概要
オブジェクトクラスはSafe(安全または収容が容易)。一度Keter(危険または収容不能)になっているが、再びSafeに戻されている。
熊本県のどこかにあるビルのエレベーターである。
見た目は普通のエレベーターだが、階層の表示がビルの高さを越えて高くなったり低くなったりする(×10の何乗で表されるのは序の口、数学上の概念として存在する最大・最低の数になることすらある)、乗った人間が消失する等といった異常性質がある。
このオブジェクトの最大の特徴は、内部になにかモノを入れると勝手にドアが閉まり、ある階まで移動したあと戻ってきて、入れたモノとは違うなにかを排出するということ。
乗客が消えていたのはこれが原因だった。
実験
実験結果から抜粋すると、
- 財団がエレベーターに『ライター(らいたあ)』を入れる。
- エレベーターから『足(消えた乗客のものらしい)』が出て来た。……足だけがエレベーターの内部にぽつんと置かれているのはホラーでしかない。
- 財団が足を取り出して、今度は『新聞紙』を入れた。
- エレベーターから『シカ(の死体)』が出て来た。
- 財団は次にこのエレベーターの「解説書」を入れてみた。
- どうやらこれは『紙』という扱いになったようで、エレベーターからは『みかん』が。
要するに、入れたものと出て来るものの名前がしりとりになっているのだ。財団とエレベーターでしりとりをしている形になる。立派な実験ですが何か?
ちなみに財団が『墨』をエレベーターに入れた時も先程と同じように『みかん』が出て来たことから、「み」で終わる単語で回答されると必ず「みかん」で返してしまうと考えられる。
物体が出てくるまでの時間が他と比べると短い(1〜3秒)ので、どうしても「みかん」と答えてしまうのかもしれない。
またある実験の時、今度はあえて「ん」で終わる『ラーメン』を入れてみると、エレベーターの中からはトレイに「わざと負けちゃだめだよ」と書かれた『蕎麦』が。
そう、このエレベーター、なんと知性があったのである。
このことに気付いた財団は、入れるものに文字を書くことによってエレベーターと会話を試みる。
財団(バスケットボール):すまない。君のことをもっとよく知りたくてね。
エレベーター(ルビー):ぼくに聞いてくれればいいのに。
この際、ルビーにどうやって文字を書いたかというと、なんと個室一杯にルビーを詰め込んで、その中に混じった別の宝石で文字を書くと言う物。ちなみにこのルビーは年間採掘量をはるかに上回っており、これを盗ろうとしたDクラスが解雇された。
どうやら出て来るものに制限がないらしいことを悟った財団は、『石』を加工し、色々用意するのもお互い大変だろうからということで、ここから先はお互い『色紙(しきし)』に字を書いて話す提案をすると、エレベーターは「頭いいなあ!」と快諾。本来しりとりでは同じ言葉を繰り返すと負けだが、そのくらいの融通はきくらしい。
ここから本格的なインタビューが始まった。
Q.君の名前は?
A.エレベーターに名前なんてあるの?すきによんでよ。
Q.分かった。SCP-1248-JPと呼ばせてもらおう。SCP-1248-JPはなぜしりとりをするんだ?
A.あはは、やっぱり頭よくないなあ。エレベーターだからに決まってるじゃん。
Q.我々の知っているエレベーターはしりとりをしないのだが。
A.しりとりしないエレベーターもいるんだね。何のために生きてるのかな。
Q.我々の知る限り、全てのエレベーターはしりとりしない。それに生きてもいない。
A.じゃあ世界でエレベーターは二つしかないんだね。
Q.SCP-1248-JPと、あと一つは?
A.君。
Q.我々は人間だ。
Q. しりとりをするのに人間なの?
A.むしろ我々の知る限りでは、人間以外はしりとりしない。
Q.しりとりをするのに人間なの?
.大丈夫か?
. しりとりされる側に戻ってね。
事案
どうやらSCP-1248-JPは、「エレベーターはしりとりをする生き物」という認識を持っていて、人間はあくまでも「しりとりをされる側」だと思っていたようだ。
上記の会話が書かれた色紙を排出した後、エレベーターは何かを入れる前に勝手に閉じた。
この直後、エレベーターの周囲から色が消えるという事態が発生。考えられないことだが、どうやらエレベーターが『色素』を持って行ったようだ。
あきらかな敵意が見られるということで機動隊が呼ばれたが、十分な対策が立てられる前に今度はエレベーターの中から『ソニックブーム』が発生。エレベーター周囲のサイトの一部が損壊した。
急に知能が上がってないか……?「み」って返したら「みかん」しかくれないクセに……。
間髪入れず扉が閉まるが、今度は何かが消えた様子はなし。
おそらくは『無』を持って行った(と、言う事にしておいて何も取らずに一旦引っ込んだ)と思われる。
エレベーターがひとりしりとりを始めた!
この緊急事態に財団はエレベーターの周囲を真空状態にし、選べるものをなるべく減らすことで対策する。が、暫く間をおいて再び扉が開くが、この際監視カメラでエレベーターを見ていた職員の知能が低下。イヤァァァ‼ 認識災害だァァァ‼
財団はこれをエレベーターの内部から『無知蒙昧』が排出されたものと推測する。概念まで扱えるとか、もう打つ手がないのでは……
財団がまごまごしている間にエレベーターは今度は『家』を奪う。エレベーターの周囲の建物が一斉に消えた。どういう図か想像できないがビル自体も消えてエレベーターだけが残っている。すごくシュールな絵面である。
が、この際財団は無力化プロトコル「み攻め」を用意しており、『みかん』という回答を誘発させるため、五十音すべてで始まって「み」で終わる五十通りの物体がエレベーターの周りに用意された。……大真面目な戦いなのにいちいちシュールなのは気のせいだろうか。
次にエレベーターが繰り出してきたのは『SCP-■■6(三桁で末尾が6で終わる何らかのSCPオブジェクト)』。
ついに仲間を呼びやがった。お前はどこぞの道路標識か?
が、エレベーターが「え」で始まるSCiPを出してくることはあらかじめ予想はされていたようで、被害は最小限に抑えられたとのこと。最小限……?
即座に『くるみ』がエレベーター内部に直撃‼
……エレベーターの中からは、やはり『みかん』が出て来た。
これにて「しりとり」は終了、SCP-1248-JPは鎮圧され、現在は防護壁で囲まれて人が近づけないようにしてある。人騒がせなエレベーターだったなもう……
余談
- このエレベーターは知性は持っているものの、『新聞紙』を入れた際、「 つまんなかった。テレビらんがいいな。 」という感想を述べたり、『解説書』を『紙』だと判断する辺り、知性は子供並のようだ。
『無知蒙昧』という難解な単語を理解したり、SCPを召喚する危険性を持っていたりするにもかかわらず、「み」で返されると「みかん」と答えてしまうというお茶目なギャップに惹かれたファンもいるだろう。
- 「無機物」「人格を有していて、子供っぽい」「外部からの機能停止が不可能」「他のSCPを呼ぶことができる」等、SCP-910-JPとの共通点が多い。片方の話が好きなファンは、もう片方の話も好きになることが多いようだ。しかし、非活性化できる分SCP-1248-JPの方が安全性は高い。
何故みかんだったのか
「み」で終わる単語で回答されると必ず「みかん」で返してしまうSCP-1248-JPであるが、これに関しては、出没した熊本県がみかんの主要産地にして、最初にみかんが日本に入ってきた土地だったことが関係している可能性がある。
この場合、熊本県はトマト、スイカの産出額が日本1位なので、魚雷先生みたいなトマトも出せた可能性もある。……交渉道具としても兵器としても微妙なので、実験や事案の際には投入しなかっただけかも知れないが。
なお、熊本県ではニホンカモシカの生息が確認されている。