データ
概要
世界最悪のクソゲーとして悪名高い、レースゲームの皮を被った何か……と言うよりも、そもそもこの作品の内容やバランス自体がゲームとして成り立っておらず(後述)、世界中のゲーマーからありとあらゆる酷評を受けまくり続けたクソゲーの中のクソゲー。
あまりにも酷すぎる出来なので、「最早0点を付けるのも嫌」「このゲームで遊ぶよりもゲームの評価内容を読む方が面白い」等と散々な言われよう。
当然海外の大手レビューでは最低スコアを尽く更新し、上記のように採点を放棄したレビューサイトすらあった。
意外な事に、発売元はアクティビジョンとなっている。
開発はStellar Stoneというメーカー。この会社、会社自体はアメリカにあったものの、開発チームはロシアやウクライナに置いてあり、ゲーム開発費用を安くしていた。ゲームエンジンすら自社製ではなく、共同オーナー(とは名ばかりで、実際にはほとんど会社に関わりを持っていなかった。エンジンのライセンス料の代わりに同社の資産の大半を保有していた)のセルゲイ・ティトフが作ったEternityゲームエンジンで全ての作品が作られている。ティトフによれば、本作は初期の試作段階のままリリースされてしまったらしく、さらに同社はゲームを安く作ることにしか関心がなかったそう。…低クオリティなゲームなのも頷ける。
問題点
・パッケージによると、パトカーから逃げ、ライバルカーと競争し、荷物届けると言うゲームの筈だが、肝心の運搬する荷物もパトカーも見当たらず(内部データにさえ無い)、相手トラックは微動だにしない。完全にパッケージ詐欺。
・荷台が空なトラックもある。荷物を運ぶのに……。
・届けるとなっているが周回コースの時点で、届けるも何も無い。
・フリーズが頻繁に発生する。とあるステージを選ぶとクラッシュする(パッチ配布後は改善されている)。
・建物や橋、相手のトラックに当たり判定が無く、すり抜けてしまう。
・コースの端が設定されておらず、まっすぐ走り続けると地面すら無い何もない空間を直進する。
・どれだけスピードがあってもブレーキひとつで一瞬で0km/hになる。また、バックすると無限に加速できる。バック時の理論上の最大速度は10の36乗km/h以上と滅茶苦茶。
・ハイスコアの項目があるが、スコアが記録されない。(パッチ配布後は記録されるようになった)
・BGMやSEがない。(パッチ配布後はエンジン音のみだが追加されている)
・異常にPCのメモリを喰う。
・説明書すらない。
・パッチを出すも微妙なところしか改善されず、パッチでようやく相手トラックが動くようになったが、相手に先着されても勝利扱いになってしまう。
・勝利時のメッセージも初期のバージョンでは「YOU'RE WINNER」であり、文法的に間違っている(本来はYOU'RE THE WINNERが正しい文)。パッチ配布後は「YOU WIN!」に変更された。アメリカでは本作を象徴する文としてネタにされている。
評価点
・グラフィックは辛うじて標準に近いと言えるレベル。クソゲー特有の粗末な絵などはこのゲームには少ない。
・空が綺麗、マップが広い(?)等。
・安い。
AVGNによる評価
本作はAVGNの目にも止まり、紹介されている。基本的にコンシューマのレトロゲームが紹介されることの多いこのシリーズで2003年発売のPCゲームが紹介されるのは稀。相当な数のリクエストが届いていたらしい。
当のAVGNは余りのゲーム内容のひどさに怒るどころか呆れて苦笑いしていた。
終いには内容を余すことなく紹介した自主制作の宣伝CMも作ってしまった。
・・・後に本作を超えるレベルのクソゲーをレビューすることになる。
後年の評価
このゲーム、確かにゲームとしての体を成しておらず、場合によっては深刻なフリーズやクラッシュが発生するなど世界最悪のゲームに相応しい隙の無い仕様を見せている。しかしながら、その全容が解明された今となっては、「そのぶっ飛んだ要素をただ楽しむためのコンテンツ」であるならば、そんなに悪く無いという評価も発生しているのだ。
要するに、「クリアや対戦など本来の目的を達成するためのゲーム」としては紛れもなく史上最悪であるものの、ただストレスを発散するための道具としてならそれなりに楽しめるじゃん、ということである。
障害物を無視する走行、際限ないバック加速などはそういう目的としてはむしろ爽快感さえ覚えると言えよう。
令和時代になってこのゲームをプレイした日本のクソゲーレビュアーYouTuber・からすまAチャンネル氏もその一人であり、それ以前にゲームとしての完成度(これは単にゲームとしてクリア完結できるという最低限の基準に過ぎないが)こそ上ながらも、クリアにおいては想像を絶する苦痛を伴うタイプのクソゲーをプレイしてきた彼にとっては、「プレイヤーに与えられる苦痛はあまりない」からこそ「強敵とは言えない」という評価を下すことになっている。
…皮肉にも、彼はクソゲーの代名詞とも言える同作の初プレイを行ってすぐ、この「プレイヤーに苦痛を与える」という面で飛び抜けたクソゲーに出会ってしまうことになった。それはかつては未来永劫現れないとまで信じられていた、本作を凌ぐ商品失格ゲーである。
ちなみにからすまAチャンネルに本作を貸し出したAnTytle Gaming World氏は、開発元であるStellar Stoneの第1作「Taxi Racer」、第2作「Remington Big Buck Trophy Hunt」のプレイ動画を配信している。やはりいずれも色々と問題ありげなクソゲーだったようだが、ゲーム以前の問題としてWindows10と令和のパソコンではまともに動かない(第1作ではフレームレートに上限の設定がないらしく、挙動が爆速化するものの起動するが、第2作ではエラーで落ちる。Windows98では仮想マシンでも実機でもダメという有様で、WindowsXPの実機を用意してようやくまともに動いた、とのこと)。それに比べればWindows10でも動作する本作は幾分マシ…なのかもしれない。