生態
卵とは、生物のメスが作る生殖細胞である。正式には卵子と言う。基本的に有性生殖を行う生物の雌性生殖細胞は全て「卵」であるが、この名前で通称されるものは概ね卵生生物(鳥類、爬虫類、昆虫などの虫、魚介類)によるものを指す。一般的に卵生生物は外殻(やわらかかったり硬かったりする)に覆われた卵を産み、また大きさも肉眼で容易に確認可能である程のサイズを持つことが多い。多くの場合、その生物中の単独細胞としては最大級である。
卵を産む生物の例外として、カモノハシ等の一部の哺乳類も卵を産む他、サメやウミタナゴ、グッピー等の一部の卵生生物は体内に産卵し孵化させる「卵胎生」と呼ばれる繁殖形態をとる。
文化(祭事)
文化的には、生命誕生のシンボルとして扱われることが多い。キリスト教の祭典たる「復活祭」では、色とりどりに彩色したゆで卵(イースター・エッグ)を隠し、探させる遊びが行われる。また、中国では新生児の誕生の際、ゆで卵を食紅で着色した「紅蛋(ホンタン)」を祝いの品として近所に配る風習がある。特別な利用を行わずとも、巣の中に産み落とされた卵の上に乗って温める親鳥の姿は、雛鳥に餌を与える姿と並んでしばしば「妊婦」や「子育て」の比喩として扱われる。
文化(食)
鶏や鶉、家鴨などの家畜化された鳥類、鮭、鱈などの一部の魚類の卵は食用とされる。明確な決まりごとがあるわけではないが、しばしば生物としてのタマゴは「卵」、食材としてのタマゴは「玉子」と記述が分けられる。シシャモからカレイなど、一尾丸ごと「尾頭付き」の状態で供される魚類において、抱卵した雌の個体は「子持ち」として珍重される。また、実際には卵生ではないコンブやワカメ等についても、他の魚類(ニシン、トビウオ等が多い)の卵が付着した状態で収穫されることがあり、これも「子持ち」と呼ばれる。
鳥類の場合、特に鶏卵については一般的にも汎用性の高い食材として好んで利用される。日本では市場価格が一定水準で安定していることから「価格の優等生」と呼ばれることもある。卵焼き、目玉焼き等の卵を主とする料理はもちろん、熱凝固性等の料理に有用な性質を利用した食品添加物として利用されることも多い。日本では生食することもあるが(生卵、卵かけご飯等)、実際には卵には腸管由来のサルモネラ菌が付着していることも多く、注意が必要である(日本で流通している鶏卵は生食可能な衛生基準下で管理されているが、外国ではそうとは限らない)。
医療・その他
食材以外の利用として有名であるのは、インフルエンザワクチンの生産における、ウィルスの「培地」としての利用である(厳密にはウィルスは生物ではないため、「培養」という表現には語弊がある)。これは、インフルエンザウィルスがヒトの他、鶏でも増殖可能であることを利用したものである。しかしながら、この生産方法を取るため、インフルエンザワクチンは原則として卵アレルギーを持つ人間に接種する際には特別な注意を要する。
また、関連する特殊な性的嗜好もある。 → 産卵
関連タグ
(料理) 卵料理 卵焼き 目玉焼き ゆで卵 ポーチドエッグ オムレツ 生卵 卵かけご飯 温泉卵 半熟卵
(その他)