概要
今から約5億4100万年前から4億8500年前。古生代の一番古い地質時代。名前はウェールズのラテン語名に由来する。
この時期の動物はバージェス動物群(カンブリア紀中期)が有名。他にも中国の澄江動物群(カンブリア紀前期中盤)、グリーンランドのシリウス・パセット動物群(カンブリア紀前期中盤)などが知られている。
生物相
気候は比較的温暖で、微生物以外の全ての生物のすみかは海の中に限定されていた。
多細胞生物はカンブリア紀に入る前から多くいたが、カンブリア紀直前のエディアカラ紀の動物はどれもこれもマットのような柔らかい体をしており、海水をこしとってプランクトンを捕食したり砂を這いまわって微生物を食べるような生き物ばかりだった。この時期の生物相は「エディアカラの楽園」と形容され、いわば弱肉強食も過酷な生存競争もない平和な世界だったのであるが、多様性は乏しかった。
カンブリア紀の幕開けとともに、殻などの硬組織を持った動物が急増する。これは視覚などの感覚器官と高い運動能力を備えた捕食者(三葉虫など)と、その捕食者から身を守る被捕食者が分化する食物連鎖の成立を示すものと考えられ、複雑な生態系が形成され生物相が爆発的に多様化したことが察せられる。
この動物多様性が爆発的に拡大する現象は「カンブリア爆発」として広く知られていて、現在知られているほぼ全ての動物門がこの時期から出揃ったと考えられる。当時の海では、壮大な「進化の実験」が繰り広げられていたと考えられている。
生物の特徴
カンブリア紀の動物は「奇妙奇天烈動物」とも呼ばれるほど、一見では現存する分類に収まりきらなさそうな奇妙な外見を持っていた。
これらの動物群の復元と分類も、研究が進んでいる度に大きく変わるものが多い。例えば、上下と前後共に逆とされたハルキゲニア、触手と口はそれぞれエビの尻尾とクラゲの1種と見間違いされたアノマロカリス、最初は仰向けで復元されていたオパビニア、全身が鱗片のような構造に覆われるウィワクシアなどがある。
かつては、この奇妙な動物たちは現存のものとは全く異なる体の仕組みを持ち、独自の分類に属すると考えられたが、現在はその多くが現存する動物門に属する生物であると考えられている。
例えば上記のアノマロカリスとオパビニアは、複眼、関節肢と腸の構造により原始的な節足動物と見なされ、ハルキゲニアも爪の構造が有爪動物のそれと共通し、ウィワクシアの口には軟体動物として基本である歯舌を持つ。他にもピカイアやミロクンミンギアなどの脊索動物に属するものがある(脊椎動物はまだ登場していない)。
一方で、比較的に馴染みの姿を持ち、明らかに現存する動物門・綱であると容易に理解できるものもある。刺胞動物門に属するクラゲや、軟体動物に属する二枚貝、巻貝などである。化石節足動物に属する三葉虫も、この時期から出現し始めるものである。