アポロンとは、ギリシャ神話に登場する神の一柱である。「アポロ」とも。
概要
のちに太陽神ヘリオスの神格を吸収して、太陽の神となる。
ゼウスとレトの子で、女神アルテミスの双子の兄(弟)とされる。
予言の神としての側面も持ち、デルフォイ(デルポイ)の神殿で巫女たちを通して下したという神託は有名。この予言の権能もアポロンが元来備えていたものではなく、ピュトンを倒しデルフォイの守護神の立場を奪った際に身に付けたものとされる。自らの予言の力を人間に分け与えることもできる。
しかし後述のエピソードから分かるように、自身の恋の行方については全く予知できない。
また詩歌を愛する吟遊詩人とされ、ギリシア青年の精神を代表する神とされる。
しかし出生は遊牧民系とギリシャ系とは異なる。ギリシャに入ってから人民と共に成長していったと言われる。
息子には様々な神がおり、また親父からもらった竪琴で二代目吟遊詩人となったオルフェウス(オルペウス)もアポロンの息子である。
特に恋愛関係に関しては、父親の血をまともに継いだせいなのか、そこらじゅうで恋愛をめぐる揉め事を起こしている。また自身が関係ないことでも恋人を失うこともある。
何れにせよ自分本位な考えが多いためそうなることもある。まさに残念なイケメンの古典的な例である。
ゼウスは目を留めた女性をほぼ百発百中でモノにしている(しかも、ことごとく子供を生ませている)のに対して、アポロンは失恋するほうが圧倒的に多い。ヘラという正妻を持つゼウスが、他の女性とは誑かそうが力ずくであろうが一度でも楽しめればよしという姿勢で臨んでいるのに対して、独身の青年神であるアポロンはステディな恋人としての関係を求めていることが一因かもしれない。永遠の青年神という立場上、恋が実って妻帯者となることはイメージに合わないと考えられた結果かもしれない。
以下はその例である。
ダプネストーキング事件
河の神ペネイオスの娘、ダプネを追いまわした事件。
事の発端は、彼の母神レアを苦しめる大蛇ピュトンを倒した帰りに、偶然会った愛の神エロスに対して小さな弓と小馬鹿したことだった。
仮に自分の先輩格、しかも年上の神に向かってこの無礼である。(エロスは美の女神アフロディーテの息子(養子)で10歳児くらいの姿をしているが、精神だけの状態でガイア=地球誕生以前から存在しており、一旦アフロディーテの腹に収まって出てくることで肉体を得た)
当然怒ったエロスは、アポロンに一目惚れを引き起こす「金の矢」を放ち、さら近くにいたダプネに最初に見た人間を嫌うようになる「鉛の矢」を放つ。
アポロンはダプネに一目惚れして告白するが、ダプネはアポロンを固く拒絶。結果、アポロンはひたすらダプネを追い回し続け、ダプネも必死に逃げる羽目になる。
そして河辺の近くでとうとうダプネの体力は尽き、ダプネの悲痛な叫びを聞いたペネイオスは彼女を月桂樹に変えてしまう。
恋が実ることなく終わったアポロンは、ダプネだった月桂樹から月桂冠を作って自分の持物として身につけているのだという。
エロスのほうが悪いように思うが、元を糺せば完全に大伯父に敬意を払わなかったアポロンが悪い。
コロニス誤殺事件
アポロンはまた、テッサリア領主の娘コロニスとも恋仲になった。しかし、アポロンの伝令役を務めていた白い烏が、コロニスが別の男と付き合ってると報告した為、憤激したアポロンはテッサリアへと飛び、間男と思しき影に必殺の矢を打ち込んだ。
ところがそれは間男ではなくコロニスで、彼女はアポロンの子を身ごもっている事を告げた後に亡くなった。さすがのアポロンも激しく後悔し、コロニスの子を救い出した後に、ケンタウロスの賢人として名高いケイローンに養育を依頼した。この子供が後にへびつかい座として名を馳せる名医アスクレピオスである。
そしてアポロンは、己の迂闊ぶりを棚に上げて、嘘の報告をした白い烏を黒く染めた上に、言葉を取り上げて「カーカー」としか鳴けない様にした。別の伝承では、この烏は後にアポロンによって天に張り付けられてからす座となるが、その隣にコップ座を配置され、眼前に水があるのに飲めないようにされたという。
カサンドラ能力開発事件
トロイアの王女で予言の巫女であったカサンドラに恋をしたアポロンは、彼女に「絶対当たる予知能力をあげるから、ぼくの恋人になってよ!」と迫る。
これを受け入れたカサンドラは晴れてアポロンの恋人となるが、最初に見た予知はなんと「アポロンに散々弄ばれた挙句に捨てられる自分」というものだった。
この予言を見てしまったが故に、カサンドラはアポロンに別れを告げるも、当のアポロンはキレて「予言を誰も信じない」呪いを彼女にかける。
結果、彼女の予言は「絶対に当たるが誰も信じない予言」となってしまい、その末にトロイアはトロイア戦争にて滅亡を迎える。
甘言でかどわかした揚句、自分の性癖を棚上げにしてこの仕打ちである。
オリオン謀殺事件
アポロンが一番やらかした事件。
詳細は「アルテミス」の項を参照。
そんなことしてるから、自分の恋愛もうまくいか(ry
人間の恋仇に負ける事件
アポロンはダメな神様兄弟の孫でマルペッサという美女に恋したことがあるが、イダスという人間の男性もまた彼女を愛した。いろいろあって両者が対立するのだが、まともに争えば神と人間では不公平。そこで「ここはフェアに行こうじゃないか。本人の意志を尊重して、マルペッサ自身に選んでもらおう」という裁定をゼウスが下し(自分が当事者なら絶対にこんなことはしないだろう)、両者は合意。アポロンにしてみれば「神が人間の男などに負ける気がしない」という絶対の自信があったのだろうが、マルペッサの方は冷静で、「神であるアポロン様は不老不死だから、私が年を取って容色が衰えたら、きっと見向きもされなくなるだろう」と考えた。「同じ人間であるイダスなら、一緒に年を重ねてずっと連れ添ってくれるはず」と、賢明にもイダスの方を選んだのだった。数々の恋に破れてきたアポロンだが、このように人間の男と争って負けてしまったこともあるのだ。
アザミ誕生事件
ある時アポロンはニンフのアカントスに恋をしたが、彼女は受け入れない。何度断られても執拗に言い寄るアポロンだったが、我慢ならなくなったアカントスはついに立ち向かい、爪で彼の顔を引っ掻いてしまう。
これに逆ギレしたアポロンは、彼女をその勝気な性格を象徴するような、トゲのある葉アザミに変えてしまったという。ストーカー行為をしておきながら、そのターゲットに反撃されると今度はこの仕打ちである。身勝手にも程があるとしか言いようがない。
息子達
彼の息子はディオニュソスの信者にズタズタにされたオルフェウスを除くと
世界の理を覆しかけたためハデスとゼウスに殺される(アスクレピオス)
と殆どがゼウスの手によって処罰されている。
マルペッサの例もあるがゼウスからはアレス以上(ここ重要)の問題児だったらしい。