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花宵道中

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はなよいどうちゅう

『花宵道中』(はなよいどうちゅう)は、宮木あや子による日本の小説作品。第5回(2006年)R-18文学賞受賞作。2009年より斉木久美子作画で『女性セブン』(小学館)で漫画化された。

概要

宮木あや子による日本の小説作品。第5回(2006年)女による女のためのR-18文学賞受賞作。

江戸吉原遊郭の小見世・山田屋が舞台。5部プラス1部計6部構成で、それぞれ主人公が異なる。

2014年、映画化作品が公開された。主演は安達祐実

斉木久美子氏により小学館から全六巻コミカライズされ、原作にはないオリジナル描写も多い。

あらすじ

江戸で唯一幕府公認の吉原遊郭。男だけが夢を見られる場所。三度のしきたり、廓言葉も今は昔、花魁道中も滅多に出来ない天保の改革が行われる時代、小見世の山田屋を中心に繰り広げられる、沢山の遊女たちの人生が重なり合い、時にもつれ、またはかなく結ばれる美しくも切ない物語……

各部あらすじ

第一部・「花宵道中」(はなよいどうちゅう)

小見世山田屋の遊女・朝霧は、小柄で不器量ではあるが、酒を飲んだり男に抱かれるなど体温が上がると紅色の斑点が身体に雅びに浮かび上がるという珍しい身体を持つ。

ある日朝霧は、妹女郎の八津に連れられ八幡神宮の縁日に向かうが、途中で八津とはぐれてしまう。

そこで出会った、染色職人の阿部屋の半次郎という男。その男は朝霧の穿いていた下駄の鼻緒の青い牡丹を染めた張本人であった。

折れた簪を直してやるという半次郎に朝霧は惹かれる。

それから数日後吉田屋という常客の座敷に呼ばれる朝霧。そこには半次郎が相席していた。半次郎の前で吉田屋に乱暴に抱かれる朝霧。そして半次郎から簪を受け取ってしばらくたったある日、朝霧は半次郎が吉田屋を殺害したということを八津から聞くのであった……

第二部・薄羽蜉蝣(うすばかげろう)

八津付きの新造(見習い遊女)、茜は初見世が迫っていた。だが茜は、同じ新造で姐女郎が看板女郎の桂山の緑と違い、道中はない。

そんな中茜は密かに茶屋でよく見かける容姿端麗な船頭の男に恋をする。しかしその船頭は、大見世の角海老楼の売れっ妓女郎の水蓮の間夫(愛人)であった……

第三部・青花牡丹(あおばなぼたん)

嶋原遊郭の大見世きよみ屋の看板女郎の霧里は、天女のような美貌の持ち主。しかしあまりに美しすぎて他の見世の女郎から客を取ると苦情が相次いでいた。

大見世の大木屋の菫太夫が怒りまくり上へ掛け合った結果、霧里はとうとう嶋原から江戸吉原に見世替えになってしまう。

そうしてやってきたのは吉原の小見世、山田屋。霧里は京で染色職人をしている弟の東雲(半次郎)の事を思いながら日々を暮らしていたが……

第四部・十六夜時雨(いざよいしぐれ)

姐女郎の朝霧の一件があってから、八津は決して恋をしないと心に決めていた。ある日、髪結いの弥吉が引退し、二番弟子の三弥吉という男が八津の髪を結いに来るようになる。妹女郎の三津の体調不良を心配しながらも、三弥吉に心引かれていく。そんな中、茜から角海老楼の水蓮が足抜けを試みようとしているのを聞く。さらに水蓮は、八津のことを知っているようで……?

第五部・雪紐観音(ゆきひもかんのん)

山田屋の看板女郎の桂山付きの新造、緑は美しい子だが、その生い立ちから桂山以外とはしゃべれない。初見世も迫り焦る桂山に、他にしゃべれそうな子はいないかと緑に聞くと、緑は三津の名を上げる。緑は、密かに三津に惹かれており……

第六部・大門切手(おおもんきって)

嘉永に元号が変わり五年が経った盆の日、山田屋の女将・勝野(かつの)は小見世の寄り合いに出る。そこで同じく小見世の萬華楼の笹川という年季明けした遊女と出会う。笹川は年季明け後、吉原に戻って萬華楼の遣り手として働いていた。いずれ自分も勝野のように見世をまかされるのを不安に思った笹川は、勝野にどうして吉原で一生を生きていくと決めたのかと聞く。勝野はかつて山田屋の遊女として働き、今に至った経緯を話す……

登場人物

山田屋

朝霧(あさぎり)

第一部・花宵道中の主人公。姐女郎は霧里。妹女郎に八津と三津がいる。本名はあさ。

母は切見世(下級な見世)の女郎で、生まれも育ちも吉原。幼いころ母に折檻された痕が身体にあり、酒を飲んだり泣いたりして体温が高くなると、折檻の痕がまるで花のように桃色の斑点として浮かび上がるという珍しい身体を持っている。

その様を見ていた女将に拾われ、霧里の新造として山田屋につく。とても小柄で、霧里は初めて会ったとき、十四の朝霧を九つか十の禿だと勘違いした。

器量は霧里らに比べ劣るが、霧里に一通りの教養、芸をたたき込まれ、芸事に関して偉く長けており、前述の身体の件も相まって、新造の頃から人気は高かった。

上からの規制で花魁道中が出来ないまま初見世を迎え、ただ年季があけるよう黙々と仕事をこなしていたが、半次郎に出会い恋に陥る。

その後、吉田屋殺しとして指名手配されていた半次郎と再会し、半次郎の染めた着物で修復中の夜中の吉原で、念願の花魁道中を果たす。

しかし半次郎が捕まり、その後縛り首になったのを知った朝霧は絶望し、お歯黒どぶという吉原を囲む深い水路に身投げし、死亡。この事は妹女郎の八津に多大な影響を与えた。

容姿は髪結いの弥吉の亡くなった娘にそっくりだったので、弥吉は朝霧の死亡で八津と共に号泣した。

八津(やつ)

第四部・十六夜時雨の主人公。姐女郎は朝霧、妹女郎に茜、禿の宇津木(うつぎ)がいる。また妹分として三津という同郷の女郎がいる。本名はやえ。

生まれは北の方の貧しい小さな村で、十三の時に吉原に来た。無愛想だが張見世(女郎が顔見せするショーウインドウのような部屋)では前列にならない程度に人気がある。

姐女郎の朝霧の件で「自分は男に決して惚れない」と誓っていたが、三弥吉という髪結いに次第に心引かれ、ついに三弥吉と結ばれた夜、吉原を抜け出さないかと誘われる。

大見世の角海老楼の水蓮は、実は幼い頃行方不明になった八津の実の姉である。

ちなみに八津は全六部を通してもっとも登場回数の多いキャラ

三津(みつ)

姐女郎は朝霧。八津と同郷の幼なじみで本当の妹のように親しかった。山田屋に来てからもそれは変わらず、「八津姉さん」と八津を慕っている。本名はみや。

気っぷの良い、あっけらかんとした性格。容姿も桂山がいなければ看板女郎になっていただろうとは緑の見解。

身体が生まれつき弱く、医者曰く血が薄いらしい。そのせいで第四部では体調を崩し、ついに死んでしまう。

実は父親は村の少女を密かに女衒に売り飛ばす、いわゆる“人さらい”を家業にしており、八津の姉の水蓮も三津の父親にさらわれ吉原に売り飛ばされていた。そのためずっと罪悪感を抱いており、死の間際そのことを八津に打ち明ける。

彼女の死は八津のみならず、緑や山田屋全員の心に大きな衝撃を与えた。

茜(あかね)

第二部・薄羽蜉蝣の主人公。姐女郎は八津。同期に緑がいる。

当初切見世(下級の見世)の禿だったが、八津の願いで山田屋に引き取られる。緑の美しさを羨ましく思う反面、自分は緑と違い初見世に道中出来ないことで嫉妬を抱いていた。

馴染みの茶屋によくいる男前な船頭に恋している。が、この船頭は大見世の角海老楼の売れっ子女郎水蓮の間夫(恋人)であり、あるとき胸の内を水蓮に打ち明けると、水蓮は「お開帳は、目をつぶって、愛しい人を心の中に思いながら、他の男に抱かれるんだ」と初見世に嫌悪感を抱く茜に助言する。

その後茜は二人の情事の場を見、船頭の平左が聾唖であることを知る。名を呼んでも聞こえぬ相手へ、届かぬ声を何度も繰り返す水連の姿を見たのをきっかけに、初見世への嫌悪感は薄まり、昔朝霧の馴染みであった唐島屋と無事床入りを果たす。

容姿は朝霧そっくりであり、八津が茜を拾った理由でもある。

水蓮とは初見世前の一件以来親しくなり、彼女が足抜けを企んでいることを知ると、姐女郎の八津にそれを止めるようお願いする。

霧里(きりさと)

京・嶋原から江戸吉原の山田屋にまわされてきた絶世の美女。嶋原遊郭では大見世のきよみ屋の看板女郎であったが、その美しさのせで、揚屋で霧里に惚れた他の見世の客が、こっそりきよみ屋に通っていたことで、「客を奪う」と他の見世の女郎達から苦情が相次いでしまい、吉原の山田屋に見世替えさせられてしまう。

東雲(しののめ)、後に半次郎と名付けられる弟がいる。

生まれは京の薄暗い裏長屋。母親は京宇治の裕福な家の箱入り娘の藤緒で、父親は庭師の芳之助。二人は半ば駆け落ちのように所帯を持ち、霧里が生まれるが、父親は殆ど家に帰らず女遊びに夢中になり、そのことで母は精神を病んでいった。

芳之助が酔って前後不覚の時、母が無理矢理に事におよんだ際に出来たのが東雲。芳之助はその事を覚えておらず、血が繋がっているにもかかわらず東雲を自分の子だと認めず東雲には冷たく当たっていた。

母が自殺した際、父親に強姦され、それを止めに入った東雲も顔に重傷を負う。

そして霧里は嶋原遊郭に、東雲は叔母に引き取られる形になった。

吉原の山田屋では、朝霧の姐女郎として彼女に一通りの芸事をたたき込む。そしてある日吉田屋藤衛門を名乗る男の座敷に呼ばれ、それが偶然江戸に逃げていた実の父だと知ってしまう。

朝霧が初見世を迎えるまで、吉田屋は姐女郎の霧里の客になる。吉田屋と床入りしながらも、最後まで自分が実の娘だと明かさず、吉田屋も霧里のことを娘だと気づかなかった。

菊由(きくよし)という遊女と仲良くなるが、菊由が労咳になり隔離され、彼女を密かに見舞っていたが、菊由は死亡し、自らも労咳にかかってしまう。

最期は最愛の弟の幻覚を見ながら、血を吐いて亡くなった。

桂山(かつらやま)

山田屋の看板女郎。妹女郎に緑、禿に百合がいる。姐女郎は椿山(つばきやま)。

八津とは同期の仲。温厚な性格で、緑が物語途中まで唯一しゃべれる相手であった。

代々、山田屋では桂山の筋でしか道中をさせてもらえない。

緑(みどり)

第五部・雪紐観音の主人公。姐女郎は桂山。同期に茜がいる。

生まれは江戸より南の村で、村の子供は皆日焼けして黒い中、緑は色白で大きな目を持って生まれた。その為白鬼と呼ばれ村八分にあい、母親も緑の容姿を「醜い」と言い、最期まで緑を抱く事なく崖に身投げして死んだ。

吉原に売られてからは、過去の心の傷から人と上手く喋ることができなく、山田屋でも美貌の持ち主ながら浮いた存在だった。最初は桂山の姐女郎の椿山の禿だったが、しゃべらないことで下働きに格下げされていた。が、桂山だけには懐いていると知った女将は、桂山の初見世後、桂山付きの禿に戻した。

このように桂山にしか話せないので、初見世が迫る中桂山は焦り、緑も努力はしていたが、茜や他の女郎とは話せない。

そんな中三津に惹かれ、二人の仲は親しくなっていく。ある夜、三津の部屋で一緒に布団に入っていたとき、思いあまって緑は三津を組み敷く。が、逆に三津に組み敷かれ、身体を愛撫されることにより声がでるようになった。

それから度々二人は身体を重ね、愛を育んでいくが、三津の死により緑は茫然自失に陥り、自殺を考えるも、三津の生前の言葉を思い出し、彼女の分まで生きていくことを決意する。

漫画版では年季が明けた緑が、身請け話を全て断って、三津や他の女郎達のことをおもいながら大門をくぐるところで五部は終わっている。

江利弥(えりや)

山田屋の座敷持ちの女郎で、妹女郎に若耶麻がいる。八津、三津、桂山とは同期。

気の強い性格で、桂山を敵視している。角海老楼に移りたいと常々口にする。

第六部・大門切手編では、年季明けし、男に裏切られて再び山田屋に戻ってきた。

若耶麻(わかやま)

江利弥の妹女郎。弥吉の代わりに来た三弥吉に惚れており、そのせいで仕事に身が入らなくなり、客を中引け(営業時間終了時刻)前に帰らせたとして仕置き部屋に入れられた。

絢音(あやね)

姐女郎はいなく、身体の使えるところはどこでも使うという湯女のような仕事ぶりで人気がうなぎ登りの女郎。小見世ながら格式が失われるとのことで桂山は嫌っている。

勝野(女将)

第六部・大門切手編の主人公。元・山田屋の遊女で、現在は女将として見世を切り盛りしている。本名はお勝。

生まれは隅田川を越えた向島の近くの裏長屋。貧しい大工の娘で、十四人の兄弟のうち九番目の子として生まれる。

髪結いの弥吉とは幼なじみで、いつか一緒になる約束をしていた。

当時中見世の山田屋に売られた後、初見世の支度の為に現れたのが髪結いになった弥吉であった。その際、弥吉は勝野の膝で泣き崩れた。

その後二人は会うことはなかったが、年季明けし吉原を出た勝野は、生まれ育った長屋の辺りで、他の女と子を作った弥吉と再会してしまう。失意のまま山田屋に戻り、遣り手を経て女将になった。

ある日弥吉が山田屋にやってくる。どうしたのかと聞くと、娘が死んでしまったことを告白する。

そんな弥吉に勝野は昔のように膝を貸した。

そして弥吉の娘そっくりの朝霧を拾い、弥吉は山田屋へ髪結いとしてくるようになった。

六部では引退し隠居の身の弥吉は、女房を亡くしたことを打ち明け、勝野に「川の向こうに戻らないか」とかつての約束を持ちかける。勝野は来年の盆にまた話そうと言い、漫画版の最期は弥吉と一緒に大門をくぐった。

角海老楼(かどえびろう)

水蓮(すいれん)

角海老楼の看板女郎。茶屋で船頭の平左と逢い引きを繰り返している。

実は八津の実の姉で、三津の父親にさらわれ吉原に売り飛ばされたのであった。

八津に再会したあと、平左と共に吉原から足抜けしていった。

その他

半次郎(東雲)

霧里の実弟で、幼少期は東雲(しののめ)と呼ばれていた。母親に似て眉目秀麗な色男。京の駒方屋と言う染色屋で職人として働いていた。その腕前は駒方屋を支える程。

過去に父親に強姦されていた姉をかばった際、父親にノミのようなもので顔に傷つけられ、大きな傷跡が顔に残っている。

男前なので言い寄ってくる女は沢山いるが、本人は色恋に疎い。

ある時、職場からの帰り道で男に襲われ、右腕を折られる。そのせいで腕がいかれ駒方屋を追い出されるが、京一の友禅屋の萩尾屋から縁談がきて、一人娘の沙耶と祝言を挙げ若旦那となる。

しかしあの事件は半次郎に惚れていた沙耶が男に依頼したものだと知り、沙耶への愛情を一切持てなくなる。三年後、沙耶の企みで、陰間だと京中に噂され、萩尾屋からは離縁される。

その後大坂の織物問屋の阿部屋に務めることになり、江戸へ行商に向かうが、そこで姉・霧里は労咳で死んだことを知り、悲しみに明け暮れる。

気晴らしの為八幡神宮の縁日に向かい、そこで朝霧と出会い恋に落ちる。

その後取引先の吉田屋に茶屋の座敷に誘われ、そこで朝霧と偶然再会する。

酔った吉田屋が朝霧を犯す場面を見て、半次郎は既視感を覚える。そして吉田屋が自分の実の父であることを悟った半次郎は、吉田屋が姉の霧里を娘と知らず抱いたことを知ると、激昂し懐刀で吉田屋を殺害。そのまま一度は江戸から逃げ出すが、姉を守れなかった代わりに、朝霧に花魁道中をさせてやろうと決意し、江戸吉原で朝霧と再会。身体を合わせるが同心達に捕まり、最期は縛り首となった。

弥吉(やきち)

山田屋に通っている髪結い。山田屋の女将の勝野(かつの)のとは幼なじみ。

亡くなった娘そっくりの朝霧をなにかと可愛がっていたため、朝霧が自害したときは娘を二度亡くしたと号泣した。

物語途中から引退し、弟子に山田屋の髪結いを任せる。

弟子に吉衛門、三弥吉がいる。

大門切手編では最期、勝野とかつて交わした約束通り、川の向こうへ戻り一緒になった。

三弥吉(みやきち)

弥吉の二番弟子。兄弟子に吉衛門(きちえもん)がいる。寡黙な色男。八津に心惹かれ、一緒に吉原から出て行こうと誘うが、八津に断られる。

その後八津が吉原から出る日まで髪を結いに行くと告げる。漫画版では新造になった宇津木に案内され、八津の髪をいつもどおり結っていた。

吉田屋藤衞門(よしだやふじえもん)

朝霧の初客。本名は芳之助で、霧里と東雲(半次郎)の実の父。

結構な伊達男だが、酒癖と女癖が酷く、滅多に家に寄りつかなかった。

その後、妻の藤緒が自殺したのを見て、気が動転し、娘である霧里を強姦。止めに入った東雲に重傷を負わせ、そのまま京から逃げ、江戸の織物問屋の吉田屋の一人娘に取り入り若旦那と成り上がってた。

最期は息子である半次郎に刀で心臓を突かれ死亡。

唐島屋庄一郎(からしまやしょういちろう)

茜の初客。かつては朝霧の馴染み客で、朝霧の年季が明けたら彼女を引き取る予定だった。初老の人の良さそうな恰幅の良い男。

だが朝霧の自殺で山田屋からは遠のき、朝霧そっくりの茜の初見世で久しぶりに山田屋に登楼した。

平左(へいざ)

吉原へ向かう際に乗る猪牙(ちょき)という船の船頭。男前だが実は耳が聞こえない聾唖者。

水蓮の間夫(恋人)。茜の初恋の相手。

最終的に水蓮と共に吉原から出て行った。

大島屋卯之助(おおしまやうのすけ)

八津の初客で馴染みだったが、長屋女郎(下級女郎)に見世替えしていたのを山田屋の遊女らに目撃される。その後八津を座敷に呼んだが一向に来ない八津の元へ来、山田屋に上がろうとしたところを桂山に阻止され、五文賎を投げつけられながら啖呵を吐かれ、他の遊女の罵声を浴びながら山田屋を後にした。

奇しくもそれは、八津がまだ新造だったとき、お座敷遊びを心得ない不調者だった時分、朝霧に吐かれた啖呵と同じであった。(桂山いわく、いつかやってみたかったらしい)

その後、祝儀を積んで山田屋に再登楼し、八津の馴染みに戻ったが、八津の心はすでに冷め切っていた。

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