爆撃機への対抗策
第二次世界大戦終結後、航空戦力はジェット化することで高速化し、従来の機銃や航空機関砲では太刀打ちできない可能性が出てきた。そこでアメリカはミサイルの開発に着手し、海軍はサイドワインダーことAIM-9を生み出すことになる。では、空軍はというと「海軍と同じものは使いたくない!」ということで独自のミサイルの開発を開始。これがAIM-4『ファルコン』である。
実戦
結論を言うとファルコンの戦績は全くダメだった。ベトナム戦争でファルコンは実戦投入されたがそれは控えめに言っても使い物にならないレベルであり、現場からの評判は散々だった。ファルコンは元々対爆撃機用に設計されていたためシーカーの冷却時間が長く、ロックオンが可能になるまでに6-7秒も要した。このため、発射準備ができるまでに目標とする戦闘機が急旋回や急加速などの機動をとってしまうと大部分はロックオン圏内や射程から外れ、発射できなくなってしまった。また航空機に搭載できる冷却剤の量も限られており、液体窒素を節約するためにあらかじめシーカーを冷やしておくこともできず、いったんシーカーが冷却されてしまってから発射を中止するとたちまち冷却剤が不足し、ミサイルを使えなくなってしまった。
さらにミサイル自体の弾頭が小型である上に近接信管すら装備しておらず、性質からしてそもそもドッグファイト向けではなかった。当時のミサイルは軒並み命中精度が低い代物ばかりではあったが、対戦闘機戦用に作られていないファルコンはそれ以前の問題だったといっていい。全期間を通して撃墜に至ったのは僅か5機であった(参考までに、スパローが戦争期間中に撃墜に至らしめたのは56発)。
結局、空軍が海軍と同じものを使うことをよしとしなかったサイドワインダーを使う羽目になり、ファルコンは前線から早々に引き上げられた。またファルコン搭載を前提にしていたF-4Dにはサイドワインダーが搭載可能なよう改修を施す必要性も生じた。
その一方でファルコンを使うことを前提としていたF-102やF-106を運用していた防空軍団や空軍州兵では使われ続け、F-106が退役する1988年まで使われた。
また、航空自衛隊ではF-4EJ用に導入されたがAIM-7が導入されたため運用期間は短期間だった。
派生型
※()内は空軍の旧命名規則
・AIM-4 (GAR-1)-初期生産型。セミアクティブ・レーダー誘導。
・AIM-4A (GAR-1D)-AIM-4の機動性改善型。
・AIM-4B (GAR-2)-AIM-4の赤外線誘導型。
・AIM-4C (GAR-2A)-AIM-4Bのシーカー感度改善型。
・AIM-4D (GAR-2B)-初期型ファルコンの最終型。AIM-4Gのシーカーを搭載。
・AIM-4E (GAR-3)-スーパー・ファルコンのセミアクティブ・レーダー誘導型。
・AIM-4F (GAR-3A)-AIM-4Eの改良型。
・AIM-4G (GAR-4)-スーパー・ファルコンの赤外線誘導型。
・XAIM-4H-AIM-4Dの改良型。開発中止。
・HM-58-AIM-4Cのスイス輸出型。
・Rb 28-AIM-4Cのスウェーデン輸出型。
AAM-2
技術研究本部と三菱重工によって開発された航空自衛隊の国産ミサイル。ファルコンに影響を受けて作られているが、弾頭とロケットモーターの強化と近接信管が装備され、さらには限定的ながらも全方位交戦能力を有しているなどファルコンの性能をあらゆる面で上回っていた。F-4導入と同時にF-4の装備品として正式化を目指していたがコストが高く採用まではされず、結局ファルコンを導入することで開発中止になった。最も上述した通りファルコンの運用も短期間で終わってしまったわけだが。