概要
2歳から6歳くらいまでの幼児で稀にみられる、細菌性赤痢の劇症型。
日本でも高度経済成長期前までは時々発生しており、疾風(はやて)と呼ばれ恐れられていた。
なぜ幼児が赤痢菌に感染すると疫痢になることがあるのかは、未だに原因不明である。現在、日本では疫痢の発生は報告されていない。
症状
初期には、水のような下痢、激しい腹痛、嘔吐といった、通常の赤痢でも見られる典型的な胃腸炎症状で始まる。
下痢は血便になることもあり、しばしば38度以上の高熱を伴う。
疫痢は胃腸炎にとどまらず、急激に進行し、心臓・脳・神経などにもダメージを与える。
血圧低下、手足が冷たくなる、顔面蒼白、けいれん、昏睡などがあらわれ、やがて多臓器不全を起こす。
余談
現在、日本では疫痢は発生していないとされているが、腸管出血性大腸菌O157が引き起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)が「疫痢の再来ではないか」という説もある。
実際、赤痢菌と大腸菌は生物学的には近縁種であり、また、O157が産生するベロ毒素は赤痢菌が産生する志賀毒素と類似の猛毒である。