ヘブライ語:גָּלְיָת, Golyat
大元は旧約聖書におけるペリシテの巨人兵。身長約3メートルの巨漢だったと言われる。
その最期は、石を眉間に直撃されて昏倒し、その隙に己の刀で首を切られる、というものであった。
(ちなみに、かのミケランジェロのダビデ像は、まさにゴリアテへ石を投げつけんとするダビデである)
とてつもない強者であったはずだが、その倒される様があっけないことから
(元々神と神を信仰する者たちを嘲る役割であったので、勧善懲悪及び、後のダビデ王の華々しいデビュー戦としてのわかりやすい観点からそのように用意されたのかもしれない)
「小さい存在が大きい存在に勝つ」「でかいだけの見掛け倒し、かませ犬」の比喩として使われることもある。
現実近世界におけるゴリアテ
代表としてはナチスドイツの有線誘導式小型無限軌道自爆兵器。移動地雷と言える。
ゴリアテ(兵器)
第二次世界大戦中にドイツが開発した兵器の一種。
当時占領下にあったフランスで開発されていた兵器(spécial K)が元ネタとされている。
身も蓋もないことを言ってしまえば「リモコン操作で敵陣や敵戦車に突っ込ませる自走式の爆弾」。元々は地雷原除去(地雷原で爆発させて地雷を誘爆させ、除去する)などに使われていた兵器である。
小型の戦車のような外見の車体に75kg~100kgもの爆薬が詰め込まれている。
100kgの爆薬を搭載できる能力を持つゆえ、爆薬を降ろせば上のイラストのように人間一人を乗せる(載せる)こともできる。
動力は初期モデルはモーターによる電気式だったが、信頼性の面で問題があるため後にガソリンエンジンによる内燃式に変更された。
ゴリアテの堅実性
実はこの手の「自走する爆弾・爆雷」という発想はドイツ(と、その元ネタを作ったと言われているフランス)以外もしていた。
例を挙げれば、
- パンジャンドラム、自走爆雷ビートル(イギリス)
- ローリングボム(アメリカ)
- タイヤ爆弾(日本:関東軍)
- 無線操縦戦車「永山」、遠隔操縦器材「い号」(日本:大日本帝国陸軍)
- spécial K、クロコダイル、Véhicule Pommelet 38(フランス)
- ZHDT-3(ソ連)
などがあげられる。
しかしゴリアテはこいつらと比較しても非常に堅実な部類の兵器であると思われる。
ゴリアテは、
- 動力は電気モーター或いはガソリンエンジンで無限軌道を駆動する
- リモコン操作が可能
という点がある。
まずパンジャンドラムであるが、これは「論外」の一言。
動力は周囲に付けられたロケットエンジンの噴射力で本体を回転させ、前進するというもの。
パンジャンドラムの項目の方が詳しいが、ロケットエンジンっつーかロケットは基本的には直進しようとするものであり、車輪を回すものではないのである。
一応ロケットレンチというものが不発弾の信管除去に使われているが、これは飽くまで「信管を回して外す」ものであり「何かを回転させて前進させるもの」ではない。
そもそも噴射力で車輪を回すということ自体がおかしいのであるが、まあそこは英国だからという点で大目に見ておこう。
次に我らが日本のタイヤ爆弾。こいつはタイヤに爆薬と圧縮空気を大量に詰め、圧縮空気の噴射で転がして敵陣に突っ込ませるというシロモノ。はっきり言ってやっていることはパンジャンドラムとほとんど変わりない。
さて、最後にローリングボムであるが、こいつは「内蔵したレシプロエンジンで球型の本体を回して前進する」という(飽くまでパンジャンドラムやタイヤ爆弾と比べれば)動力だけなら堅実な方法を採用している。
しかし、こいつは球型(直径3mのトゲボール)なので凸凹した地形ではどこに転がるか分からない。転がって移動するという方法にも無理があるのである。
何よりこの3つはどれも誘導手段が存在しない、発進したらそのまま転がすしか無い兵器なのである。
変なところでバランスを崩して自分の方に戻ってくるなんてこともあるかもしれない。
これらを考えれば、ゴリアテが如何に堅実な兵器だったかがわかるだろう。
ちなみに自走爆雷ビートルは二つあるキャタピラを電気モーターで駆動する堅実なつくりとなっているが、なぜか研究のみで終わっている。
クロコダイルは安全に塹壕などを突破する戦車の代替として開発され、ゴリアテに似た有線操縦を行えたが実践に投入する前に戦争が終わってしまった。
V.P.38は非常に大型であったものの無線操縦を行えたが、無線の混線という問題が残っていた。未完成のままドイツによるフランス侵攻受け、侵攻後も研究は続けられていたが後に破棄されている。
spécial Kはハーフトラックの発明者であるアドルフ・ケグレスによりV.P.38の欠点を改修する形で開発されるも、ドイツに接収されてしまう。
無線操縦戦車「永山」は長山大尉が個人的に開発したもので、農耕用トラクターを元に改造された。有人操縦も可能だが、戦場までの輸送に使用するもので、実際の戦闘には車体に爆薬を搭載して無線で操縦し、敵トーチカ等に爆薬を設置後に帰ってくる、もしくは搭載された機関銃及び爆薬筒の発射による攻撃が主な使い方となっていたが試験のみで実戦投入されることはなかった。
遠隔操縦器材「い号」は八九式中戦を無線操縦化したものが原型となっており、発動機を電動式に変更し、有線化して正式化。専門部隊である立工兵第27連隊に集中配備されたが実戦投入されることは無く、機材は焼却もしくは爆破処分され、車両類は埋没処理や利根川に投棄された。
余談ながら、リモコン操作の戦車はソ連でも研究されており、対フィンランド戦では火炎放射機搭載型のものが投入されている。
ZHDT-3は鉄道魚雷の名のとおり、鉄道のレール上を走行して敵装甲列車への攻撃に使用するもので、遠隔操縦式とはいえ特に語るものはない。
レール上を走るだけなので。
一応道路上でも60km/hほどで走行可能。
とは言うものの…
しかしゴリアテのリモコンは有線式、これが最大の弱点でもある。
リモコンの線が切れたらはいそれまでよ、動かなく(動かせなく)なってしまう。
このため「なんだ、線切れば止まるのか」と気づかれてからは晴れて珍兵器の仲間入り。
(ただし無線はフランスのV.P.38のように混線による誤作動が起こる為、有線は堅実な方法ではある)
…しかし、故障して行動不能になったゴリアテに向けて、アメリカ軍が面白半分に手榴弾を投げ込んだら文字通りの「自爆事故」につながって1部隊が壊滅してしまったという笑えそうで笑えない例もあるとか。
他にも鹵獲したものを爆薬を除去した後に上に乗ったまま操作して遊んだりもしていたとか。
アメリカ何やっとんねん。
また、無人なので少なくとも自爆事故を起こさない限りは自軍に被害が出ない上、何より神出鬼没で小型で発見しにくいなどの点で前線での評判は悪くなく、敵軍特にポーランド軍からはなんだかんだで恐れられた兵器でもある。
空想世界におけるゴリアテ(ラピュタ)
代表として「天空の城ラピュタ」における巨大空中戦艦ゴリアテがある。
最近(2009年中頃より)は東方Project内作品である「東方非想天則」内にて
アリス・マーガトロイドが操り登場する巨大人形がゴリアテ人形と名付けられており、
このタグのヒット件数が増えている。
悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印
「巨人の棲み家」エリアのボスキャラクター。主人公・シャノアの2倍以上もある、筋骨隆々とした巨体の持ち主。背中には巨大な水晶が生えている。登場時は鎖に繋がれている。
巨体から繰り出される拳や岩石を降らせるなど、パワーを活かしたパワフルな攻撃が得意。
倒すと北斗の拳のラスボス・ラオウ昇天のようなポーズで消滅する。悪魔城シリーズではこんなやられ方をする敵キャラはけっこういたりする。特にこの敵は髪型・髪の色・体格など、ラオウそっくりである。
Fate/GrandOrder
原典通りダビデの打ち倒した相手であるが、どのような人物かは不明。
ゴライアスとの関連
ゴリアテ(Golyat)の英語表記が「ゴライアス」(Goliath)であり、この名前がついたものも現実架空に多数存在する。詳しくはゴライアスを参照。
関連タグ
超重戦車マウス:命名のコンセプトが一緒