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X-29

えっくすにじゅうく

グラマンにより製作された前進翼の実験機。前進翼という未知の技術を研究するためだけでなく、さまざまな先進技術研究に使われ、実験機界のスターともいうべき実績を残した。非常に未来的な外観であるが、実はノースロップF-5Aを基にさまざまな機の部品からつぎはぎして製作された、まさにキメラともいうべき航空機である。
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前進翼とは

後退翼と同じく、超音速での空力を大幅に改善できる翼形である。
前進翼では後退翼の欠点である、
・重量バランスが後ろに傾きやすい
・翼端失速を起こしやすい(=失速したときに機首が上を向く)
という部分を改善することができる。

また、前進翼は機の安定性が悪くなる特性もあるが、これは運動性が高くなるという事でもあり、戦闘機のような目的ではまさに願ったり叶ったりの効果を得られるだろう。研究は1930年代に始まっており、ナチスドイツではJu287という実験機を製作した。

が、当時の技術は実用的な性能を得るには足らず、前進翼は棚上げにされるに任されることになった。単純に飛ばす以上のことはまだムリだったのでる。

コードネーム:グラマン712

1977年、アメリカ国防総省国防高等研究計画局(DARPA)は、次世代戦闘機のあらたな可能性として前進翼に着目し、空軍飛行力学研究所とともにこれを研究する実証機を提案する。

1981年、グラマンが主契約者に選定され、社内設計図番号「グラマン712型」、もしくは「G-712」として開発が始まった。前進翼以外にも研究中だった概念も実証すべく、主翼にはスーパークリティカル翼形や空力弾性テーラリングを取り入れ、また低速でも操縦性を確保するためにカナードを配置したクロースカップルドカナードとなった。

また、前進翼はただでさえ不安定な飛行特性となるのだが、極めつけに過流制御器も装備し、高迎え角飛行の操縦性の限界にも挑むことになった。もちろん、このように不安定な機なのでコンピュータの補助なくしては操縦さえ不可能である。X-29では独立した3つの飛行制御コンピュータをもち、さらにアナログ式コンピュータによる予備系統も3つ備えていた。
(80年代はフライバイワイアも研究途上だったので、これでもかという位に予備を備えている)

スーパークリティカル翼型

遷音速において主翼面で衝撃波が発生する速度を上げ、また発生しても主翼後縁でなだらかに起こるようにできる。また、この構造を取り入れると同じ速度で主翼を厚く(=頑丈&軽量)にできるか、もしくは同じ主翼厚でより速いスピードで巡航できるため、現在では軍用機のみならず、多くの旅客機にも取り入れられている。

ふつう、主翼翼面で発生する衝撃波は空気抵抗を急上昇させ、また衝撃波から後ろは空気がほとんど無い状態となり、主翼の効率は落ちることになるので、スーパークリティカル翼形とは高速で飛行しても効率を良くすることの出来る翼形ということになる。また抗力も小さくなるため、燃費改善にも効果的。

主翼表面での気流の速度

主翼は上下の気流の速度差から生まれる気圧差を揚力として取り出しているため、航空機そのものは音速を超えていなくても、主翼上面を流れる気流だけは音速を超えている状態も有りうる。

空力弾性テーラリング

主翼を複合材料で製作したからこその研究。主翼表面はグラファイト・エポキシ複合材で張られているが、こうした材料は金属と違い、「目」の方向によって強い・弱いが分かれている。

空力弾性テーラリングとは、この性質を生かして(任意の操縦により)主翼が反ったりよじれて飛行特性を変化させるよう、設計・工作する研究のこと。ちなみにテーラーとは「仕立てる」の意で、転じて「あつらえる」ということである。

「目」

繊維同士のつながりにより生まれるもので、もちろんこの目に沿った方向が曲がりにくく、伸びにくい。身近なものでは新聞紙を裂いてみるとよい。まっすぐ裂けやすい方向と裂けにくい方向でそれと分かることだろう。

クロースカップルドカナード

主翼の前方に先尾翼を配置し、これが発生させる渦流を主翼に当てて、低速でも操縦性を保つ仕組み。このあたりはデルタ翼の場合でも同様だが、X-29では低速の限界での操縦性を研究するため、過流制御器ともども導入された。

X-29では25回の試験中、瞬間的に最大67度の迎え角をとった状態での飛行にも成功している。
そこまで迎え角をつけなくとも、45度位までは従来を凌ぐ操縦性を実現した。

過流制御器(VFC)

機首に空気の噴出孔を設けており、これにより機体表面の気流に機首上方向へ働く負圧(=持ち上げる力)を生じさせる。これにより水平尾翼が不要となり、さらに大迎え角時の操縦性も確保した。

フライバイワイア

従来、操縦桿にかけられた力はワイヤーで直に動翼に伝えられるか、油圧装置で増幅して動翼に伝達されていた。もちろん、この伝達ワイヤーや油圧装置が戦闘で破壊されると操縦不能となり、墜落する。

フライバイワイアではパイロットの操作は電気信号に変換され、その信号が動翼の作動モーターを操作するようになった。これで伝達ワイヤーや油圧装置の破壊による墜落はなくなることになり、さらにワイヤーや油圧装置そのものの重量も削減できることとなる。

サイドスティック

これで操縦桿をコクピット正面に設ける必要がなくなり、F-16では初めてパイロットの右手側に圧力感応式の操縦桿を採用した。なお、イスラエルでは戦闘で負傷した際、左手で操縦することも有りうるとして、従来のような(左手でも操作できる)センタースティック式に改造しているのだとか。

X-29の中身

そういう訳で、当時研究中だった技術を実証してみせるため、これまでにない設計をとことんまで詰め込んだX-29だったが、その中身は当時すでに実用化された機から流用された部品だらけだった。

よく言われるところによれば、
・胴体(前半分):F-5
・油圧装置関連:A-6
・車輪:F-16
・エンジン:F/A-18(F404は割安なエンジンだったこともある)
といった具合である。その他にも細々した部分は可能な限り現有機(=の在庫部品)から流用され、こうしてX-29は完成したのであった。

得られた成果

Xシリーズとしては異例なほど長い期間運用され、1992年までテスト飛行を続けている。
設計で盛り込まれた課題はほとんど成功裏ともいえる実績を残したが、「前進翼」だけは思ったような成果を残せなかったようである。

設計や実用面の課題もさることながら、前進翼は前方から来たレーダー波を胴体に反射し、さらに前方に返すというステルス性の問題が大きかった。結局のところ、現在のようにステルス性が重視される中にあって前進翼はその価値を証明できず、実用化はますます遠のいてしまった。

ただし、その他の成果、つまりスーパークリティカル翼形や空力弾性テーラリングなどでは参考になるデータを大いに得られたようで、現在ではさらに研究は進み、グラファイト・エポキシ複合材はもちろん、X-29ではチタン・アルミニウムだった主翼構造材を炭素繊維(カーボン)複合材で置き換えた例もある。そのほか軽量に仕上がる利点をかわれ、旅客機にも多く使われるようになっている。

また、フライバイワイアも現在あたりまえの様に用いられるようになった。
これは空力性能の物理的限界に挑む戦闘機だけでなく、技術が進んで安全性が高まったことから旅客機にも採用されており、経済性を重要視するこの業界でも当然のことになっている。

旅客機と安全性とフライバイワイア

元来、この業界においては安全性が最優先されており、また扱い慣れていた事もあってボーイング707の頃まで旅客機での操舵は人力(をワイアーで動翼に伝達する)方式が中心だった。

その後(というかボーイング707を運用する過程で)、高速化するとともに人力では操舵しきれない場合に対応し、ようやく油圧補助操舵が一般化するようになった。ちなみに、軍用機では1950年代初期に登場したB-47がすでに油圧補助操舵を採用している。

旅客機では(購入する企業にとって)安全性が最大の魅力になるため、必ずしも最新の技術を採用するわけではないのだ。

『実戦の』X-29

X-29は純然たる実験機であり、ましてや戦闘に用いるなど想定してはいないのだが、未来的な外観により各種ゲーム・漫画で『戦闘機として』実戦に参加している。

おそらく最も有名にして先駆者なのがコレ。
「実験機を実戦仕様に改造するなんてあり得ない!」とか野暮を言ってはいけないが、作中ではシンの愛機として活躍していた。元が性能実証用の実験機であり航続距離等を考慮されていない設計なためか、戦闘中に燃料切れを起こしアスラン王宮上空にて放棄された。
劇中での描写や発言を考慮すると真はF-5(フリーダムファイター・フリーダー)・F-5E(タイガーⅡ)・F-5GorF-20(タイガーシャーク)を乗り継いでおり、F-5シリーズの最終系として見ればある意味順当な機体と言えなくもない(元々作者である新谷かおる自身がF-5系列が好きだったという)。

2やZERO、インフィニティで登場。
どの作品でも安定性が低く、扱いにくい傾向にある。
ちなみにインフィニティでは流用部品多数の逸話から「キメラ・マシン」の通り名が獲得できる。
コラボによりエリア88仕様も登場している。

X-29を基にした「X-29Z」が登場する。見た目は変わっていない。
本作の敵エースの搭乗機として、ラスボスとして立ちはだかる。
他の機体を凌駕する圧倒的な旋回性能を持ち、一対一のドッグファイト、対戦では恐らく最強の機体である。

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