Як-9。ヤコブレフ設計局が開発した労農赤軍(ソ連軍)の戦闘機。独ソ戦後半の主力戦闘機で、戦後もしばらく運用された。
概要
1942年8月、長距離用試作機Yak-7DIが「Yak-9」としてナンバリングされ、10月から配備されスターリングラード攻防戦に投入された。Yak-7より中・高高度での性能向上が図られているが、主要な任務は地上攻撃機の援護であった。
当初は木製の部分が多くサイズの割りに機体が重かったが、次第に改装され、最終的には全金属製となった。
零式艦上戦闘機よりも小さな機体に強力なエンジンと武装を積んだ本機は、前述のように木製による重量増加で速度はエンジン出力の割には遅く、操縦にも難のある機体であったが、当時のソ連軍戦闘機ではトップレベルの性能を誇り、自由フランス軍ノルマンディー・ニーメン飛行隊の隊員からは「世界最高の戦闘機」とも称された。
戦後も共産圏に大量に配備され、総生産機数16,769機。一部は1960年代まで現役で、NATOコードネーム「フランク」が与えられた。
1996年からYak-9Pの復元機Yak-9UMが少数生産され、販売された。
主なモデル
●Yak-9
1942年に初飛行。
液冷エンジン単発単座、低翼単葉で、アルミニウム節約のため機首外板のみジュラルミンで、胴体後部と尾翼は鋼管フレームに羽布張り。主翼は金属製の桁に樹脂浸潤合板の外板で、翼内に燃料タンクがある。
武装は機首上面にUB 12.7mm機銃、プロペラ軸内にShVAK 20mm機関砲を搭載。
●Yak-9T
1943年に初飛行。本格的に量産された最初のモデル。
NS-37 37mm×198機関砲をモーターカノンとして搭載した地上攻撃機型。重心の調整のため、操縦席の位置は通常より40cm後方に下げられた。
●Yak-9D
1943年に初飛行。
翼内タンクを増設して4つとし、航続距離を1,360kmに伸ばした長距離型。
●Yak-9R
1943年に初飛行。
写真偵察型。
●Yak-9DD
1944年に初飛行。
Yak-9Dに翼内タンクを増設して6つとし、航続距離を2,100kmに伸ばした長距離型。重心の調整のため、操縦席の位置は通常より40cm後方に下げられた。
●Yak-9B
1944年に初飛行。
コクピット後方に爆弾槽があり、100kg爆弾4発を搭載できる戦闘爆撃機型。
●Yak-9M
1944年に初飛行。
主翼の強度が高められ、生産性の都合でコクピット位置は40cm後方に下げられ、Yak-9TやYak-9DDと同じ位置になっている。1944年5月から1945年6月にかけ、シリーズ最多となる4,239機が生産された。
●Yak-9U
1944年に初飛行。
装備を見直して軽量化された。胴体後部も樹脂浸潤合板の外板となる。
胴体が延長され、Yak-3を参考に機首下面のオイルクーラーを胴体内に移し、空力的洗練を図った。
最高速度は700km/hに達したが、クリモフM-107Aエンジンは25時間使用する毎に換装する必要があった。
●Yak-9P
1946年に初飛行。
Yak-9Uを全金属化し、武装はB-20 20mm機関砲3門に強化された。
東欧を中心に大量に配備され、朝鮮戦争初期の共産側主力戦闘機として、国連軍と戦った。
●Yak-9UM
1996年から少数生産されたYak-9Pの復元機。エンジンはアメリカ製のアリソンV-1710を使用している。
性能諸元(Yak-9M)
全長 | 8.50m |
翼幅 | 9.74m |
空虚重量 | 2,428kg |
エンジン | クリモフM-105PF 液冷V型12気筒×1 |
最大出力 | 1,180馬力 |
最高速度 | 573km/h |
航続距離 | 950km |
実用上昇限度 | 9,500m |
上昇率 | 820m/min |
乗員 | 1 |
武装 | ShVAK 20mm機関砲×1、UBS 12.7mm機銃×1 |