概要
裏サンデー及びマンガワンにて連載中のホラー漫画。著者は田口翔太郎。
個人の事情からどうしても多額のお金が欲しい主人公二人が、様々な裏バイトに挑むオムニバス式の作品。
この作品における「裏バイト」とは闇金融や風俗等ではなく、一歩間違えれば即死亡につながる超常現象と関わる命がけのバイトの事であり、万が一死亡してもその死は世に公表すらされないが、一方で仕事を達成した時に入手できるバイト代は非常に高額となっている。
主人公以外の裏バイターや怪異に巻き込まれる一般人、更には裏バイターや怪異を利用・研究しようとした依頼人すらも容赦なく死亡する場合も多い。中には怪異以上に依頼人のほうが危険人物な場合もある。
バイトの開始前様々な忠告やアドバイス(「必ず⚪︎⚪︎までに⚪︎⚪︎しろ」「⚪︎⚪︎だけはするな」等)がされるが、したら死ぬ、しないと死ぬという禁忌を教えてくれている「善意」のケースと、しててくれないと"殺せない"、されたら"殺せない"という怪異や雇い主の仕掛けた「罠や悪意」のケースがあるため、ここのところの見極めを失敗しても死ぬか、死ぬより酷い目に合う事となる。
題材の都合上後味の悪い話も多いが、ホラー1色というわけではなく、主人公たちのやり取りにはテンポのいいシュールギャグが挟まれたり、超常現象とは無縁の完全ギャグ回もやっていたりと作風は非常に独特だったりする。
「次にくるマンガ大賞2021」では、Web漫画部門で5位にランクインした。
ストーリー
裏バイト。
それは合法違法含むグレーゾーンの高額報酬アルバイト。
その金は、あなたの命の値段。
とある事情で大金を求める黒嶺ユメと白浜和美の2人は、軽い気持ちで裏バイトに手を染めていく――。
登場人物
白浜和美(しらはま なごみ)
主人公コンビの一人。世界旅行を夢見ており、その資金集めのために裏バイトに挑むことになる。
裏表のない大雑把な性格でお金にもがめついが、窮地に陥った人を体を張って助けたりする逞しい善人でもある。ただし、見切りは早いため助けられそうでも見捨てることの方が多い、裏バイトで生き抜くには時には非情な決断も必要である。
特殊な能力は一切持っていないが、いざという時の行動力や判断力は凄まじく、とっさの機転で危機を脱出することも少なくない。何度も窮地を乗り越えていくうちに、裏バイト業界で「不死身の白浜」と呼ばれるほどの有名人になっていく。
過去に父親絡みで何かあったようだが詳細は今のところ不明。
黒嶺ユメ(こくりょう−)
「クサッ。」
主人公コンビの一人。両親が残した多額の借金の返済と、弟妹の学費や生活費を稼ぐために裏バイトに挑むことになる。白浜とは対照的に几帳面で落ち着きがあり、怪異の犠牲者にも悲嘆し、和美とは逆にギリギリまで同僚を助けようとする心優しい性格。
自身に迫る危機を異臭として感知できる強い霊感の持ち主。身に迫る危険が近いほど「クサイ」と感じられるため、裏バイト生還の要になる能力である。断じて本人や相方が臭い訳では無い。
時には怪異の具体的な条件すら把握することもあるが、逆に臭気が強すぎて出所がわからず対応が遅れたこともあり完全に万能とは言えない様子。
初期のころは白浜と違い想定外の事態に弱く、フリーズして動けなくなることも多々あったが、最近は彼女も度胸が据わってきている。ちなみにかなりのナイスバディの持ち主で絵が壊滅的に下手くそ。
篠月橙(しのつき だいだい
画像の右側
『水族館スタッフ』編で初登場した裏バイター。友人の借金の連帯保証人になったがその友人が蒸発してしまい、自分で借金を返済するために裏バイターとなった。
性格は一言で言えば猛烈なアホの子。あまりのアホっぷりに裏バイトも面接で落とされる事もある。ただしこのポジティブさと鈍感さが彼女の武器になったりしている。
なお、橙にとっては恐ろしい怪異より白浜に怒られるほうがよっぽど怖いらしい。
なお、アホ度は人というより怪異側の人間と言っても過言ではないレベル
小松茶々(こまつ ちゃちゃ)
上記画像の左
『キャンプ場バイト』より八木の知り合いとして登場した女性探偵。優秀な探偵であるが理論で説明出来ない怪異などの存在には動揺するほど弱い。ユメに「義両親の捜索」を依頼されたが行方不明になり、見つかった時には廃人同然になっていた。後に時子の手により一部記憶を喪失して元通りになったと思われていたが、『花火大会準備スタッフ』において中身が別のモノに成り代わっているような描写がある。
赤川(あかがわ)
主人公の二人に裏バイトを斡旋する仲介業者。極度の甘党でありコーヒーシュガーを直飲みするが、コーヒーシュガーが取られそうになると(というか勝手に触るだけで取られると誤解して)激怒し殴って来る。八木の姉であるが関係は表では公表されていない。時子とは仲が悪い。
八木琢磨(やぎ たくま)
『探偵助手』編で初登場したうさん臭い男性。自由奔放でコミカルな面が強いが正体は裏専門の探偵であり、表沙汰にできない訳ありな事件を高額の依頼金と引き換えに調査している。長年裏業界と関わっていたためその分析力は折り紙付き。『探偵助手』編以降も二人と遭遇することが増え、以降は狂言回し兼二人のアドバイザー的なポジションとなる。無類の競馬好き、というかもはや中毒、競馬中継を聞いてると女性の嬌声のようないかがわしい声を上げる癖がある
ブラックコーヒーのみならず下戸で酒も飲めない。赤川の弟で茶々とは気心知れた仲であり、茶々が廃人になった際は時子に頭を下げて治療してもらった。
現在、ユメの依頼によりユメの義両親に関する情報を集めている。
並行世界では遊園地での行方不明者の捜索をしている最中Qにより消滅させられた。
藍川時子(あいかわ ときこ)
初登場は『気象観測』で死んだと思われていた藍川気象研究所の所長の娘。ミステリアスな美人で怪異の存在について何か知っているような素振りを見せる。八木の知り合いであり、彼の依頼で廃人になっていた茶々を治した。
その正体はQの幹部であり、裏の人間であるため裏に関わったことで廃人になった茶々を治す術を知っていた。
黒岩(くろいわ)
性別不明の裏バイト仲介業者。白浜が父親の行方を知るために赤川から紹介された業者であり、ちょっと特殊な案件を扱う。虚ろな目、腕には大量のリストカットと不気味な見た目をしている。かつて白浜の父親もよく黒岩の元を訪れていた。
依頼されるバイトは「黒岩案件」と呼ばれ他のバイトより危険度が跳ね上がる。案件を一つこなすごとにスタンプがもらえ、それに見合った情報を提供して貰える。
金、銀(ジン)、(イン)
初登場は『個人向け配送業』から。似たような坊主頭の二人組だが無愛想で片言で喋るのが金、流暢に喋る愛嬌がある方が銀とそれぞれ見分けられる点がある。坊主頭にしているのはいざという時に髪の毛を捕まれないようにするためで、戦闘系なのか気配を消すのも一流でありボディーガードとしても雇われていた。
ユメの危機察知能力に興味を持ち、行方不明になったユメの母親について何故か知っていた。
組織、種族
Q(きゅう)
「裏」の技術化を目的とする組織。使えるものはロクに無いが一つだけ成功例がいるという。異次元に干渉する術を探したり、裏バイトを使い精神に関する実験を行っている。高位存在で歴史や世界そのものを書き換える「デザイナー」の存在を認知しており、デザイナー側にも敵視されている。所属メンバーは判明しているので今のところは時子のみ。
デザイナー
高位存在であり自由に歴史や世界の書き換えを行える。見た目は眼窩に独特の文様がある以外普通の骨格をした人類。「アシスタント」と呼ばれる短い手足にのっぺりとした胴体が特徴の異形が複数おり、デザイナーに付き従っている。アシスタントは既存の歴史を破壊するだけでなく、警告を発する事もできる。
改変前の記憶を保ったまま活動出来るQを危険視しており、彼等に異形人類が渡らないよう都合が悪い歴史を消すべく歴史改変を起こした。
万が一破壊されても歴史をやり直すことで幾らでも自分もやり直せ、作中破壊された際は邪馬台国辺りから歴史をやり直したのか、北海道が日本海側に寄り、(地図的な意味で)上下逆さまになっていた。
裏バイトの一例
1巻
・ホールスタッフ 時給15,000円
「しっかーし! 森は僕達を見捨てなかったのだあっ!!」
自然に囲まれたお洒落なレストランで給仕、接客のバイト。
立地の関係でバイト期間中はレストラン2階の居住スペースに泊まり込みとなる。
落ち着いた雰囲気、絶品料理に加えオーナーの人柄もよく連日満席の大人気店だが、白浜は毎晩異形の女に森の中で追い回される悪夢を見るようになり…
・ビル警備員 時給10,000円
「仮にさ、究極のブラック企業があったら…」
オフィスビルで深夜帯のみの警備員バイト。
このビルでは過去にブラック企業による自殺者が何人も出ているらしく、その後を追うようにバイトの先輩が自殺してしまう。
しかし、雇い主は「よくあることだ」とまったく取り合わず…
・個人向け配送業 成功報酬1,000,000円
「いいか、絶対に中は見るな。」
指定された時間、場所に「ブツ」を届けるいかにもなバイト。
当然ながら渡された鞄の中身は絶対に見てはいけない。
ユメちゃん曰く鞄自体は臭くないらしいが、次々に鞄を付け狙う輩が現れ、そしてその中身を見た者はひとり残らず…
・治験 週給3,000,000円
「あ…あけ…あ…開け…ました…『扉』…」
怪しげな医療機関で、一週間規則正しい生活を送りながら新薬の効能を検証するバイト。
超高額な報酬に反して大した副作用もなく、平穏無事に時間が過ぎていく。
ただ気になるのは、募集要項に書かれた「扉を開けた方には更に300万円を追加でお支払いします。」という謎の一文…
2巻
・人形供養
・助勤巫女
・水族館スタッフ
・探偵助手
・ラジオ局AD
・家政婦
etc...
余談
単行本2巻から、カバー裏のおまけマンガで『人形供養』に失敗し人形となったユメちゃんのショートエピソードが掲載されている。こちらはセルフパロディ中心の更に濃度の高いギャグ作風。