太宰治「『本』の正体は一冊の小説だ 書いた事が真実となる白紙の文学書」
概要
『文豪ストレイドッグス』において作中人物たちが探し求めている品。ヨコハマのどこかに封印されているという、書いた事が真実となる白紙の文学書。一種の現実改変装置であり、作中では専ら『本』と呼ばれている。
作中で起こるさまざまな事件や出来事にはこの『本』が絡んでおり、『文豪ストレイドッグス』における最重要アイテムと目されている。一方で制作者や制作目的、その在処、そもそもの正体、その全てが不明という、謎に満ちた存在でもある。
フィッツジェラルドは亡き娘を蘇らせるために、ドストエフスキーは異能力者のいない世界を創るために、それぞれ『本』を探している。また各描写からアガサ・クリスティも『本』を狙っている可能性がある(詳細はリンク先を参照)。
性質
前述通り書いた事を現実にする、強力な現実改変装置。ただし記述内容がそのまま現実になるのではなく、物語的な因果整合性を必要とする。例えば「或ル日人類ハ何故カ滅ビタリ」とだけ記載しても無効となる。種田山頭火はその手の異能力者が生み出した代物だろうと推測している。
現実改変の対象は人々の記憶にも及び、その意味では小栗虫太郎の異能力「完全犯罪」をも上回ると江戸川乱歩は目している。
『本』そのものの耐久性も異常に高いようで、フィッツジェラルド曰く「どんな炎や異能でも傷つかない」。ただし異能特務課は研究のため、不明な手段を用いて一片の『頁』を切り取ることに成功している。
その『頁』も本体と同様の効果を発揮するが、面積が少ないために文量が大幅に制限される。また、片面に記述を終える度に効果が発生するため、『頁』1枚につき2回現実を改変できる。つまり本体は数十あるいは数百回の現実改変を起こせる可能性が高い。
また、『本』を得るためにはヨコハマの異能者を根絶やしにする必要があることが何度か示唆されているが、その理由は不明。
作中での動向
本編で最初に『本』の存在に触れたのはフィッツジェラルド。ある予言異能者が、『本』がヨコハマの地に封印されていると述べたらしい。
彼は中島敦が”道標(タイガービートル)”であると述べたが、その意味は不明。素直に解釈すれば、敦が『本』の在処を示せる人材だという意味か。ちなみにタイガービートルとはハンミョウのことで、跳びはねる様子が道案内をするように見えるらしい。
序盤、組合(ギルド)によって57億円もの懸賞金が懸けられた敦がポート・マフィアに狙われたのにも、そういった事情が絡んでいる。
その後「共食い」事件の前にドストエフスキーと太宰が『本』について話すが、その際に「約定の地」という言葉が登場。『本』と深い関わりがある場所と推察される。
天人五衰事件においては、シグマが異能力を用いて、特務課が保管していた『頁』を入手。天人五衰は祓魔梓弓章、政府の秘密会議などを利用して物語的整合性を用意し、武装探偵社を一連の事件の犯人にすり替えた。さらに裏面を用いて国家の消滅を画策する。
なおこのとき『頁』に書き込んでいる人物は影になっていて不明であったが、本人の台詞や福地桜痴からの言及を鑑みるに、おそらくはドストエフスキーであると思われる。
シグマとの関係も深い。彼が支配人をしている天空カジノは、天人五衰事件の8日前に『頁』によって生み出された。そしてシグマ自身も、3年前何者かが『本』に書き込んで創った人間だった。
『頁』そのものは福地が所有しており、これを巡って長きにわたる戦いが巻き起こった。
余談
作中にはこの他にも度々本が登場する。敦が昔読んだ「頭は間違うことがあっても、血は間違わない」と書かれた本(史実の中島敦の著書『光と風と夢』)、織田作之助が読んでいた本などである。これらも『本』と関わりがあるのではないかと考察されることがある。
アニメでは『本』の外見のイメージが登場するが、その表紙には題名のように「STRAY DOGS」とある。そしてこれと同じ外見の本を、アニメ1期のエンディングにおいて敦が持っている。ただしこちらは白紙ではなく、史実の中島敦の著書『山月記』の文章が書かれている。
関連タグ
以下、単行本未掲載のネタバレ注意
中島敦の「月下獣」は本に対する『栞(しおり)』である事が明かされた。