概要
「限界を超えろ」をキャッチコピーに2010年に劇場公開されたSFカーレースアニメ作品。
監督を務めたマッドハウス出身のアニメーター小池健を始め、マッドハウスの大御所川尻善昭や奇才アニメーター大平晋也、当時ガイナックスにいた今石洋之、すしお等々そうそうたるメンバーが作画スタッフとして参加しており、非常にパワフル且つエンターティンメント性に満ちた映像が繰り広げられる作品である。
あらすじ
物語の舞台は、地球から2万1千光年離れたM3星雲という星系。
そこでは一時に数多くの知的生命が誕生し、ほぼ惑星一つ単位で文明が生まれた。
が、違う文化を持つ種族の間では摩擦が起き、紛争が起こり、やがて星雲全体を巻き込む宇宙戦争へと発展してしまう。
2度に渡る大戦が終わりひとまず宇宙平和条約が結ばれたものの、経済は泥沼化し、一部の星では軍事目的の技術研究も未だに行なわれており、現代の地球と同じ平穏と緊張と閉塞感が背中合わせにある時代が訪れていた。
そんな中、2度の大戦をまたいで尚絶大な人気を得て興行されている娯楽があった。
宇宙最速を決める5年に一度のカーレースの祭典、"REDLINEグランプリ"である。
電動ゴマと呼ばれる反重力エンジンを積んだエアカーが主流になりつつあるこの時代に、
敢えて旧来の燃料エンジンを積んだ四輪車で走るというマニアックさと、エンジンに関する事以外は禁止事項が無くどれだけ大きかろうが武器を積もうが何でもアリという過激さと能天気さで人気を博しているガチンコバトルレースだ。
そのREDLINEも8回目を数え、犬型獣人族の住むドロシー星にてREDLINE参加権残り一枠を賭けた最終予選レース、YELLOWLINEドロシー星大会が行なわれる。
まるで重戦車か戦闘機、あるいはその両方を足した様な姿の車達が激戦を繰り広げる中、一台だけただの車同然と言えるマシンが走っている。
マシンの名は"トランザム"。
それを駆るレーサーの名は、"スゴク優しい男、JP"。
REDLINEレーサーの中でもただ一人、武器を使わず走りで勝つ事にこだわる愛すべき馬鹿。
だがそのこだわりはダテではなく、トップ争いを繰り広げるライバル達を華麗なハンドリングとニトロ加速で次々追い抜き、片想いの相手である女レーサーソノシーとのデッドヒートの末ゴール目前でついにトップに出る!
誰もがJPの勝ちを確信した……がその時、JPのトランザムは後輪が弾け飛び、寸前の所でクラッシュして負けてしまう……。
実はトランザムには、ある人物の思惑でリモコン爆弾が仕掛けてあったのだ。そしてそれを仕掛けたのも起爆したのも、JPにトランザムを用意したかつての仲間、フリスビー。
JPはフリスビーが身を置くヤクザ「イヌキ組」の仕組んだ八百長に利用されていたのである……。実はJPも薄々分かっていながら、かつての親友を信じてレースに出ていた。が、結果はイヌキ組の予定通り。JPは敗退、ソノシーが優勝しREDLINE参加権を得て終わった。
……かと思いきや、ここで事態は一転する。
毎回視聴者投票で決められているREDLINE決勝レースの今シーズンの開催地に選ばれたのは、何とM3星雲一危険でアンタッチャブルな軍事国家"ロボワールド"。
この決定にロボワールドは断固拒否を表明し、領地内に足を踏み入れたREDLINE関係者は全て侵略者と見なして抹殺する事を宣言。
このまさかの開催地に参加権を得ていたレーサー二人が棄権し、代わりのレーサーを決めるファン投票の結果、JPがその一人に選ばれたのだ。
ひょんな幸運(?)にJPは喜び、ビビリまくるフリスビーの反対を押し切って参加を承諾。
長年の夢……ソノシーへの想い……フリスビーとの仲……
全てにケジメを付ける為JPは再びトランザムを駆り、レース史上最悪の夢舞台に挑む!
REDLINE参加者とマシン
「スゴク優しい男」JP
CV:木村拓哉
本作の主人公。
本名:ジョシュア=パンクヘッド。鬼盛りリーゼントに革ジャンというTHEアメリカンヤンキーと言わんばかりの厳つい格好でキメているが、中身はレースを愛する純朴な青年。少年時代に一目惚れした少女ソノシーを今でも想い続けている、不器用なウルトラ純情野郎。
武装による攻撃妨害が許されるREDLINEグランプリで、敢えて武器を使わず走りだけで勝つというポリシーを持つ。そのこだわりから「スゴク優しい男」「武器無し王子」等とあだ名され多くのレースファンやレーサーから小馬鹿にされ、REDLINE公式ギャンブルでの賭け倍率は何と25000倍!しかし、レーサーとしてのポテンシャルは超一流でローカルレースでは負け知らずの実力を持っている為玄人受けが良く、意外にファンも多い。
が、実は数年前レースで八百長をした疑いで逮捕された経歴がある。本来ならば今も服役中だったが、かつての親友フリスビーが保釈金を用意するという約束で仮釈放され、今回のグランプリに参戦した。
トランザム20000
JPの駆る、既成の自動車を改造したレースマシン。前述の通り武器は一切積んでおらず、ゴールドニトロストーブの爆発的な加速力だけが唯一にして最大の武器。
悪路に弱く攻撃に対する防御力も皆無であるが、小さいが故小回りが利くのに加えニトロ加速使用時のスピードの伸びはREDLINE参戦マシンの中でも抜きん出て優れている。
「チェリーボーイハンター」ソノシー=マクラーレン
CV:蒼井優
本作のヒロイン。JPの少年時代からの片想いの相手であり、同時にREDLINE優勝を目指してしのぎを削るライバルでもある。
人生の全てをレースに捧げている一本気でクールな女性であり、大のエンジンオタク。恋愛関係にはさっぱり興味が無く、告って来た相手を片っ端からフる様から「チェリーボーイハンター」と勝手にあだ名が付けられてしまった。
ジャンク屋とレーサーを兼業していた父に育てられ、やがてREDLINEに出る為に家を出て行ってしまった父を追ってレーサーになったという過去がある。
その為レースに対する情熱は小さい頃から人一倍強く、少年時代に一度だけ彼女と出会ったJPは惚れると同時に「かっこ悪くても本気で走るカッコ良さ」を彼女から学んだ。
今大会への参戦も、父との再会と、その父に一人のレーサーとして勝負を挑む事を目的にしている。
クラブソノシー
ソノシーがREDLINE参戦用に開発した紅いマシン。REDLINE参戦マシンの中でも珍しいホバージェット型のマシンで、水上でも走れるなど走破力と安定性に優れる。
が、ホバー故にラムアタックや爆発などの衝撃に対しては踏ん張りが利かない所があり、体勢を崩す場面も。
フリスビー
CV:浅野忠信
JPの幼馴染であり親友のメカニック。JPのこだわりを理解し、クラシックカーを外観そのままにトランザムというREDLINEマシンに仕立て上げた天才カーキチ野郎。
今は「イヌキ組」というヤクザに身を置き、REDLINEの公式ギャンブルとJPのオッズの高さを利用した八百長に手を染めている。その関係ゆえJPに対しても冷たくつっけんどんな態度を取るが、本当は情に熱く曲がった事が大嫌い。
そもそもヤクザになったのも理由がある。8年前、より高スペックなシャーシを調達する為にフリスビーはJPに黙って優勝賞金を担保にイヌキ組から金を借りた。が、そのレースでJPが負けてしまい、首が回らなくなってしまったフリスビーは残った多額の借金を返す為にイヌキ組に加わり、八百長に手を染めるハメになったのだ。
JPが逮捕されたのも、警察のおとり捜査でフリスビーが捕まりそうになった所を身代わりになった為。
自分を勝たせたいが為に命を懸けた……そんなフリスビーをJPは今なお信じており、八百長に利用されていると分かっていながら8年前の負けでできた借りを返さんとして、フリスビーのトランザムに乗り込む。
一方フリスビーも腹の内ではJPの優勝を誰よりも願い、親友を裏切らざるを得ない現状に一人葛藤し続けている。
もぐらオヤジ
CV:青野武
孤児院育ちのJPとフリスビーをレーサー、メカニックとして育て上げた頑鉄オヤジ。
REDLINEの開催地等を転々としながらジャンク屋を営み、30年以上の経歴を持つ大ベテラン。
JP達とは気心の知れた実の親子の様な仲だが、フリスビーがイヌキ組に入ってからはかなり毛嫌いしており人でなし呼ばわりしている。……が、何だかんだ面倒見は良く二人のムチャなマシンカスタムの注文にも結局応じてくれるお節介な好々爺。
「絶対王者」マシンヘッド鉄仁
CV:石井康嗣
現REDLINEグランプリのチャンピオン。速さを追い求めて体をサイボーグ化し、自身をマシンの一部へと改造してしまったマシン一体型レーサー。REDLINEの歴史上ただ一人4大会連続優勝という偉業を成し遂げ"Mr.REDLINE"と讃えられる宇宙最速の男。
ゴッドウィング
マシンヘッドが自身と共に改造を繰り返し進化してきた巨大マシン。マシンヘッドはパイロット兼ニトロストーブとして合体し、ニトロカプセルを食べる事で加速が発動する。
「スーパーボインズ」 ボイボイ&ボスボス
女性しか存在せず法力を操るスーパーグラス星出身の「歌って走れるセクシーアイドル」。
おとぼけに振舞っているが、実はスーパーグラス星のお姫様の教育係を務める重鎮でもある。
ボインカー
ピンク色の車体が目を引くスーパーボインズのマシン。どことなく仰向けに寝そべってM字開脚している女型ロボットに見える……というか実際ロボットであり、ボインズ二人が法力を開放すると立ち上がって戦うことができる。
「マッドブラザーズ」 リンチマン&ジョニーボーヤ
賞金首とのリアルファイトビジネスと、その様を撮影した動画で稼ぐ二人組の賞金稼ぎ。
悪人相手のあくどい戦いっぷりが逆に子供達に大人気で、「無法地帯のヒールヒーロー」の異名を持つ。いっそ清々しいほどのダーティーヒーローだが、戦士としての腕前とレーサーとしてのテクニックも超一流。その腕前を見込まれてREDLINEの主催者側から色々口には出せない仕事を請け負っている。
余談だがこの二人、実はホモカップルだとか……。
リンチカー
クワガタ虫の様な刺々しいデザインのマシン。REDLINE参戦マシンの中でも特に武装やギミックが豊富で、ミサイルやアンカー等を使って本業さながらのあくどい走りを見せる。
「マッハボーイズ」トラヴァ&シンカイ
若干18歳レーサー歴たった一年でREDLINE出場を果たした驚異の天才ルーキー。
旧来の石井&小池ファンならお馴染み、「TRAVA FIST PLANET」という短編アニメで主役を務めた二人組である。
スピードマスター
シンカイが開発したマシン。ニトロ加速未使用時の最高速度は全参戦マシンの中でダントツ。
「TRAVA FIST PLANET」でも同じ名前のメカをトラヴァが使っているが、関連性は不明。
「ダーティポリスマン」ゴリライダー
CV:郷里大輔
本名ハメッシュ=フリーニ。悪人や暴走族相手なら自分が法を破ってでも逮捕すると公言し、最近では不倫疑惑がかけられたりと黒い話題には事欠かないダーティーポリスマン。
ゴリラタンク
ゴッドウィングに次ぐ巨体を持つ青い重装甲マシン。重いがとにかく堅くミサイルの一発や二発ではビクともしない。
「31歳の暴走童貞コンビ」三木&轟木
M3星雲にある地球そっくりの人工惑星、地球船日本エリア出身のメカオタク。
シーズン中にゴリライダーに捕まって免停を食らうも、JPと共にファン投票でREDLINE参加権を得て返り咲いた。
セミマル
蝉の幼虫の様なデザインのマシン。ガッソンと呼ばれる半有機ロボットをベースにしており、アンテナや足など車体の一部を変形させる事で高い汎用性を持つ。
「ロボワールド」関係者
ロボワールド大統領
CV:廣田行生
「極秘とされる兵器の聖地でレースの開催なんて許可できるワケないだろ!」
REDLINE開催地に選ばれた「ロボワールド」を支配する非情な独裁者。軍事大国であるロボワールドは宇宙法に抵触するレベルの秘密兵器をごまんと開発していることもあり、全星系に生中継されるREDLINEレースなど許可出来るわけも無く断固阻止することを決定した。まぁ開催地の許可を得ること無く勝手にレースを始めたREDLINE側にも問題アリアリなのだが、隠れて違法兵器を開発しているロボワールドも悪いのでお互い様である。苛烈な性格をしているが、部下からは絶大な支持を得ている強者。
ボルトン大佐
CV:石塚運昇
ロボワールドの軍隊を指揮する防衛大臣。銀河に名を轟かせる地獄のボルトン部隊の指揮官であり、REDLINEを阻止するべく迎撃の指揮を執ることになった。軍人らしい質実剛健な男であり、大統領に対しても真っ正面から意見を言う剛の者。
冷酷非情だが、しばしば暴走するレイズナ弟を連れ戻したり諫めたりと、面倒見が良い。
ロボワールドの切り札である融合型巨大生物兵器の開発責任者。
タイタン国務長官
CV:堀内賢雄
大統領の右腕を務める参謀。サイボーグネコを常に抱いているナヨッとした口調の優男だが、沈着冷静で有能な男。何が起こっても動じない図太い神経の持ち主。
ロボワールドの切り札である巨大衛星砲「三点分解砲」の砲手。
レイズナ弟
ボルトン大佐の部下。
顔の皮膚を剥がして金属の外骨格を取り付けたようなグロテスクな見た目のサイボーグ。
見た目に反して人間臭く、同僚だったトラヴァとシンカイが軍を裏切って除隊した事をひたすら逆恨みしている。
れっきとした軍幹部だが、トラヴァとシンカイに関わると命令違反や処刑前提の軍法会議も辞さないほど打ち負かすことに躍起になってしまう。
生体に直結し制御する兵器「サンドバイカー」を駆り、二人を追って途中レースに乱入する。(そしてレース用機体ではないにもかかわらず善戦する)