野外炊具1号
やがいすいぐいちごう
陸上自衛隊において最前線の自衛官に「温かい食事」を提供するための装備品の一つ。要するに「移動式キッチン」。小型の牽引式車両に灯油バーナーを熱源とする炊飯器やかまどを搭載したものである(このため「炊事車」とか「炊飯トレーラー」とか呼ばれることもある)。
また災害派遣においても被災者に温かい食事を提供する事で最も有難がられる装備である。
なお「食事の質は兵の士気にも関わる」事から、この手の装備は昔から世界中で考えられており、第二次世界大戦時の「ドイツ軍フィールドキッチン(何故か英語)」は田宮模型によりプラモ化もされている。
炊飯器は一度に600人分の米飯を炊き上げることが可能。外部からの電力供給などは不要なので移動しながら(走行中)でも炊飯することも一応できるが、推奨はしないとのこと。
炊飯器の他に同じく灯油バーナーを用いたかまどを装備しており、煮物や汁物、レトルト食品の湯煎に活躍する。灯油バーナーは非常に火力調整が難しく、慣れていないと焦がしやすいそうである。このため、微妙な火加減を要求される炒め物や焼き物には不向きとのこと。
その他には圧縮空気で稼働し大量の野菜の皮むき、裁断ができる野菜カッターも搭載している。このカッターの動力源となる圧縮空気は通常はガソリンエンジンで駆動するコンプレッサーで供給されるが、エンジンが不調となった場合は外部からの圧縮空気供給でも稼働させることが可能となっている。
ちなみに圧縮空気源は自転車用の空気入れでもOKとのこと。
野外炊具1号は点火と火力の調整が完全手動であり、使い方を熟知した隊員でないと火をつけることはおろか、安定した火力を維持することも困難。その上、その日の気温や天気によって炊き具合が変わってきてしまうため、隊員のカンで火力や炊飯時間を細かく調整しなければならないなど、「取り扱いは恐ろしく難しい」ようである。2000年に、自動点火装置と水タンクから直接水を補給可能な蛇口を装備した改良型の野外炊具1号(改)が登場したが、これも素人に取り扱えるような代物ではない。
現在は、コンロの火力制御を自動化し取り扱いを簡単にする改良を施すとともに冷凍冷蔵庫をセットにした「野外炊具1号(22式改)」と、これを小隊向けに小型化した「野外炊具2号(改)」(可搬性を重視しキャスター式であり、車両の形態をとらない)の配備が進んでおり、さらに2号(改)の民間型である炊事ユニットK-1が登場している。
災害発生時などの炊き出しには600人分の米飯を炊ける能力を遺憾なく発揮し、被災者の胃袋に温かい支援を行っている。新潟県中越地震の際には新潟スタジアムの駐車場に100台以上の野外炊具1号が集結し、炊き出しを行った。
Wikipediaの記事は実際にこいつを使った奴が書いたとしか思えない部分がある。かつては詳しい取り扱い方法が書いてあったり、この装備品への不満が書き連ねられていた。その後の編集で大幅に削られてしまったものの、それでも野外炊具1号に対する恨みつらみらしきものが垣間見れる記述が随所にある。今でも編集履歴から、大幅に削られる前の版(2013年12月6日(金)12:09版)を閲覧可能。
芸能事務所である石原プロモーションも、長期ロケに使うためなのか同等品を所有していて、災害時に炊き出しを行うのに活用していた。