によると『ゴドーワードの本名や生い立ちは不明』であり、アトラス院でも識る者は限られ、本人を見た者もそうはいないだろうとされる。

時計塔の魔術師達に到っては、存在しない幽霊ではないかと訝しんでいた。彼の過去は、彼自身のセリフや地の文などで断片的に語られるのみとなる。

忘却録音」における黒幕であり、黄路美沙夜に魔術を教え、妖精事件が起きる切っ掛けを作った。

また、荒耶宗蓮から「式の記憶を再生する事」を依頼されていた。依頼実行前に荒耶が敗れてしまったが、妖精事件を調査する式と対面した事もあり、式が忘れていた「昏睡する直前の記憶」を強制的に思い出させた。

劇場版では、事件の直後に行方をくらませたが、原作ではその後、生徒に刺され命を落としている。自らを刺した相手にさえ優しかった彼を恐れ、ナイフを手放し逃げる姿を確認してから現場の鍵を内側から閉じ、静かに息を引き取った。

誰に殺害されたのかは不明(描写からしたら美沙夜だと思われるが彼視点の地の文では断定されていない)。玄霧本人は外見的特徴から誰なのかを特定していたが、髪型だけは記録した情報と違っていたため、「再認」のできない彼にとっては『初めて見る他人』だった。

能力

バベルの塔で神々に言葉を乱される以前に使われていた統一言語を再現し、『神代が優れていたのは当時の自転と月の位置関係、星の巡りによる相克がエーテルを満たしていたから』だけでなく『言語自体も優れていた』ことを証明したことで、蒼崎橙子より早くマスタークラスへと最年少で到達している。

「偽神の書(ゴドーワード)」、「統一言語師(マスター・オブ・バベル)」とも呼ばれ、神話の時代を唯一再現出来る、魔法使いに最も近い魔術師

しかし、もともと彼自身には魔術の才能が無く、正確には鮮花と同じ変異的な遺伝体質。

また、彼が話すこの言葉は世界そのものに話しかけるような類の物であるため、彼の言葉はそのまま世界の真実となる。

言うなれば、『万物に共通する最高の催眠術師』。

統一言語とはバベルの塔が崩壊する以前に使われていたものであり、無形の言語。人が人に話しかけるものではなく、人が世界そのものに話しかけることで意味を決定させるため、人間どころか万物に対して話しかけることが可能である。

この言語が当たり前に使われていた時代は統一言語同士での「対話」が成立したため問題にはならなかったが、現代において統一言語を話せるのは玄霧のみであるため、事情が変わってくる。

存在論的なヒエラルキーとして、ある存在「A」の上位に「世界に存在するA」というものがあり、統一言語が話しかけるのは後者。こちらに話しかけられた場合、それを否定するということは世界に存在するということを拒否することになるため、個人の意思ではどうあっても抗えない。

神の門を意味するバベルを冠した異名にあるように、すべての生物に共通する意思疎通とは根源(かみさま)に通じる門にほかならず、彼にとって根源へ至る門は常時開け放たれているような状態にある。ただし玄霧には魔術師としての能力がないため、その門をくぐり抜けることはできない。

この点は「根源から直接魔力を引いているようなものであるため、根源を目指す必要がない」という神代の魔術師と在り方が類似している。

また、体が根源と接続している両儀式の場合、統一言語と同じ階級であるため彼女個人には効きが薄い。一足で切り付けられる間合いまで踏み込んだ彼女に対し、【あなた」「には」「見えない】と語りかけることで気配で目の前にいるのは分かるのに姿を見つけられない状態にしたが、効力を完全に発揮する前に片腕を殺されている。

その後、【ここ」「では」「見えない】と語りかけることで何もかもが不可視の世界になり、直死の魔眼を封じた。

礼園女学園では言語オタクと陰で呼ばれていたが、これも統一言語によるもの。玄霧皐月はこの言語一つを学ぶことで、現存する全ての人種、部族の言語の生まれた背景、信仰、原理から思想の全てを理解している。

その他、統一言語を利用することにより世界そのものが記録している記憶、霊長の意志といったものにアクセスし情報を集めたり、本人すら忘却している記憶を還すことも可能。これにより「やめろ。そんなモノ、は欲しくなんかない!」と叫んだ両儀式に対し、失われていた両儀織の記憶を強制返却した。

起源は『望郷』。

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