概要
角川ニコニコエースで連載中の漫画作品。
『攻殻機動隊』や『アップルシード』などで有名な士郎正宗が原案を『エクセル・サーガ』など知られる六道神士が漫画を担当している。
元々はアニメ制作会社の発注に準じて作られた企画だったが、諸事情により、この企画は休眠状態になってしまった。その後、六道神士の手によって漫画化される運びとなった。
9巻より六道氏の体調の都合で作画は構成作画担当だった春夏秋冬鈴氏に交代した。シナリオ、構成は引き続き六道氏が務める。
義体技術や電脳技術などの技術、大日本技研、セラノ・ゲノミクス、剣菱重工等の企業が作中で登場するなど攻殻機動隊との関連性が見受けられる。
略称はおそらく「紅パン」(4巻巻末より)
ストーリー
時は近未来。技術先進国ではサイボーグや自律ロボットが一部ではあるが一般に出回り始め、世界各地で自然災害が頻発し、大国は技術や資源を奪い合い、
貧富の格差が拡大した混迷の時代。
誰もが無意識に免罪符を求めてさまよう出口のみえない過渡期・・・
これはそんな時代に全く関係なく彼女が彼女に出会う物語
脳以外、全身を機械化した「全身義体」の少女・福音(ねね)は、施設から親類の崑崙八仙拓美(ころばせたくみ)に引き取られ、拓美のいる人造リゾート島「セナンクル・アイランド」へ向かう。しかし、その道中で、謎の科学者「ウザル・デリラ」と、美少女型アンドロイド「クラリオン」に出会い、巨大自律型掘削機ブエルをめぐる騒動に巻き込まれてゆく。
登場人物
主人公。幼いころの事故が原因で、脳以外をすべて機械化した、世界でも稀有な「全身義体」の少女。義体技術が開発途上にある作中の時代では珍しく、義体を自由自在に操ることが可能な、いわゆる「適合者」である。
性格は明るく素直。同性ながら、クラリオンの可愛さに惚れている。夢は世界平和。
ウザルの所有する戦闘用アンドロイド。
現在は福音に所有権が譲渡され、福音と行動を共にしている。
体内に「パンドーラ・デバイス」を始めとする多数の非合法の機密プログラムを保持している。
女科学者。ブエルを製作した全ての元凶とも言える愉快犯的な人物。
表向きは「レアー財団」の代表を務める実業家にして慈善家。一方で国際指名手配犯という裏の顔を持ち、何らかの組織を率いる等、謎多き女性。
電脳マーケティングを牛耳る「崑崙八仙財団」の総帥で、ウザルとは友人。福音の遠縁の親類で「適合者」である福音に興味を持ち、福音を施設から引き取った。作中の時代では珍しい電脳化した人間。極度の対人恐怖症で、本人は自宅のシェルターに引き籠っており、体を動かすのも面倒くさいらしく、身の回りの世話はすべてゲルコマにさせている。語尾に「だや」と付けて話す。
毎回冒頭に登場する、ティターンTVの新人リポーター兼売れないアイドル。名前が出るたびに何らかのアクシデントが起こったり、何かにさえぎられ、「ブリ」以降が言えない。報道畑からバラエティを経て、女優への2段変身を狙い、仕事の時はよくツインドリルのカメラマンと、長髪の音声担当と共に行動している。福音達の事件に毎回巻き込まれており、自身も気づかぬ内に(ウザルを除く)作中の誰よりも事の真相へ近づいている。
ウザルが作り上げた、真希少金属を採掘するための巨大な「自律型採掘機」。本体は一つ目の黒い球体のような姿をしている。強力な兵器である「荷電粒子砲」を有しており、その戦闘能力は核兵器をも凌ぐとされている。現在、中枢制御ユニットは福音たちが持っており、本体は休止状態にある。
中枢制御ユニットは、5本の山羊の脚と獅子の頭を持つぬいぐるみの姿。
尊大な物言いや変態発言をするため、クラリオンからぞんざいな扱いを受けている。
- ロバート・アルトマン(cv:稲田徹)
セナンクル防衛軍(CDF)の警察機構に所属する軍人。階級は大尉。性格は紳士的で正義感が強く、困っている人を見たら助けないと気が済まない性分。
福音達が病院で知り合った片足が義足の少女。性格は元気かつ活発で、他の子供たちからオヤブンと呼ばれ、慕われている。また、ブエルによる市街地破壊の被災者であり、現在は祖母と仮設住宅に暮らしている。
- ウザルの部下たち
ウザルの率いる謎の組織の構成員達。ウザルのパワハラ・セクハラに耐えかね、彼女を裏切りブエルを奪おうとするが、ウザルの策略によってブエルが暴走してしまい、島軍にテロリストとして拘束される。以降、ポセイドンに使い走りとして匿われることに。
ウザルの部下たちの中でもリーダー格の女性。登場時、ウザルの趣味によってバニーガールの格好をしていたため、福音からバニーさんと呼ばれるようになった。エンジニアとしては優秀だが、バレバレな尾行を行うなど基本的にへっぽこで、ウザルによくおちょくられている。
米帝から派遣されたセナンクル島特別軍事顧問の米帝軍大佐。ウザルの部下たちの裏切りを手引きした黒幕で、ブエルの奪取を目論んでいる。他人に厳しく、無駄な時間を嫌う。
力による世界秩序の構築を目論み衰退しつつある帝国を見限りポセイドンと手を組んだ。自身を世界を統べるに相応しい天才と豪語していたが、組織からは大して期待されておらず、ウザルからも道化と評される。そしてブエルを巡る一件で福音たちに敗北し、米帝軍基地と共に最期を迎えた。
- フィアー(Fear)
クルツの護衛のコートを着た巨漢の大男。その正体はラブリュスがクルツに与えたポセイドンの戦闘用アンドロイド。数世代先の技術が搭載されており、熱光学迷彩まで使える。クルツは最先端の兵器だと思い込んでいたが、実際には試作品であり、ラブリュスはより高性能なアンドロイドを開発していた。
セナンクル島議会議長。F県F市の某市長にとてもよく似た外見をしており、献金につられて一企業を優遇するなど腹黒い人物。また、公費横領等の汚職の噂があり、その豪華な私生活や所有する豪邸は海外メディアを通じて批判されている。
しかし、基本的には島や島民を第一に考えている上、政治的に複雑なセナンクル島の舵取りを行えるなど政治家としては優秀な人物である。
- ラブリュス
ポセイドン科学技術部門大幹部の女性で、クルツの後任としてセナンクル島を訪れる。ウザルとは因縁があるようで顔の傷もその時つけられた。フィアーなどの戦闘用アンドロイドを開発した技術者。
- ケリュケイオン&アイギス
ラブリュスの護衛を務める戦闘用アンドロイド。フィアーの後継機で試作機であったフィアーよりも小型になっている。また、命令を実行するのみだったフィアーとは違い、主人に進言するなど高性能のAIが備えられている。
ラブリュスと共に島に来訪した、クラリオンの姉妹機。クラリオンと同等か、それ以上の戦闘能力を有する。外見は真っ白だが内面は腹黒く、自由奔放かつ好戦的な性格で、上品な振る舞いを好む。クラリオンとの交戦後、福音達の元に身を寄せるが真意は不明。過去にクラリオンとの間に何かあったようで、クラリオンからは恐怖と警戒の対象となっている。
- P-2501
電脳空間でポセイドンを観測していた謎の存在。クルツの作戦失敗の要因が福音とクラリオンにあると考え2人に対する観測を開始する。テンションの高いしゃべり方をするが、これは福音達に用に構築した性格であり、そもそも人格や個性といったものは存在していない。その正体は日■の外■■■課で作ラレた情■■■■■用のプ■■■■■の幼少期。福音からの愛称は「ニコちゃん」で、本人も気に入っている。
用語
セナンクル・アイランド
物語の舞台となる島。最高級リゾート島であり、かつ、最新設計の技術都市で、有名企業が数多く居を構えるシリコン・アイランド。しかし21世紀入ってから新たに生まれた火山島であり、一般人の入植が始まって5年しか経っていないため人口は4.2万人にとどまっている。
前述した通り新しい島であるため、生態系はほぼ人為的に持ち込まれたものである。河川が発達しておらず、雨量も少ないため自然に得られる真水は少ない。こういった事情により食料や真水の多くは大日本技研ファームランドのプラントで製造している。
どの国にも属さない独立自治区であり、独自の法、議会、行政府が存在している。ただし、その独立は大国の利権と結び付いているからこそのものである。このため、作中でたびたび米帝軍事顧問団の内政干渉を受けている。
セナンクル防衛軍(CDF)
セナンクル島が保有する軍隊、通称「島軍」。軍隊といってもその規模は小さく数カ国相手の安全保障条約がなければ役に立たない程度の戦力しかない。セナンクル島自体が国家として複雑な状態にあるため警察が存在せず、このCDFの一部が警察の役割を果たしているが、手が全く足りておらずブエル騒動後の島の治安悪化についていけていなかった。
セナンクル警察(CPD)
ロバートが議長との政治交渉によって(実際は汚職の証拠を突き付けて半ば無理やり)設立させた警察組織。クルツ大佐に他国の軍が手を出すのは国際問題になりかねないため、警察組織へ転身することによってそれを乗り越えた。
パンドーラ・デバイス
本来は人型ロボット用の動作補助アプリケーションとして開発されたもので、様々な技術をプログラム化したもの。その内容は近接戦闘から料理など多種多様。開発方法が1ダースくらいの国際法に触れ、お蔵入りになった。そのため、外部に漏れないように使用期限が存在する。
義体
義手や義足と同様、広い意味での人工の身体部の呼称。"劇中の時代"では発展途上の技術である。過酷なリハビリを通じてようやく不器用な動作が可能になることがほとんどであり、義体に適合できず死に至る事例さえある状況である。一方、体質や才能によっては義体を生身以上に自由自在に操る者もごく少数ながら存在し、「適合者(アプデタ)」と呼ばれている。適合者は、全世界でも数件しか報告されておらず、全員が10代以下の年齢であるほかは公表されていない。
電脳化
神経細胞とマイクロマシンを結合させることにより神経細胞と外界を直結する技術。この時代では行政や人権団体等がもめており、電脳化する人は少ない。また、義体技術が発展途上であるため電脳化で得られる利便性がそこまで高くなく、一般人にも広まってないが大企業や公的機関は将来を見据え密かに電脳化を推奨している。
Fポート
正式名称「Finger tip Port」マイクロマシンをつかった生体多機能端末。Fingerと言っても指以外に付けることもできる。国際個人認証システムとして開発され最も安価で安全なシステム、デバイスとして普及している。電脳化と違いあくまでネットワークを媒介するための端末にすぎないが一般人にはまだまだ違いが伝わっていない。
光学迷彩
ホログラムで背景を投影し視覚的に対象を透明化する技術。福音がパンドーラデバイスを使用する時には変装のため光学迷彩を応用し服を着替えさせ変身した様に見せかけている。開発途上の発展技術として、赤外線センサーをも欺瞞する「熱光学迷彩」が存在するが、完成品を保有しているのはポセイドンのみである。
自立型歩脚汎用ロボット・ゲルツェコマ
通称ゲルコマ。ウザルと拓美が開発した自立型AIロボット。卵のような形状をしている。機構のユニット化により簡便なオプション変更ができ、あらゆる事態に対応して性能を調整できる。
ポセイドン
ポセイドンインダストリーを中核とする多国籍企業複合体。熱光学迷彩や高性能独立思考アンドロイドなど数世代先を行く技術を保有する。しかし、その実態は人類救済をうたう謎の計画アポルシード計画を推進する秘密結社。クルツを操っていた真の黒幕。アポルシード計画のためにブエルを追い求めている。その力は国境、人種を超えあらゆるところに存在する。各国もその存在を認識し、早急な対策を迫られている。
アニメ
2016年1月8日よりテレビアニメが放送決定。TOKYOMX、テレビ埼玉、千葉テレビ、tvk、三重テレビ、岐阜放送、サンテレビなどの角川UHFアニメ常連局9局に加え、KBS京都でも放送される。
これに先んじて2015年12月5日より角川シネマ新宿他全国3箇所にて2週間の期間限定イベント上映形態として50分の劇場アニメが先行公開された。
主題歌
オープニングテーマ … 「hopeness」/ 作詩・作曲・編曲 - ZAQ/ 歌 - ZAQ
エンディングテーマ … 「LoSe±CoNtRoL」/ 作詩・作曲 - ZAQ/ 編曲 - TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND/ 歌 - 七転福音(福 沙奈恵)・クラリオン(沼倉 愛美)
第4話挿入歌 … 「EX-librist」/作詞 - Yohei Matsui/ 作曲・編曲 - Tomohisa Ishikawa/ 歌 - TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND feat.佐咲紗花
攻殻機動隊ARISEとの関係・裏話
紅殻のパンドラは当初GHOST URNという名で企画され、初期プロットでは攻殻機動隊ARISEと世界観を同一にしていた。初期プロットでは、ウザルは攻殻機動隊ARISE第3話及び第4話に登場するサイードと同一人物であり、彼女やクラリオン、試作型ブエルが攻殻機動隊ARISEに登場することになっていた。また、攻殻機動隊ARISEに登場するクルツも元々はGHOST URNのキャラクターであり、紅殻のパンドラのクルツ大佐の位置のキャラクターであった。同名なのはその名残である。
単行本巻末に掲載されている企画初期のイラストでは、クルツ大佐以外にもサイードを護衛していたサイボーグやホヅミ・ナミ大佐など、ARISEの登場人物の原型となったと思われるキャラクターが掲載されている。
ウザル達は攻殻機動隊ARISEの事件後セナンクル島に移住し、それから数年後の世界がGHOST URNの舞台になる予定であった。しかし、GHOST URNのアニメ企画が諸般の事情で中止になりKADOKAWAが漫画として企画を再始動させるのに当たり、設定とキャラクターの再構成が行われた。それにより世界設定は攻殻機動隊ARISEの時代よりも前ということになり、同一人物であったGHOST URN側のキャラクターと攻殻機動隊ARISE側のキャラクターが分離され、題名も紅殻のパンドラ-GHOST URN-となった。
関連タグ
士郎正宗 攻殻機動隊 攻殻機動隊ARISE アップルシード SF サイバーパンク
ニンジャスレイヤー…作品にでてくる用語などが本作品でネタとして拝借されている。