概要
日食の中で、太陽が完全に隠れる日食のこと。皆既日食は、太陽の見かけの大きさ(視直径)よりも、月の視直径が大きい場合に生じる。
太陽コロナは、太陽の光球面よりも大きく広がっているため、光球面が月に完全に隠されて、空が夜のような暗黒状態になると、それまで明るい太陽の光で見えなかったコロナが見えるようになり、月の黒い円盤の周囲に環あるいは環状の広がりとして現れる。
皆既日食は、天球上の太陽の位置と、月の位置が丁度一致する場合にだけ生じる。月によって作られた影は、地球表面で、小さな移動する円形の影として現れる。この影となった地表の部分で皆既日食が観察される。皆既日食自体が稀な現象であり、更にそれが観察できる場所も非常に限られているので、ある場所で皆既日食が起こるのは、非常に稀である。
ダイヤモンドリング
皆既日食の直前と直後には太陽が一部分だけ見え、「ダイヤモンドリング」と呼ばれる天体現象が現れる。以下の図のように、コロナの環の一部に、明るい光の放射が現れる。
ダイヤモンリングは、地球上のように高空に厚い大気のある場合、大気の散乱によって、広がりのある「放射」として見え、劇的であるが、宇宙空間などから見た場合、単に明るい光球面の一部が現れるだけで、「光の拡散的放射」とならない。
関連事象・項目
・天の岩戸 - 天照大神が岩屋のなかに隠れることにより、世界が暗黒となった。日本神話で記述されているできごと。これは、皆既日食の神話的・物語的な表現であると、一般に考えられている。
・卑弥呼 - 邪馬台国の女王卑弥呼の死亡の年は、記録では分からない。しかし、卑弥呼はアマテラスのモデルと考えられ、アマテラスの岩屋隠れは、卑弥呼の死を示唆するという解釈がかなり有力である。
・テスカトリポカ - アステカの闇の神。同名の推理小説のなかで、この神は、皆既日食の神格化であるという示唆がある。