“アクシズの遺産” 想いは再び…
概要
2016年に株式会社サンライズの運営するWeb小説サイト「矢立文庫」で連載された小説作品。
『機動戦士ガンダムMSV-Rジョニー・ライデンの帰還』を手がける漫画家集団Ark Performanceによるプロットを各種媒体で表現する企画として立ち上げられており、2017年6月には短編アニメとして映像化。更に同年11月には、サンライズ協力の元で、小説・アニメで語りきれなかった各設定を補足したコミカライズ連載が、月刊ヤングマガジンで行われた。
小説本編文章は『蒼き鋼のアルペジオ アルス・ノヴァ』で脚本を務めた中村浩二郎が担当する。
アニメ版では金世俊が監督を努め、ガンダムのアニメシリーズでは初の外国人監督が起用された事でも話題を呼んだ(アニメ以外では『G-SAVIOUR』のグレーム・キャンベルが初となる)。
本作は『機動戦士ガンダムUC』(OVA版)の数ヶ月後を舞台に、『機動戦士ガンダム逆襲のシャア』以降触れられていなかったアクシズのその後が描かれている。
また、ブッホ・コンツェルンとその下部組織が物語の重要な役どころを担うなど、『機動戦士ガンダムF91』へのつながりも強く意識されており、後の世界情勢に繋がる橋渡し的な作品としての意味合いも強い。
余談として、本作の主要人物が、『ジョニー・ライデンの帰還』で描かれている。これは両作品の製作を、前述のArk Performanceが手掛けていることによるものだが、『ジョニー・ライデンの帰還』はあくまでKADOKAWA作品であるため(サンライズは版権以外に関与してない)、“お遊び”としてのものである。
ストーリー
宇宙世紀0096年『ラプラスの箱』をめぐる事件から数か月が過ぎたころ、地球連邦軍は地球圏外に漂う、分断されたアクシズに調査団を派遣させる。
調査団のメンバーには、アルレット・アルマージュとダントン・ハイレッグという二人の民間人も参加していた。
彼らはかつて技術者とテストパイロットとして、ジオン公国軍、そしてネオ・ジオンに仕官していたという過去があったのだ。
アクシズに潜入した調査団は、誰もいないはずの基地内で強襲を受ける。
そしてアルレットとダントンは、想像もしていなかった出来事に遭遇するのだった…。
(矢立文庫より)
登場人物
マスティマ
かつての一年戦争よりジオン、ネオ・ジオンで様々なモビルスーツ開発に携わった、優秀な技術者。サザビー開発のメインスタッフでもある。
しかし第二次ネオ・ジオン抗争を機に軍を離れ、偽造戸籍によってダントンと共に隠遁。サイド5(旧サイド6)で「ダントン・クリーニング商会」を営んでいたが、地球連邦軍特殊部隊「マスティマ」の招聘を受け、シャアの行方の手がかりを知る為にアクシズへの帰還を決意する。
シャア・アズナブル付きの技術者として彼と行動を共にしていた他、フラナガン機関の実験体という経歴を持ち、当該機関所属時代に受けた人体実験の影響から、他の人間と比べて老化が遅い。
アルレットと共にサイド5に隠遁していた元ジオンテストパイロット。シャアに似た操縦の“クセ”を有しているため、シャア専用ズゴック開発の頃から、彼の専属テストパイロット(シューフィッター)として付き従ってきた経歴を持つ。
第二次ネオ・ジオン抗争後は、ダントン・クリーニング商会の店主としてしばらく戦争とは無縁の生活を送っていたが、自分達の過去の経歴の抹消と引き換えに、アルレットと共にアクシズへの案内役としてマスティマに同行する。
“人殺し”を嫌悪するが故にテストパイロットに甘んじてはいたが、その操縦技術は本物であり、バーナムとの戦闘では施設内に残された機体に搭乗、戦闘を行う事になる。
連邦軍特殊部隊「マスティマ」の隊長。地球連邦政府内閣第六室所属の中尉。
アクシズに残存している研究施設の調査及びサイコフレームの研究資料の有無の確認の為、ダントン、アルレットに接触。過去の経歴・罪状の抹消を交換条件に、彼らの協力を得た。
作戦中は民間人であるアルレットらの護衛も兼ねており、他の隊員達と別行動を取らざるを得ない際にも、彼らに付いて離れない。
バーナムの森
ガンダムAN-01”トリスタン”を駆り、マスティマを襲撃した「バーナム」と呼ばれる部隊に所属するモビルスーツパイロット。
オーガスタ研究所において、同研究所が世論による弾劾によって閉鎖する前に、最後に調整された双子の強化人間。兄。
クァンタンの弟。兄と同じく「バーナム」に所属する双子の強化人間。
乗機はバイアラン・イゾルデ。
ブッホ・コンツェルン
- シャルンホルスト・ロナ
旧名シャルンホルスト・ブッホ。
十代からスペースデブリの回収業を始め、己の代でブッホ・コンツェルンを築き上げた創始者。
会社経営を通じて民主主義社会の現界を感じ、それを打開するべく貴族主義社会の実現を志すようになる。
その第一歩として、かつての中央ヨーロッパの名家「ロナ」の家名を買い、以降はロナ家の家長となった。
長期的視点に立って、様々な方面に手を回しており、その一つとしてアクシズに眠るサイコフレームのデータ回収を目論む。
エンゲイスト・ロナおよびマイッツァー・ロナ(後のクロスボーン・バンガード総帥)の実父であり、セシリー・フェアチャイルドからは曽祖父に当たる。
- エンゲイスト・ロナ
シャルンホルストの長子。
連邦中央議会の議員であり、閣僚入りも確実視される有力政治家。
非公開議事の内容を父へリークした。
後にコロニー公社(コロニーの建設・管理・運営を一手に賄う地球圏三大NGOの一組織)の副総裁へと天下りし、サイド4……通称フロンティア・サイドの再建計画を取り扱っている。本件は、『機動戦士ガンダムF91』において、シーブック・アノーが『フロンティア・サイドの街並みが、わざわざ中世ヨーロッパを模したものになっていたのは、クロスボーン・バンガードが占領する事がわかっていたのかもしれない』という推理へと繋がる。
なおエンゲイスト天下り後の、地球連邦政府中央議会議員としての票田は、マイッツァーの長男ハウゼリー・ロナ(カロッゾ・ロナの義兄)が引き継いだが、更に後にはそれが全ての悲劇の引き金となった。
サナリィ
- ブレンドレル
漫画版において、物語のバックボーンを補完するために登場した人物。
サナリィの重役と思わしき老人。シャルンホルストと裏取引を行っており、ガンダムAN-01等を貸与する代わりに、それらの戦闘データ取得およびサイコフレームの情報回収(共有)を条件としてしている。
メーメット達『マスティマ』が交戦状態に入ったことなどを、ほぼリアルタイムで細やかに把握しており、シャルンホルストと作戦の“引き際”についての協議を行っている。
登場メカニック
ネオ・ジオン
バーナム
専門用語
アクシズ
旧ネオ・ジオンの重要拠点となった小惑星。
シャア・アズナブルによって地球へ落下させられたものの、二つに分断された上でνガンダムの引き起こしたアクシズ・ショックによって地球から離脱していった。
内部にはネオ・ジオンのニュータイプ研究資料が未だ眠っているとされ、バーナムとマスティマはそれぞれの思惑でこれを探索する。
詳細はアクシズの項目を参照。
ブッホ・コンツェルン
スペース・デブリの回収業によって急成長を遂げた企業複合体。宇宙世紀0090年代には既に、自社コロニーや艦艇を有し、アナハイム・エレクトロニクスから直々に下請け事業を請け負う規模となっている。
また、会長シャルンホスト・ロナの孫、ハウゼリー・ロナが、アナハイム社の副社長令嬢との交際が取り沙汰される事もある。
裏ではシャルンホルストによって、貴族主義国家の建国計画を長期的視点によって進めており、それは後にコスモ・バビロニアとして結実する事になる。
バーナムの森
ブッホ・コンツェルンの私兵部隊。
母体のジャンク業を利用し、地球連邦軍の管理がずさんな小破~中破のジェガンを回収、修復するなどの手法により、“所属不明機”の部隊を作り上げている。
更にはガンダムAN-01"トリスタン"などの最新鋭機や特殊な経歴の機体を調達・運用するだけの組織力を持つ。
サナリィ
地球連邦政府直轄の、連邦軍諮問機関(半官半民の公社)。詳細はこちらを参照。
一面では軍の上位組織に当たるため、“正当な手続き”を用いれば、連邦軍からモビルスーツを接収することも可能である。
また、長期的視点から、ロト等の小型モビルスーツを独自にロールアウト、有効性を検証している。
表向き、今回のサイコフレーム回収作戦には無関係に見えたのだが……。
アニメ版スタッフ
ストーリー・コンセプデザイン | Ark Performance |
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メカニカル総作画監督 | 阿部慎吾 |
美術監督 | 中村豪希 |
音楽 | 大間々昴 |
監督 | 金世俊 |
関連イラスト
関連項目
ガンダム 宇宙世紀 機動戦士ガンダムUC 機動戦士ガンダムF91
シリーズ
機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ←機動戦士ガンダムTwilightAXIS→ガンダムビルドダイバーズ
宇宙世紀
機動戦士ガンダムUC←機動戦士ガンダムTwilightAXIS→機動戦士ガンダムNT