定義としては「独立UHF放送局で放送されるアニメ全般」、「独立UHF放送局を中心として放送される深夜アニメ」の2通りがあるが、後者の意味で言われることが多い。本項では後者について記述する。
概要
「UHFアニメ」とは、深夜アニメの放送局にUHF系独立局を採用したものである。
その元祖といえるのは1998年春から放送を開始した「LEGEND OF BASARA」である。
これをきっかけに独立UHF放送局で深夜アニメの放送が激増し、現在に至る。
独立局を使用する理由としては、
- 深夜アニメは予算が少ないことが多く、視聴者数と放送に伴う料金が丁度いいのが独立局の深夜帯だった。
- 独立局は表現規制が緩く、過激な内容のアニメでも放送が可能
などがある。
独立局は全国ネットワークを持っていないため、非常に限られた地域でしか視聴できない。そのため「UHFアニメ」とされた作品は地方民にとって憧れであり、オタクにとっての情報格差の代表例である。
2020年代においては、インターネットでの映像配信が普及したため、UHFアニメを起因とする情報格差は解消傾向にある。
ネット配信しかしていないアニメはネットアニメとして別になる。
ややこしい定義
UHFの意味
「UHF」という名称はあくまで在京キー局に属さない「独立局」を指しているだけで、放送局が使用している電波の帯域を厳密に指しているわけでは無い。例えば、「LEGEND OF BASARA」の放送局はテレビ神奈川、千葉テレビ、テレビ埼玉、サンテレビ、KBS京都、テレビ愛知、TVQ九州放送、テレビ北海道、広島ホームテレビ、新潟放送、静岡放送だが、新潟放送と静岡放送は由緒あるVHF局であった。
更に、VHF帯域は地デジ化と同時にテレビでは使用されなくなり、2020年代現在では日本の地上波テレビ局は全てUHF局となっている。しかし、それでも「UHFアニメ」という名称は独立局で放送しているアニメを指すことになっている。
ようするに「UHFアニメ」に帯域は問われず、独立UHF局を中心に放送権の販売を行っているかどうかが基準となっている。
UHF独立局が製作に関わっているか?
UHFアニメを分類するうえで、もう一つの定義として、「アニメの製作欄に独立局の名前があるか」がある。つまり、アニメの企画段階からテレビ局が参加し、アニメの制作費用などをテレビ局が負担しているかどうかでUHFアニメを分けるのである。(製作委員会に独立局の名前があるか)
この基準を採用すると、「製作にテレビ局が関わっていないが、テレビで放送されたアニメ」や「キー局が制作したが、独立局で放送されたアニメ」などはUHFアニメではないことになる。
基本的にこの定義はあまり使用されず、初回放送が独立局中心であればUHFアニメとされる。
ただし、『英國戀物語エマ』というアニメはキー局のTBSが制作しながら自局では放送せず、放送権をUHF局に販売して放送していた。このような例があり、これがTBS系深夜アニメなのかUHFアニメなのかという区分はさらにややこしいことになる。
00年代では「フジテレビ深夜アニメショック」の影響で、フジテレビで放送されていたアニメの続編が独立局で放送されたケースも多かった。
再放送は?
基本的に独立局で再放送された事実があるアニメに対して「UHFアニメ」という呼称を使うことは無い。
格差解消へ
先述のとおり「UHFアニメ」と言えば地方民にとっての絶望の象徴であった。AT-Xという有料放送の登場で地方での視聴方法は確立されたが、タダで見られる都心とは依然格差があった。
2005年頃からニコニコ動画などでUHFアニメの違法アップロードが流行り始め、UHFアニメは全国的に普及したが、当然正規の方法では無かった。
しかし、2008年頃より無料衛星放送のBS11がUHFアニメを積極的に放送開始。これは都心の放送とほぼ同じ日時で放送するとあって、地方民の希望となった。
それに加えて2010年以降、深夜アニメが「公式」にインターネット配信されるようになる。これ以降アニメのネット配信の規模は広がっていき、2020年代現在ではネットで見れない新作アニメは皆無といってもよい状態まで進んだ。
作品の傾向
独立局は総じて大手局より規制が弱いのでエログロナンセンスがやりやすいという点もあり、キー局・準キー局系製作のアニメよりもジャンルが多様。
特にエロゲを原作とした物は独立局に流れる傾向が強かったが2010年代以降はエロゲ原作のアニメは徐々に減り(2012年度は実質0本)、なろう系などのネット小説やスマホゲー原作に移行した。
製作にテレビ局が関わっていない場合は過激表現が使いやすいとされる。(テレビ局が出資しているアニメで過激表現は社会的にマズいとされるので)
2000年代前半頃まではキー局系(いわばVHF系?)のアニメに対して予算の厳しさが作画等に現れやすい面があった。
視聴方法
概要にある通り、独立局でしか放送しないため、基本的に地方民はテレビで見ることが出来ない。
東京に住んでいても、京阪神系の独立局で放送されると視聴することが出来ない。
このため、「UHFアニメ」と言えば2000年代頃の地方のアニメファンにとっては処刑宣告にも等しい言葉で、系列局のアニメすら滅多にやらないのに独立局となれば絶望的である。番宣ネットが組まれる事が唯一の頼りであった。
地方のファンは円盤を買うかレンタル解禁を待つか、AT-X契約か、オタク仲間にビデオを頼むぐらいしか視聴方法がなかった。インターネットが普及していなかった時代ではオタクを自認する層でも都心でしか放送されないUHFアニメの存在を知らないことが多かった。
では、なぜハルヒあたりが全国的社会現象になったのかというと……例のあれのおかげである。こうして正規に見る方法が乏しい状況がBS11登場あたりまで続いた。
時間帯
基本的に午前1時や2時台の深夜帯に放送されることが多いが、系列局の縛りがない独立局では午後10時台や午後11時台での放送を積極的に行っている。特に独立局にとっては特定の視聴者層のハートをキャッチできる有効なコンテンツとして認識されており、比較的夜の早い時間帯に放送している作品もある。ただ、「らいむいろ戦奇譚」や「最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。」ではそれが結果として仇となった。
地上波
関東圏はTOKYO MX、中京圏はテレビ愛知、関西では毎日放送とサンテレビがメインとなって放送している。関西においてはサンテレビが阪神タイガース戦完全中継を行っているため放送時間が不安定になることが多い。
しかし、毎期いくつかの作品は北海道や福岡県(前者ではテレビ北海道か北海道放送、後者はRKB毎日放送かTVQ九州放送が多い)などでも放送されるほか、作品に登場する舞台となった場所であればその地域の放送局が放送することがある。
特に「たまゆらもあぐれっしぶ」と「Free!Eternal Summer」は、舞台となった地域があるために地域限定ながらNHK総合で放送されている(前者は広島放送局、後者は鳥取放送局。しかもいずれも前シリーズもついでに放送された)。さらに、富山県南砺市に本社を置くP.A.Works制作のアニメは富山県の民放テレビ局(北日本放送、富山テレビ、チューリップテレビ)で放送されることが多く、Cygames作品の放送は大都市圏の放送局のほかに佐賀県の民放テレビ局のサガテレビで放送されることが多い。
BS放送
深夜アニメの地域格差を少しでも埋めるため無料BS放送局であるBS11が積極的に放送している。
2014年以降、独立局とBS11やBSフジなどの民放BS局との組み合わせで「関東・関西・中京では独立局の地上波、それ以外の地方はBS」といった棲み分けが行われ、独立局とBS局で同時ネット、もしくは複数の独立局で同時ネットされるケースも増えている。
ネット配信
ブロードバンド環境を使ったインターネット配信も積極的に行われているが、アニメ放送に限らず日本社会全体がインターネットの活用やデジタル化に積極的ではなかったため、その確立は遅かった。ようやく2010年代後半になり、Netflix、Amazonプライムビデオ、dアニメストアを筆頭にした各種配信サービスが一般的になってくる。
特にアニメを専門に扱ったdアニメストアはおよそ43000話以上が定額視聴可能と名前に恥じない充実度合いであり、古い名作から多くの最新アニメまで日本中何処に居てもPC・スマホから鑑賞できるようになった。
これら配信サービスは月額数百円程度で契約できるものもあり、地方民の希望の星となっている。
相変わらず地方の地上波アニメは悲惨な状況のままだが、配信サービスを利用することで概ねカバーができるようになってきたため視聴者は拡大中である。
ご多聞に漏れず、地方局の経営状況は年々苦しくなり、全日アニメにもかかわらず深夜に放送したり、「番宣ネットよりもテレビショッピングの方が金になる」と言う地方局の本音とも取れる言葉等から、地方局では番宣ネットは年々組まれなくなる傾向にあり、ますます動画サイトの配信頼りが強くなっている。
補足
独立UHF放送局について
独立UHF放送局とは民放5系列に属さないUHF放送局のことでTOKYO MXやサンテレビなどが当てはまる。
首都圏ではVHFアンテナがあれば事足りるため地デジ化までUHFアンテナが無い家庭というのが結構あった。