概要
アメリカ海軍が1970年代から2000年代初頭まで運用していた長射程空対空ミサイル(現代基準では中射程に該当)。通称「フェニックス」。
遠距離から艦隊を攻めてくる対艦ミサイル装備の爆撃機から艦隊を防護することを主目的としたミサイルで、当時の対空ミサイルとしては破格の100~150kmという長射程を誇っていた。
フェニックスは当時のアメリカ海軍主力だったF-14戦闘機に最大6発を搭載可能で、F-14専用に開発されたレーダー・火器管制装置のAN/AWG-9と合わせることで、6目標に対してフェニックスを同時に発射、別々に命中させる芸当が可能だった。
しかしその高性能さが故に非常に高額であり、実戦使用はほとんどされていない。アメリカ海軍以外では空軍や海兵隊でも運用されず、海外輸出もアメリカ以外で唯一F-14を配備していたイランただ1国のみに留まり、普及もあまりしなかった。
また、ミサイル本体の重量があるため、爆撃機以外の動き回る敵戦闘機のような標的には命中が期待できない(もっとも、改良型のAIM-54Cでは対艦ミサイルや巡航ミサイルにも対処可能だったが)。さらにフェニックスをF-14に最大の6発まで搭載すると着艦重量が超過してしまうことから、最大まで搭載して運用するケースも少なかった。結局、F-14が退役する2年前の2004年までにフェニックスはアメリカ海軍から退役した。
唯一の輸出国だったイランも、革命によりアメリカとの関係を悪化させたことで予備弾や保守部品が手に入らなくなり、1980年代までに運用困難となった。それまでに敵機撃墜の戦果をいくつか挙げてはいるが、この戦果が本当に正しいかは確証がない。
ただ、2000年代にレストアして運用を可能にしたともいわれる。