概要
元々は「字伏」の一体だが、白面の者に邪悪な心を買われて手下となった。
その姿は漆黒のとらである。「字伏」は形態・容姿ともに各々の個体差が非常に大きく出るのが常な種族だが、この紅煉は体色を除いてなぜか初代字伏と瓜二つである。
愉悦と欲望のままに人や妖怪を殺し、他者を踏み躙ることを何よりも好む卑劣漢。性格だけなら小物臭漂う噛ませ犬タイプだが、その実力は劇中トップクラスなのでよりいっそう質が悪い。
白面の者より譲り受けた、伸縮自在な3本束の霊刀(獣の槍と同レベルの硬度を持つ雷刀とされる)を顔に仕込み、身体能力、雷や炎を操る能力共にとらを完全に上回り、その火炎はとらの雷撃を完全に相殺してしまうレベルである。なお、雷と炎の色も真っ黒である。また、紅煉の性質か白面に強化されたのか不明だが耐久力もずば抜けており、攻撃を受け、鏢に存在を禁じられても耐え抜いている。紅煉は遊び癖が強いため油断も多く、攻撃が通じなかったと見せつけて愉悦に浸る面があるので、致命的な攻撃以外は回避せずに突っ込むことが多いため相手から攻撃を受ける事は少なくない。
ちなみに、伸縮自在の霊刀は白面自身による作品ではなく対白面用の人間仕込みであり、それを白面が利用した(奪い取った?)物を与えたらしい。この刀には(おそらくは製造者がこさえた対妖怪用の霊力に加えて白面が追加で何か施したのだろう)特殊な力が込められており、不死性が高いはずの妖怪、それも強力な種族であるはずの字伏たちが斬り捨てられても復活できず、ある理由からほとんど不死身のとらですら、切られたところが融解していた。
更に自身の分身ともいえる「黒炎」を無限に生みだすことも可能で集団相手でも戦える。
その圧倒的な強さは日本全国でも指折りの実力を持つ妖怪たちでさえ全く歯が立たず、潮ととらでも苦戦する。ただし、彼の驚異的な強さの源は、吻先の霊刀含め白面から賜った部分も大きい。
- 黒炎の生成は白面の尾の一つの能力であり、白面の生涯の要点の隠喩である。
その役割は白面にとって復活の障害となる者の排除で、決戦を前に目覚めた「字伏」たちを次々に抹殺(字伏たちを、復活する前の石化したままの状態で大量に葬るために、白面の者は他の字伏たちよりも15年程先に目覚めさせ強化した)。なお、白面が紅煉を雇用するきっかけになったのは、当時石化の途中であったある字伏を拷問し字伏族の秘密を強制暴露させたあげく惨殺したことであり、字伏でありながら邪に取り憑かれ、「白面にさほど興味のない」紅煉を誘惑・勧誘するに至った(誘惑は白面の得意分野でもある)。
白面も(少なくともその強さは)かなり頼りにしていたようで、決戦にて切り札として呼び寄せており、いつまで経っても来ないことにかなりの動揺を見せていた。決戦は人間と妖怪が手を組んで白面一匹と戦って辛うじてギリギリ勝てた戦いだった為、そこにうしおととらも苦戦する紅煉が加われば勝負はわからなかった…というか、普通に白面が勝っていたと思われる。
黒炎とともに潮ととらの前にも現れ、その実力を見せつけて苦しめた。
最終決戦時には白面の者とは別の場所で自分を追ってきた鏢と戦っており、激しい死闘の末滅ぼされた。
ネタバレ
元は人間であり、名前は「捉影」という凶悪な追い剥ぎの殺人鬼だった。
偶然獣の槍を拾ってからは人々にとって恐怖の存在である妖怪を殺すことに愉悦を感じ、殺しの対象が人間から妖怪に代わり、片っ端から妖怪を殺しまくっているうちに邪悪な心を宿したまま字伏となった。(ある意味では最も白面の者に近い字伏であると言える)
妖怪殺しの際は、報酬を得られて、称賛と尊敬を受けられたからとは言え人々を守っていた。しかし、飽くまで上記の通り愉悦で殺す対象が人間から妖怪に変わっただけ。
そして鏢の家族を殺したのはコイツである。
不運にも紅煉が石化していた最寄りの村だったこと、復活直後の空腹を満たすための捕食であり、また鏢の生還は仕損じではなく敢えて生かし、残された者の悲しみを堪能したかったとの事だが、皮肉にもそれが自分にとって最大の刺客を生み出し、滅せられる結末を迎える事となる。
明らかに槍の人選ミスである(拝借表現)と言いたくなるほどに、その所業は鬼畜であり、この作品でも白面を除けば類をみないほどの害悪である。
紅煉の寝返りは、字伏族の秘密が暴かれたことが原因で、一概にギリョウの過ちとは言えないという意見もある一方、やはり人選ミスだと考えられる部分もある。
- たとえ、字伏族の秘密が暴かれていなかったとしても、白面は促影の悪意や人間性を把握していて目を付けていたはずである
- 故に、例え獣の槍側として蘇っていたとしても、遅かれ早かれ白面に懐柔されていた
ということである。
しかも、
- 鎧も付けず、「殺し」を楽しんだ促影は戦闘自体や痛感に対する恐怖や苦手意識も比較的少ないはず
- 白面に興味がないのは見方を変えれば獣の槍=ギリョウの憎しみに囚われない強い精神性とも解釈できる(精神的に崩壊していた可能性や、ギリョウが促影の精神性に困惑したり翻弄された可能性もある)
と質が悪い。
白面との最終決戦にて、本来なら心強い味方の一体になれたはずなので、形上だけでも役割を果たす可能性にギリョウは期待していたのかもしれないが。
しかし、憎しみに囚われた怨霊ギリョウは、獣の槍を使える素質さえあれば使用者の倫理観を鑑みなかったため、最凶最悪の字伏が白面の者と協力関係になると言う結果を生み出してしまったわけである。ある意味で、獣の槍が善なる存在ではなく「復讐心の産物」であることを如実に表した出来事と言えよう。
促影の生前?の素の実力は不明。
促影以外にも、槍の使い手には、出で立ちから見てそれなりの戦士などもいたようなので、少なくとも促影が最強だという事にはならない。というか、基本的に獣の槍の使い手はオート強化・しかも、まるで誰かに操られているような流れる動きをするのだ…。
なお、初代字伏と基本デザインがそっくりなのは、最初の使用者が字伏になった後、二番目に槍に選ばれたからという説もある(が、斗和子に拷問された字伏が石化し始めていたのは捉影が未だ槍を振るって好き勝手やっていた時代なので、この説は否定される)。悪意が強く、とらとは違う意味で白面に近い存在なのかもしれない。
ちなみに、ファンによる考察では、鏢が最初に紅煉の昔話を語った時は、単に人間時の記憶を失くしているだけでなく、日本語での捉影の発音が、中国語におけるピンインのそれと全然異なっているために、名前を聞いてもピンとこなかったのでは?という意見もある。但し、鏢は元々同国なので中国語でも話せるはずだが。
ちなみに、捉影が初めて手にかけた妖怪は通称「もろもろさん」と言う。彼の背負っている甲羅は昭和ガメラのそれとうり二つであった。
アニメ版
第二期よりOP・ED、そして第28話において初登場した。CVは旧OVA版において鏢の声優を務めた若本規夫が担当しており、終盤において鏢の新旧声優対決となったわけである。
漫画版における全身ベタ塗りの外見と「黒いとら」という例えから、多くのPixiv作品においても全身漆黒で描かれていたが、此の度初のカラー資料として登場。とらより暗い黄土色の体色に薄紫色の隈取りと、名前通りの紅い髪に眼といったカラーリングであることが判明した。