CV:キース・デイヴィッド
日本語吹き替え版:安崎求
「この世で一番力を持つものは魔法ではない。そう、金!唸るほどの金…」
概要
ディズニー映画「プリンセスと魔法のキス」のヴィランズで、ドクロの描かれたシルクハットとステッキを身に付けた長身痩躯の黒人男性。影は別個の意思を持っており、自由に動き回ることができる。本人曰く、母親は王家の出らしい。
影の男の通称で呼ばれ、ニューオリンズの下町に『DR.FACILIER'S VOODOO EMPORIUM(意訳:Dr.ファシリエのブードゥーの館)』という店を構えている。
ブードゥーの秘術を操り、客の望みを叶えることを商売としているが、奉仕の精神などは一切無く、趣味は客をカモにすること。
また上述の台詞の通り金銭への執着が非常に強く、作中で「豪華な車に乗った金持ちどもは、俺達など気にも止めやしないしな」という台詞を言い放つことから、金持ちに深い恨みがある様子。
大金持ちの娘との結婚を望むナヴィーン王子の心につけ込み、カエルに変えた張本人。
さらにブードゥーの秘術で従者のローレンスをナヴィーンに変身させ、街の名士であるビッグ・ダディことイーライ・ラバフの娘シャーロットに近づかせる。そしてビッグ・ダディを呪い殺してその遺産を奪い取り、街を支配しようと企む。
「別世界の友」「秘密の仲間」と呼んでいる存在からペンダント型のタリスマンを通して力を借りているが、作中の言動を見る限り対価の支払いは滞っている様子。
そのため前述したニューオーリンズを支配する計画には単に莫大な金を得るだけでなく、住民たちの魂を生贄に捧げてそれまで嵩んでいる借りをまとめて返すという側面もある。
呪術を使用する時はドクロの仮面を着用し、ブードゥーの秘術の他にもタロットカードを用いて人間の過去を見る能力も持つ。
弱点としてブードゥーには「自分自身には魔法をかけられない」という制約があり、基本的に他者の望みを叶えるという形でしか術を行使できない。そのためか野心も力も持ちながら街角の占い師として雌伏の日々を過ごしていた。
映画本編とは別時空と思われる番外編『Disney Chills - Fiends on the other side』にも登場しており、主人公ジャマルの悩みやコンプレックスに付け込んで彼が祖母から託されたネックレスを狙う。
作中での活躍
※以下、ネタバレ注意!
物語開始時点ではニューオーリンズの街角で占いをしており、タロットカードを用いて「意中の女性へのプロポーズを成功させたい」という男性客の望みを当て、髪の毛がないことで悩む男性に魔法の粉を吹きかけて髪の毛を生やした。
喜び勇んで告白しに行った男性だったが、プロポーズの途中で髪の毛どころか全身の毛が伸びて毛むくじゃらになってしまいあえなく撃沈。
それを影でせせら笑いながら手に入れた小銭を懐にしまうも通りでは黒人の少年がビッグ・ダディに新聞を売って札束を得ており、それを忌々しそうに見ていた。
その後ナヴィーン王子がニューオーリンズに来たことを知ると彼に接近。
自身の店へ連れ込むとタロットカードでナヴィーン王子と従者のローレンスの願いを言い当て、巧みな話術でナヴィーン王子を信用させつつローレンスのコンプレックスにつけ込んで彼を篭絡。そしてブードゥーの秘術でナヴィーン王子をカエルに変えるとタリスマンを用いてローレンスをナヴィーンに変身させ、彼とシャーロットを結婚させようとする。
しかし、ローレンスがナヴィーン王子を逃がしてしまったことでローレンスの変身を保つことが困難となってしまう(変身を維持するにはタリスマンに”生きている”対象の血液を定期的に補給する必要がある)。業を煮やしたファシリエは「別世界の友」に『計画が成功した暁にはニューオーリンズの住民全ての魂を与える』という取引を持ち掛けて彼らから影の魔物たちを借り受け、ナヴィーン王子を確保した。
結婚式を進め、式の最中にビッグ・ダディを呪術で殺害しようとするが、紆余曲折あってタリスマンをレイに奪われてしまう。
影の魔物たちと共にレイを墓場まで追いかけて彼を踏み潰すが直前にタリスマンはティアナの手に渡り、今度はティアナを追いかけて彼女を追い詰める。
しかし彼女がタリスマンを壊そうとしたの見て慌てて魔法の粉を吹きかけると、幻の中で『タリスマンを渡せば自分の力で夢を叶えてやる』と言葉巧みに取引を持ちかけた。
ティアナも承諾しかけたものの、最終的に取引は失敗。咄嗟に自身の影を使って取り戻すと魔法を解き、ティアナをカエルの姿に戻した上でステッキで押さえつけて彼女を嘲る。
「せっかくの話を断るとは。 残りの人生は、ネバネバした哀れなカエルとして過ごすがいい!」
「あなたに良い事を教えてあげるわ。ただのネバネバじゃないわ、粘液なのよ!」
しかしティアナをカエルに戻したことが仇となり、舌を伸ばしてタリスマンを奪い返されそのまま叩き壊されてしまう。
「よせ!何てことを!"奴ら"に借りを返せない!」
悲鳴を上げながら砕け散ったタリスマンを拾い集めるが時すでに遅く、即「別世界の友」たちが現れ、「彼自身」を対価に徴収しようとする。
「友よ!」
「「「準備ハ?」」」
「まさか、覚悟を決めろってのか?待ってくれ、他にも策を考えてある!!」
「「「出来タカ!」」」
「まだだ!こんな失敗、別に大した問題じゃないさ。すぐに他の手を考えて、計画を進めよう!」
「カエルの王子はしっかり捕まえてあるんだ。あと少しだけ時間をくれ!」
「頼む、やめてくれ!あと少しだけ時間を!」
必死に言い訳を並べて逃れようとするものの、他に支払えるアテなど無いとお見通しな「別世界の友」たちは一切耳を貸さず、自身の影ごと影の魔物に引きずられて、生きたまま冥界に飲み込まれるという自業自得の最期を迎える。
「必ず借りは返す!約束だ、あぁぁ〜っ!」
ファシリエが消えた後には、彼を模した墓石だけが残った。
余談
- 日本語吹き替え版でファシリエを演じた安崎氏は主人公のティアナ役の鈴木ほのか氏の夫である。
- 物語の舞台であるニューオーリンズはアフリカ系アメリカ人が多く移住して独自の文化を形成しており、ブードゥー教の発祥の地ともいわれる。
- 前述の通り「自分の母は王家の出」と嘯いているが、これはブードゥー教において女性の信者は"ブードゥー・クイーン"と呼ばれることにかけた駄洒落であると思われる。ちなみに、男性の場合は”ブードゥー・ドクター”と呼称されている。
- 彼のテーマ曲である『ファシリエのたくらみ』においてナヴィーン王子を占う際、日本語版では「お前の未来には金が見える」と言っているが、英語版では『And when I look into your future, It's the 'Green' that I see!(お前の未来には”グリーン”が見える!)』と言っている。『グリーンの』カエルに変えてしまうことをぼかしてあたかも『グリーンの』ドル札が得られるように誤認させているのだろう。(なお、その際見せたタロットカードにはドル札に囲まれるナヴィーン王子が描かれているのだが、よく見ると描かれた王子は水に浮かぶハスの葉に乗っている。)
- ファシリエが用いるブードゥーの秘術は彼のテーマ曲である『ファシリエのたくらみ』で「別世界の友」たちが「望ミハ叶ウ!」「デモ何カヲ失ウ!」と謳う通り、『願い自体は叶うが、同時に別の何かを失う』という特性があると思われる。
- 事実、秘術によって願いを叶えたものたちは『髪の毛は生えたが意中の相手からこっぴどく降られた相談者』や『王族の身分から解放されたが人間としての肉体を失ったナヴィーン王子』、『憧れの身分に変身できたが化けの皮が剥がれて逮捕されたローレンス』と尽く碌な目に会っておらず、他者の願いを叶えるブードゥーの秘術を私利私欲のために使い、「別世界の友」たちからの負債が嵩んでいたファシリエは文字通りすべてを失う末路となった。
- 最終的に本当に大切な物を思い出した結果、人間の姿を取り戻して夢を叶えることが出来たティアナとはトコトン対照的である。
関連イラスト
関連タグ
アースラ:願いを叶える事を商売とするディズニーヴィラン。
バロン・サムディ:黒い山高帽と燕尾服を纏ったブードゥー教における死神、モチーフの一つとみられる。
Mr.サム:Dr.ファシリエをモチーフとしたキャラ。