ピクシブ百科事典は2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

AIM-7

すぱろー

アメリカ合衆国で開発された中距離空対空ミサイル。通称「スパロー」。
目次 [非表示]

「スパロー」とは編集

アメリカ合衆国で開発された中射程の空対空ミサイル。世界初のBVRAAM(視程外射程空対空ミサイル:人間が目視できる限界距離の20nm≒37kmよりも遠くの敵を攻撃するミサイル)である。愛称は「スパロー」。


重量は当初315lb(143kg)が510lb(約230kg)へ、長さ約3.7m、直径約200mm(8インチ)、弾頭重量は当初約20kgだったが、最終的に約40kgまで拡大した。射程もAAM-N-2では10kmだったものが、AIM-7Mで70kmにまでなっている。


沿革編集

構想は第二次世界大戦終結後から始まり、1946年5月にアメリカ海軍が『ホットショット計画』としてスペリー・ジャイロスコープ社に「マッハ1の目標を撃墜できる」兵器の提案要求が出したことが最初となる。


これは当時一般的だったロケット弾HVARの弾体(直径5インチ)を流用するよう求めていたが、これは少々細すぎて開発が困難となり、1947年3月に行われた協議の結果、8インチ径に拡大された。同年5月には正式な開発契約が結ばれる事となり、製造はダグラスが担当した。制式型番は「AAM-N-2」であった。

(その縁か、最初のスパロー運用機はF3Dだった)


誘導方式には

・ビームライディング方式

・アクティブレーダーホーミング方式

・セミアクティブレーダーホーミング方式

の3種類が試行されたが、AIM-7C以降は最も成績の良かったセミアクティブレーダーホーミング方式が標準となった。


しかし、80年代後期からAIM-120「AMRAAM」が実戦化されてくると徐々に活躍の場を狭めはじめた。21世紀となった現在では、発射後にミサイル誘導と回避運動を両立できない事から完全に陳腐化したものと見なされており、活躍の場は今や艦対空ミサイルRIM-7「シー・スパロー」に限定されている。


スパローの歩み編集

AAM-N-2「スパローⅠ」編集

1949年から試験が始まった最初のスパロー。

1954年にはF3D-1M「スカイナイト」が対応するようになり、56年にはF3H-2M「デモン」とF7U-3M「カットラス」も対応するようになった。


誘導方式はビーム・ライディング方式で、戦闘機からの照射される誘導ビームを受信して飛翔する。しかしビーム・ライディング方式には、遠距離になるほど誘導ビームの照射精度が落ち易い(=距離が離れれば離れるほど誘導精度が落ちる)という、長距離誘導する兵器なのに長距離誘導が苦手という欠点があり、また目標が回避すると誘導が追従できなくなった


そんなわけでAAM-N-2は2000発程度が生産・配備されたが、戦力的には全く頼りにされなかった。テストですらロクに命中した事が無かったそうだから当然ではある。1962年に兵器の命名基準が変わると、型番がAIM-7Aへ変更された。


「スパローⅩ」編集

弾頭に核爆弾を搭載した派生型で、弾頭そのものはAIR-2「ジニー」と同様。

完成することなく計画は中止されたが、誘導がビームライディング方式なので敵機を核爆発に巻き込むまではまだいいにしても、熱線や放射線は自分も受ける。射程10kmなので油断してると自分も核爆発に飛びこむという、これはコレで人間として外道の仕様であった。


AAM-N-3「スパローⅡ」編集

1950年に提案されたアクティブ・レーダーホーミング型のスパローで、計画当初の型番はXAAM-N-2a「スパローⅡ」だった。


F5D「スカイランサー」用の主武装として期待が掛けられたが(のちにCF-105用にも)、50年代当時の技術ではスパロー弾体に収まるサイズで、且つ有効なレーダーを収める術は無かった。


かなりのテストが繰り返されたようだが、ダグラスは1956年に開発放棄し、カナディアも1959年のCF-105開発中止とともに放棄した。1962年に型番がAIM-7Bへ変更される。


AAM-N-6「スパローⅢ」(AIM-7C~E-2)編集

スパローの誘導方式には様々な方式が考えられており、他の型と同じく、セミアクティブ・レーダーホーミング型のスパローも作業が同時進行していた。


この方式はまずレーダー照射で敵機を捉え、その反射波をミサイルが探知して自己誘導するというものである。この方法ではミサイル自身に強力なレーダーを備える必要がないので、50年代当時の技術ではまだ実現可能な方法であった。


スパローⅢの開発は1951年、レイセオン社の手により始められており、1958年からは配備も始まった。1962年には型番の命名基準が改正され、AIM-7C「スパロー」となった。

同年にはシーカーを処理速度の速い新型に更新したAAM-N-6a(AIM-7D)が登場し、翌63年には改良型のロケットモーターを搭載して高速化(最大速度マッハ2.5⇒マッハ4)・長射程化(11km⇒30km)を両立したAAM-N-6b(AIM-7E)が登場した。


これらはベトナム戦争で実戦投入されたが、精密機械に高温多湿も相まって調子が悪く、更に整備員はロクな教育を受けていなかったのでミサイルを整備しきれず、おまけに視界外戦闘が禁止されていた事から全く実力を発揮できなかった。


そんな訳で、ベトナム戦争中のAIM-7「スパロー」の戦果としては発射612発中、命中97発(15.8%)、うち撃墜に至ったもの56発(9.2%)というもので、他の兵器も併用した例を加えても戦果は全59機に留まった。


不調の原因は「視界外戦闘を禁じられた事」なのは明らかであり、実際に多くの場合が「最低射程以下で発射を試みた場合」のものである。これでは全く”宝の持ち腐れ”であり、1969年にはより短い射程での運用を視野に入れたAIM-7E-2が登場した。これは「ドッグファイト・スパロー」とも呼ばれ、フィンを切り詰めて信管を変更し、近接戦闘にも対応するようになった。


が、そこまでしても命中率13%、良くなるどころか悪くなるという絶望的な数値であり、実戦では少しでもマシにするため一度に4発全て発射する必要があったり、それ以前に命中する遥か手前で起爆するロケットが着火しないそもそもまっすぐ飛ばないという問題を抱えており、ベトナムでの戦果はまったくダメダメと言われても仕方のないものだった。

(が、AIM-4という更にダメダメなミサイルがあったため、まだマシな方とされた)


AGM-45「シュライク」編集

AIM-7Cのシーカーを交換し、敵レーダー波を逆探知して攻撃する対レーダーミサイルに改造したもの。しかし肝心のシーカー感知範囲が狭く、またSA-2などには太刀打ちできない低速度のため、主にAGM-78を使い切った場合の補助として運用された。

安価だったが、性能もそれなり程度に過ぎなかったため、AGM-88が配備されると姿を消した。


AIM-7E-4「スパロー」編集

F-14専用のAIM-7E。AWG-9に対応するため、中身は専用設計になっている。

イラン・イラク戦争の際、革命でアメリカと断交してしまったイランではこのF-14専用ミサイルの調達には苦労させられていた。


AIM-7F「スパロー」編集

ダメダメの評判を聞きつつ1972年に開発開始。製造は1975年から、配備は1976年から始まった。

ミサイルシーカーの誘導回路をソリッドステート化して小型化に成功し、これで弾頭・ロケットモーターを大型化できるようになった。弾頭重量は30kg(AIM-7E)から39kgへ増加し、また2段式ロケットモーターの採用で射程は70kmへ伸びた。

これだけの改良を受けてもシーカーにはまだ改良の余地があり、英伊ではAIM-7Fを基にシーカー等を独自開発し、BAe「スカイフラッシュ」やアレニア「アスピーデ」として完成させている。


AIM-7M「スパロー」編集

1982年から運用開始。

改良型シーカー・新型近接信管・対ECM性能を備え、重量は230kgに増加した。弾頭重量も40kgと微増している。AIM-7としては最終型であり、湾岸戦争で実戦投入されている。


しかし30年も改良を重ねたにしては、発射44発に対して命中が30発(68.2%)に過ぎず、撃墜に至ったのは26発(59.1%)でしかなかった。後継のAIM-120ボスニア紛争で撃墜率なんと100%という優秀な結果を残したのとは裏腹に、AIM-7は能力の限界を露呈したのであった。


RIM-7「シー・スパロー」編集

1960年代に登場した艦船用の防空ミサイル。

50年代にMIM-46「モーラー」開発に失敗した事から、急遽間に合わせに開発されたのがRIM-7「シー・スパロー」である。


しかし本来は飛行中の戦闘機から発射されるものであるため、地上から発射するには運動エネルギーは不足気味だった。また弾体中央に操縦翼があるため、フィンを畳めなくて余計なスペースを喰うのも問題点だった。


そこで1968年、フィンを折り畳み可能にしたRIM-7Hが登場。

その後AIM-7Fが登場すると、その艦載版のRIM-7Fも登場した。これはRIM-7Mも同様で、最終的にRIM-7Pが登場している。

シー・スパローの発展はその後も続き、艦載防空システムの座はミサイルの設計も一新したRIM-162ESSMへ引き継がれる事になった。


「フランケンSAMシステム」(9K37+RIM-7)編集

2024年現在、ウクライナ侵攻において、一刻も早い防空システムの整備が求められている。今すぐ打てる手段として、ウクライナの所持するロシア製防空システムとアメリカ製防空システムの統合を試みている。


フランケンSAMシステムとは、そのような西側と東側を統合した短距離・中距離・長距離それぞれに向けた5種類の防空システムの総称で、24年5月になって9K37「ブークM1」(NATOコードネーム:SA-11「ガドフライ」)とRIM-7を統合した新型防空システムの存在が明らかにされた。


ここで使われているのは折り畳み式フィンを備え、本体を専用コンテナに収容して常時保護できるRIM-7「シースパロー」で、本来運用される9M38ミサイルより運動性や射程で劣るという。しかし現在9M38の新規入手は困難であり、それに引き換え「スパロー」の供給は期待できるため、今後のウクライナ防空システムで大きな位置を占める可能性がある。


BVRAAMのこれから編集

現在では、発射から命中までをすべてレーダーFCSに頼るものだけではなく、

途中までレーダーFCSの誘導を受けたり、またはミサイル自身のシーカー有効範囲に近づくまで外部からの誘導を必要としないアクティブ・レーダー・ホーミング方式のミサイルが主流となっている。

(無論、できるだけ外部から誘導を受けた方が命中しやすい。また、ミサイル自身のシーカーに頼る方式は敵に悟られにくく、すぐ回避にも移れるので実戦的である)


というのも、セミアクティブ・レーダーホーミング方式では命中まで相手にレーダー照射を続けなければならず、この間は回避行動ができなくなるのである。こうなると撃ちあいでは絶対的に不利であり、これが今では全く一般的ではなくなっている理由なのである。


後継はAIM-120AAM-4等。

AIM-7派生型として艦対空ミサイル型の「RIM-7シースパロー」や、対レーダーミサイル型の「AGM-45シュライク」がある。


関連イラスト編集

F-15Jの代表的な装備雀食


関連タグ編集

空対空ミサイル

RIM-7 シースパロー

AIM-120


参考編集

AIM-7(英語)

AIM-7(日本語)

関連記事

親記事

空対空ミサイル くうたいくうみさいる

兄弟記事

  • AIM-9 さいどわいんだー
  • AIM-54 ふぇにっくす
  • AAM-5 まるよんしきくうたいくうゆうどうだん
  • もっと見る

pixivに投稿されたイラスト pixivでイラストを見る

このタグがついたpixivの作品閲覧データ 総閲覧数: 1396

コメント

問題を報告

0/3000

編集可能な部分に問題がある場合について 記事本文などに問題がある場合、ご自身での調整をお願いいたします。
問題のある行動が繰り返される場合、対象ユーザーのプロフィールページ内の「問題を報告」からご連絡ください。

報告を送信しました

見出し単位で編集できるようになりました