赤と白とロイヤルブルー
あかとしろとろいやるぶるー
2019年5月に米国で発表されると翌月のニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに掲載され話題を呼ぶ。日本語版は2021年2月に二見書房より出版された。
現代のアメリカとイギリスを舞台に、米国初の女性大統領の息子アレックスと英国の第二王子ヘンリーの恋物語を中心に現代のLGBTQ+をめぐる意識や米国大統領選挙をめぐる駆け引きなどが描かれる。
原作出版前から映画化をめぐって複数の映画会社が名乗りを上げていたが、最終的にはアマゾン・スタジオが映画化権を取得。2021年から製作が開始され2022年に撮影完了。2023年8月11日に全世界配信を開始した。
また、2022年にはヘンリー視点の後日談の短編を含むコレクターズ・エディションも発売されている(日本版は2024年に発売)。
アメリカ初の女性大統領の息子アレックスとイギリスのヘンリー王子は、共に端正なルックスとカリスマ性を兼ね備え国際的な人気を集めていたが、互いの事を軽蔑しあっていた。
ある日、ヘンリーの兄フィリップ王子の結婚披露宴で二人は口論の末、ウェディングケーキに倒れこむ醜態をさらしてしまう。この事件は瞬く間にSNSやタブロイド紙で大きく報じられ、米英関係の危機と報じられる中、両国の関係者たちは事件を「友人2人の他愛ない小競り合いから起きた事」とアピールして収束を計る事にし、2人は共同の公務に駆り出されることになる。
当初は反目を続けていた2人だったが、とあるアクシデントから互いの誤解が解け、メールを通じて心の底から打ち解けあい、友情を超えた想いを育んでいく。
だが、2人の関係の進展と共にアレックスの母が再選を目指す米国大統領選挙、ヘンリーの家族、つまり英国王室との関係をめぐる問題などに向き合っていこくとになる....
- アレックス・クレアモント=ディアス
アメリカ合衆国大統領の長男(First Son of the United States)。原作では政治学専攻の大学生。映画では法科大学院生。母が大統領、父は上院議員で、姉が一人いる。
メキシコ系の父親譲りの黒髪黒目の端正なルックスの持ち主で国民的な人気を誇る。
一見今風のチャラい若者だが、労働者階級からのし上がってきた両親を見て育ったので、母の選挙運動にスタッフとして積極的に参加したり、自身も政治家を目指している。
大統領の息子として最初の公務でヘンリーにあった時にかけられた言葉がきっかけで、彼に対しわだかまりを持っていたが、実は12歳の時に姉の持っていた雑誌に掲載されていた、ヘンリーの写真に惹かれていた過去が原作ではある。
わだかまりが解けた後はヘンリーと毎日メール交換をするうちに距離を縮め、カウントダン・パーティでキスされたことで、自身のヘンリーへの気持ちに気づく。
なお、原作では当初自身の性向をストレートだと思っていたのだが、ヘンリーのキスをきっかけにバイセクシャルであることに気づいたが、映画では当初からバイセクシャルであることを認識しており、男性との性経験もある。
なお、原作では身長は178cm(ヒスパニック男性の平均身長)で188㎝のヘンリーより背が低いのだが、映画では演じたテイラー・ザハル・ペレスが185㎝でヘンリー役のニコラス・ガリツィン(183㎝)より長身。
- ヘンリー
英国の王子。英国君主の孫。母親が皇太子(王女)、父は007を演じたこともある映画俳優、兄と姉がいる。また、デヴィッドというビーグル犬を飼っている。
金髪碧眼の端正な容姿と優雅さを兼ね揃えた、理想の王子そのものの佇まいで世界的な人気を誇る。アレックスより2歳上。
実は幼少時から自分がゲイであることを自覚しているが、そのことを隠すように祖母や兄から圧力をかけられている。また、数年前に父が急逝し、母が悲しみから立ち直れず引きこもっていることが心に影を落としている。
アレックスと最初に会った際に、冷たい態度をとったのも心が癒えないまま公務に駆り出されていたことから心身に負担がかかっていたこと、また、対面する前からアレックスに強く惹かれていた為、その気持ちを隠すためでもあった。
正式な名前は原作ではヘンリー・エドワード・ジョージ・ジェームズ・フォックス=マウントクリステン=ウィンザー。映画では一応、実在の英国王室の苗字との類似性(マウントバッテン=ウィンザー)に考慮して苗字が一部変更され、ヘンリー・ジョージ・エドワード・ジェームズ・ハノーヴァー=スチュアート=フォックスとなっている。
- ノーラ・ホラーラン
アメリカ副大統領の孫娘でアレックスの親友。 アレックスと共に公務にでることもある。
統計、洞察力に優れておりヘンリーがゲイであることも密かに気づいていた。
原作ではユダヤ系白人だが、映画ではアフリカ系。
- エレン・クレアモント
アメリカ合衆国初の女性大統領でアレックスの母。白人。
労働者階級出身から27歳で政界に進出、大統領にまで登り詰めた。
突っ走りがちな息子を叱咤しつつ、彼からの選挙戦の提案を受け入れるなど柔軟な思考の持ち主。アレックスのカミングアウト時にも母として極めて実際的なアドバイスをする。
- オスカー・ディアズ
アレックスの父。上院議員。
幼少時にメキシコから移住してきた移民二世でスペイン語も話す。
カトリック信者だが息子の恋愛に理解を示し、アドバイスを与える。
原作では互いの気の強さからエレンとは離婚しているが、映画では穏やかな性格で夫婦仲は良好。
- ザハラ・バンクストン
大統領次席補佐官。大統領以前からエレンの側近でアレックスも幼少時からの付き合い。
2人の仲が進む中で一番の被害を被っているが、王子も黙らせる迫力の持ち主。
- シャーン・スリヴァスタヴァ
ヘンリー付きの侍従。
インド系イギリス人で隙のない身なりのハンサムな男性。
物語が進む中で意外な人物と付き合っている事が判明する。
- エイミー
ホワイトハウス付のシークレットサービス。アレックスの警護につくことが多い。
トランスジェンダーで妻と息子がいる。
- ベアトリス
英国王女。原作ではヘンリーの姉だが、映画では妹。
王室では数少ないヘンリーの理解者。
原作では父の死後、悲しみを紛らわす為に薬物を使用した過去があり、タブロイド紙に「パウダー・プリンセス」(パウダーはコカインを示す隠語)と書き立てられた過去がある。
- フィリップ
英国王子。ヘンリーの兄。
極めて保守的な性格でヘンリーの性的傾向も認めない。
自分の結婚式を弟達にぶち壊されてる当たり、割と同情の余地はあるのだが・・・・・
- パーシー・オコンジョ
ナイジェリア人。イートン校以来のヘンリーの親友で大企業の御曹司だが、現在は人権団体の運営をしている。明るい性格でアレックスとヘンリーの仲も応援している。
- アーサー・フォックス
ヘンリーの父で故人。名のみの登場。
映画、舞台で活躍していた俳優でシェイクスピア劇の舞台に主演した際、キャサリン王女と出会い、結婚。3人の子供に恵まれるが物語開始の数年前にすい臓がんで急逝する。ヘンリーの心に大きな影響を与えた存在。
以下は原作のみの登場の人物
- ジューン・クレアモント=ディアズ
アレックスの姉。弟同様黒い巻き毛に黒目の美人。アレックス、ノーラとともに「ホワイトハウス3人組」として若年層を中心に抜群の人気と知名度を持つ。
大学ではジャーナリズムを専攻し、ファースト・ドーター(First Daughter of the United States)としての公務のかたわらコラムニストとしても活躍している。
生き急ぐようなアレックスの身を案じており、大学卒業後もホワイトハウスに住むのは弟を見張るためでもある。ヘンリーとの仲が弟に良い影響を与えると感じ、応援している。
- ラファエル・ルナ
二大政党に属しない独立系の上院議員。
大統領一家とは旧知の間柄でアレックスは彼の選挙戦にもスタッフとして参加したこともある。
30代半ばのハンサムな外見でカミングアウト済のゲイ。
- レオ
エレンの再婚相手でアレックス達の義父。
穏やかな性格の元実業家で、エレンの大統領就任と共に会社を売却し趣味に生きている。
- キャサリン
ヘンリーの母。
英国王太子。王族としては初めて博士号(科目は英文学)を取得した才女だが、夫の急死後は引きこもるようになる。青い目と上向きの鼻を持ち分厚い眼鏡をかけている。
映画では引きこもるのではなく自然保護団体を設立し、アフリカで動物愛護などに力を注ぐなど原作と真逆の行動に出ているが、皮肉にも公務や家族から逃避している点は一致している。
- メアリー女王
英国君主でヘンリーの祖母。厳格な性格でヘンリーがゲイであることを、隠すよう圧力をかけている。
以下は映画版のみの登場人物
- ミゲル・ラモス
アメリカの政治記者。メキシコ系。アレックスが大統領選の際に酔っ払って性的関係を持った相手(と言ってもジェットバスでいちゃついた程度)。1夜だけの関係だったが、その後もアレックスに執着し機会を設けては口説いている。のちに彼の執着心が思わぬ事態を引き起こすことになる。
- ジェイムズ3世
英国国王。ヘンリーの祖父。原作の女王同様、王族がホモセクシュアルであることを受け入れない。
なお、国王を演じるスティーヴン・フライは実際はゲイであることを公表している。
- 英国首相
名前は不明。
アフリカ系イギリス人の女性で、クレアモント政権と通商条約締結を目指している。ロイヤルウェディングの大惨事に対して苦言を呈していた。
2019年4月、Amazonスタジオが本作の映画化権を獲得したこと、バーランティ・プロダクションの子会社であるバーランティ・スケッチャー・フィルムズによって制作されることが報道される。
2021年10月、ブロードウェイなどで活躍していた舞台演出家のマシュー・ロペスが監督および脚本共同執筆を担当することが決定した。なお、ロペス監督は本作が映画監督デビュー作となった。なお、原作者のケイシー・マクイストンも脚本に参加し、カメオ出演している。
キャスティングではまずヘンリー役のニコラス・ガリツィンが決まり、彼との相性を最優先に考慮した末、アレックス役にテイラー・ザハル・ペレスが選ばれた。
他のキャストにおいても例えばトランスジェンダーのSP、エイミー役に実際のトランスジェンダーの俳優が起用されたり、映画内で流れるニュース番組のキャスターも、実際にレズビアンを公表しているキャスター、レイチェル・マドー本人が出演、さらには先述の通り保守的な国王役に実際はゲイであるスティーブン・フライを起用するなど凝ったキャスティングとなった。
なおロペス監督自身もカミングアウト済のゲイであり、ラブシーンの撮影にあたっても主役の2人に加えてインティマシーコーディネーターを起用、綿密な相談の上進められた。
映画化にあたっては、原作を占める大統領選を巡るエピソードは最小限に抑えられ、二人の関係に焦点が充てられた。
2023年8月11日に全世界配信が開始。配信初週末では、同プラットフォーム上で世界トップの視聴数を記録した。また、アマゾンプライムは本作品がサービス加入者数を増加することに貢献したとコメントしている。
映画公開後の批評としては王室描写がステレオタイプである点、原作よりも単純なラブストーリーとなった点などに苦言を呈する批評家もいたが、これまでのゲイ/LGBTQロマンス映画が悲劇的な結末で終わる作品が多い中、ハッピーエンドを描き切った点は高く評価された。
また、「主役二人が華やかすぎる」というある意味最大の誉め言葉も見受けられた。映画批評サイトRotten Tomatoesでは批評家の75%が肯定的、一般的批評の93%が肯定的と評されている。
なお、日本の旧Twitterで散見された感想では「狭い空間に閉じ込められた2人がいざこざの末和解する」と言ったシチュエーションが平成のpixivのようとポジティブな意味で揶揄されてもいる。
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