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概要編集

古典落語の演目の一つ。兄弟の愛憎を描く人情噺


逸話など編集

  • 土地を失って田舎から出てきた主人公の竹次郎、先んじて田舎を出て大商人となった兄。2人の思いと心の闇を描くドロドロした大根多。
  • 元は上方落語だが、上方ではあまり好まれなかったもの。それを三代目三遊亭圓馬江戸落語に持ち込み、六代目三遊亭圓生が再構成した噺。
  • 江戸落語だが、主なセリフは「田舎弁(田舎訛り風の非実在方言)」で話す竹次郎と兄であるため、ほとんど江戸弁が出てこない珍しい噺になっている。
  • 七代目立川談志の得意噺として知られ、落語立川流の御家芸になっている。
  • 談志が爆笑問題太田光に「俺はもうすぐ死ぬ。お前らに見ておいてほしことがいっぱいある。なんでも良いからやらせろ」と言って「タイタンライブ」に出演した際、太田がリクエストした演目も「鼠穴」だった。
  • 上方では、人情噺の名人として知られる四代目桂福団治が得意としている。福団治は若手の時、上方の師匠ではなく立川談志に稽古をつけてもらって覚えたという。
  • 作中に登場する「文(もん)」はお金の最小単位。江戸時代の「1文」はその時代によって変わってくる。現在でいえば安くて6円、高くて50円、平均で20円くらいの価値。
  • 兄の豹変に人の闇の部分を感じさせられる噺だが、最後まで聞くと、はたしてその闇は…と唸ってしまう筋書きになっている。
  • サゲは「夢は五臓の疲れ」(夢を見るのは内臓や心の疲労が原因)というに引っ掛けた地口オチ。現代ではピンとこない言葉なので、枕や話の途中で説明を挟む事も多い。

あらすじ編集

田舎の百姓だった竹次郎は親が死んだ際、残された田畑を兄と分け合った。しかし竹次郎は「飲む打つ買う」を覚え、程なく素寒貧に。困った竹次郎は田舎を出て、田畑を売った金を元に江戸で商人になった兄を訪ね「俺を兄(あに)さんの店で使ってくれ、奉公させてくれ」と頼み込む。その様子を見た兄は「タケ、ワレは商いをやれ。元(元手)は貸してやる。遣い込むでねぇぞ?」といい、金の入った包みを渡す。竹次郎は兄に頭を何度も下げて、包みを受け取って店を出る。


竹次郎は「金も借りれたし、江戸の酒はどんなものか試してみるのもええべなぁ」と、浮かれながら包みを開けてびっくり。中には、たった“三文”の銭しか入っていなかった。

あの野郎バカにしやがって!なぁにが遣い込むでねぇぞ、だ!これっぱかりの銭で何しろっちゅんだ!」と憤る竹次郎だったが、「地べたを掘ったところで銭が湧き出すでねえし…」と思い直し、いつか兄貴を見返してやろうと、三文で出来る事を考えた。


まず、米屋に行って、米俵の両側の蓋の部分にあたる“さんだらぽっち(桟俵)”を三文で貰い、ほぐして集めた藁を撚って“緡(さし。穴あき銭を通す為の紐)”を作って売る。繰り返して銭が増えたら今度は俵を買い、ほぐして草鞋を編んで売った。そうして元手ができたら朝も昼も晩もなく様々な物を売り歩き、気づけば10年。竹次郎はその間に店を持ち、得意先が間に入って嫁も貰い、一人娘にも恵まれ、深川蛤町に土蔵を三戸前(3棟)構える大店の主にまでなっていた。


そして、強い風が吹いていたある日。竹次郎は番頭に「火事が気になるから、火の用心をするように。火が入っては大変だから、土蔵の鼠穴もきっちり塞いでおくように」と言いつけてから、10年ぶりに兄のところへと向かった。


すっかり立派になった竹次郎を満面の笑みで迎えた兄に、竹次郎は頭を下げて「10年前に借りた元を返しに来た」と三文を返し、「これは気持ちだ」と言って別に包んだ五両を差し出した。兄はそれを受け取ると、包の中が三文だった理由を打ち明ける。兄は竹次郎の腹を見抜き、大金を貸したら商い打つ前に元に手を付けると考え、奮起を促すために端金しか包まなかったのだというのだ。その話に感激した竹次郎も、実は意趣返しのために来たのだと打ち明け、兄に詫びる。


すっかり仲直りした兄弟は酒を酌み交わし、大いに盛り上がった。夜になり、火の元が気になった竹次郎は帰ろうとするが、兄は久しぶりだからもっと話がしたいと引き止め「オラには嫁も跡取りもいねぇ。もし火事で店や蔵が焼けちまったら、オラの身代全部ワレにやる。ワレの店でオラが番頭やってやる」と話し、竹次郎は兄の店に泊まっていくことにした。


その夜、竹次郎は半鐘の音で目を覚ます。外を見ると、深川蛤町で大火事が起こっているではないか。大急ぎで駆けつけ、番頭に「鼠穴は塞いだな?」と確認すると、どうにもはっきりした返事が返ってこない。その時、蔵は鼠穴から吹き込んだ炎でカッと燃え上がり、目の前で3つ全て焼け崩れてしまった。


なんとか店を再建しようとする竹次郎だったが、何もかもが悪い方にしか転がらず、奉公人もみんな去っていき、妻も病で倒れてしまう。困った竹次郎は娘を連れて兄に頭を下げ「店を再建するための元と、妻を救うために高価な高麗人参を買う為、五十両貸してくれ」と頼み込む。しかし兄は「今のお前に貸しても元は取れん」とにべもない。

身代全部くれると言うたじゃないか!約束したじゃないか!」と怒る竹次郎、「酒の上の話が本気のワケねぇべ」と冷たく突き放す兄。竹次郎は「鬼!悪魔!」と兄を散々なじって店を飛び出した。


帰りすがら、幼い娘は「あたしが吉原に身を売る。あたしが新造のうちにととさまがお金を作って、本当の女郎になる前に身請けしてちょうだい」と言い出す。竹次郎は涙を流して娘に詫び、吉原に行って金を作った。しかし悪いことは重なるもの。吉原からの帰り道、作ったばかりの五十両を巾着切りにまるまるスられてしまった。絶望の底に叩き落された竹次郎は帯を木に引っ掛け、首を吊ってしまう。


気がつくと、竹次郎は兄に揺り起こされていた。どうやら、火事が起きてからのことは夢だったようだ。話を聞いた兄は「“火事の夢は燃え盛る”と言うし、ワレの店はこれから繁盛すっぞ」と大笑い。竹次郎は「そうか、オラぁ蔵の鼠穴と火事のことがあんまり心配だったもんだから…」とポツリ。そこで兄がひと言。


おおよ、夢は土蔵の疲れだな


関連項目編集

落語 落語の演目 兄弟

立川談志 夢オチ

宮戸川(鼠穴と同じく「夢は五臓の疲れ」をサゲに使う)

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