概要
中世ヨーロッパの15世紀にイングランドで起こった王位を巡り争われた一連の内戦を指す。
イングランドの王朝、プランタジネット朝の分家であるヨーク家とランカスター家によって、王位継承をめぐり断続的に内戦が行われた。最終的にランカスター家の血を引くヘンリー7世(チューダー家)がヨーク家のエリザベスと結婚し即位したことで終結した。
その名前は両家の家紋(ヨークの白バラとランカスターの赤バラ)に由来する。
イングランド王国は長年にわたり国王がフランスの大領主も兼ね、特にランカスター家に変わってからの国王ヘンリー5世の時代には一時フランス王位を手にしようとする勢いで大陸に介入。英仏百年戦争の始まりである。
しかし、その後は失策が相次ぎ、百年戦争はイングランド敗北の形で終結し、フランス領土の大半を喪失。主戦派と終戦派のヨーク公との間での対立が起こるも、当時のランカスター家国王のヘンリー6世は事態を収拾できず、ヨーク家の叛乱を招いた(1455年)。加えて当時の国内には百年戦争から引き揚げた多数の兵士が存在。大貴族間の私戦と相まって治安が急速に悪化していく。
やがてヨーク家のエドワード4世が王位を奪取。しかしそれでも国内の情勢は不安定なままであり。ヘンリー6世の一時復位や貴族の争いが繰り返される。ようやくこれが落ち着いた矢先にエドワードが死去。弟のリチャード3世が即位する。しかしここでも貴族の叛乱が繰り返され、ついにヘンリー・チューダーを担ぎ出す。ヘンリーはリチャードをボスワースの戦いで殺害して即位(1485年)。ここにようやく薔薇戦争は終結をみた。
薔薇戦争自体はイングランドの国土にはそこまでの悪影響は与えなかったと近年の研究は述べている。しかし、この事態を期に大貴族が往年ほどの力をふるえなくなったことは事実である。
創作への影響
- シェイクスピアはエリザベス女王の治世に、この時代を題材にした一連の歴史劇を執筆。とくに「リチャード3世」は名作の一つとして知られている。
- 「ゲーム・オブ・スローンズ」の原作プロットの一部はこの戦争をアイデアの一部にしている。(スターク家とラニスター家、王位継承をめぐる内乱など)
- 「ファイナルファンタジータクティクス」劇中の内乱「獅子戦争」もおそらくこれが題材と見られる。
- 上記のシェイクスピアの「ヘンリー6世」や「リチャード3世」を題材に、ある秘密を抱えたリチャード3世を主人公にした、菅野文のダークファンタジー系少女漫画『薔薇王の葬列』がある。
- リチャード3世の死をめぐる謎を元に執筆された小説『時の娘』は、歴史ミステリーの古典として知られる。
- リチャード3世の遺骨発見、名誉回復に努めた主婦、フィリッパ・ラングレーがいる。発見から十年後の2022年、サリー・ホーキンスの主演でロスト・キングという映画になった。