プロフィール
概説
十大魔王の一角を担う、600年前に魔王の席に加わった新参者の魔人。
大陸の東端にある「傀儡国ジスターヴ」の国主。
リムル=テンペストがジュラの大森林で勢力を拡大し続けていることを知り、その勢いを懸念して権謀術数によって排除すべくリムルと対立することになる。
白い紳士服を愛好する紳士的な出で立ちの優男。
言葉遣いも丁寧だが態度はおよそ慇懃無礼で内心で、誰に対しても自分の優秀さを鼻にかけて見下した反応を示している。
その自信にあふれた心に違わず、一塊の魔人とは一線を画す魔力を有している。しかしまだ「魔王種」の段階であり、「覚醒魔王」には至っていない。
『転スラ』における序盤のボスキャラであり、リムルが魔物から魔王に進化するきっかけを生んだ張本人でもある。
人物
その見た目に違わず、常に紳士的な態度を崩さない優男。
だが本質は基本的に誰もを見下して信用しない傲慢な冷血漢。
また他者が自分の掌の上で踊らされている様を見てほくそ笑む卑劣な策士であり、自分の手を煩わせず相手が罠にはまって自滅していくことを好む。
自由連盟の最大勢力「中庸道化連」と太いパイプを持っており、彼らにだけは普段の冷血で高慢な態度を軟化させ、自らケーキを焼いて持て成すという普段の卑劣さからは窺えないほど親しげに接する。
紳士的な見た目通り、調度品や貴族趣味を愛好し、ティータイムを催すなど文化的な一面も持つ。
いずれはすべての魔王を凌駕し、支配しようと企む深い野心を隠している。
しかし自身の才脳に溺れるあまり致命的に抜けているところがあり、特に他者を見下す精神性ゆえに相手の本質を鑑定する「眼」が曇っているせいで、のちに致命的な失態を犯してしまう。
能力
呪術の達者で、特に洗脳と人心掌握に長けている。
特にユニークスキル「操演者」を使い、相手の心臓に呪印を刻んで忠誠を誓わせることで他者を自らの操り人形に変えてしまう。
この能力に絶対的な自信を持っており、禁呪法「デモン・マリオネット」を掛けたアクセサリーでミリムを手中に収めた時には有頂天になっていた。アニメでは呪法に成功した瞬間、ミリムが反撃してこないのをいいことにフレイが忠告するまでサンドバッグにした。
また相手の心臓を抜き取って生殺与奪の権利を握るなど、狡猾な手段にも長じている。
一方で荒事には向いておらず、どんなダメージでも瞬時に回復させる「超再生能力」こそ持っているものの、腕っぷし自体は大したものではない。
本来の戦闘形態は、仮面を被って背中に6本の義手を生やした鎧と、それぞれが持つ武器を自在に操る。
活躍
自身の子飼いの魔人だったゲルミュッドの計画した「豚頭帝(オークロード)」によるジュラの大森林襲撃を観察し、ゲルミュッドを食らってさらに狂暴化した「豚頭魔王(オークディザスター)」を撃破したリムルたち魔国連邦の存在が自身の目的の障害になることを懸念。
同時に彼らを利用し、自らが覚醒魔王になる手段を講じていく。
まず中庸道化連を獣王国ユーラザニアの使者に接触させ、魔国連邦でゴブタに一蹴されて怒り心頭だったフォビオを誘惑し、カリュブディスの封印を解かせて魔国連邦を壊滅させようと目論む。
また同様の件で魔王フレイの弱みを握り、実質的に彼女を手駒に加えることに成功する。
だが客人として魔国連邦に出入りしていた魔王ミリム・ナーヴァによりカリュブディスは撃破され、さらに埋伏計として仕込んだフォビオの犠牲によるユーラザニアとの衝突も、ミリムがリムルから「手加減」を教わったおかげでフォビオも救出されてしまい、カリュブディスでの魔国連邦壊滅は失敗に終わる。
続いて「五本指」と呼ばれる幹部の一人ミュウランを魔国へ向かわせ、ヨウム警備隊と接触させて彼らに取り入らせて、魔国でのスパイ活動を行わせる。
一方でファルムス王国の魔国襲撃を察知し、襲撃に合わせてミュウランに「結界」を展開させ、魔国の魔物たちの魔力を封じ、その魂を結界に閉じ込めておく役割も命じた。
ほどなくして魔国連邦と、ファルムス王国・西方聖教会の連合軍2万が激突するも、エレンから魔道王朝サリオンの伝承を聞いて「覚醒魔王」へ至って死んだ仲間たちを蘇生させる道を知ったリムルにより、あっという間に連合軍が全滅させられてしまう。
この時に出るであろう人間側の犠牲を簒奪し、自ら覚醒魔王になる算段だったクレイマンだが、あまりにあっけない幕切れに介入する間もなく計画は頓挫してしまう。
そしてリムルもクレイマンの存在をミュウランから知らされ、クレイマンの打倒を目指し始める。
しかし同時進行で魔王ミリムの精神を「操演者」で掌握することに成功し、ミリムに獣王国ユーラザニアへ侵攻させて首都を壊滅。さらに国主である魔王カリオンを行方不明にすることに成功する。
ただしミリムがわざわざ宣戦布告と1週間の猶予を与えたせいで国民は魔国連邦に逃れ、本来得るはずだったユーラザニアの民の魂を取り逃してしまう。
ことごとくリムルにより自身の覚醒計画を阻まれ続けたが、今度はリムルが魔王を名乗ったことを利用して「魔王達の宴(ワルプルギス)」を開催し、宴の席でリムルを一連の騒動の主犯として吊るし上げ、自滅に追い込む作戦に切り替える。
すべては「ある目的」のために――
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顛末
「魔王達の宴」の開催に成功し、リムルを宴の席で「魔王の座を狙って一連の騒動を扇動した大罪人」「自身の幹部ミュウランを殺害した」として告発する。
さらに裏でミリムの自領である「忘れられた竜の都」民を脅してユーラザニア征服に協力させ、2体目のカリュブディスも伏兵として用意し、ユーラザニアの壊滅と残る国民の虐殺による覚醒魔王化の贄の回収を目論んだ。
しかし一から十まで裏を取ってクレイマンのやり口を調べ尽くしておいたリムルに、発言の矛盾点を列挙された上にミュウランの生存を告げられ、墓穴を掘ってしまう。裏で進攻させた軍団も、魔国獣王国連合軍の智略で壊滅、隠し玉のカリュブディス2体もリムルの覚醒で格が上がったベニマルが黒獄炎で瞬殺、トドメにジスターヴへ進攻したシュナに守護者であるアンデッドたちが心服して寝返る事態に。
さらにリムルは連合軍とジスターヴ軍の交戦記録を参加者に投影魔法で提示し、「捕食者」で円卓を破壊しながら「誰であろうと自分の国と仲間を傷付ける者は容赦しない」と宣言し、クレイマンが洗脳魔法で自分をコソコソと操ろうと策を弄していることを看破する。
こうして一連の動向を見守っていたギィ・クリムゾンの鶴の一声により、「力こそ正義」として従者を含む各陣営3名での直接対決に持ち込まれ、当初の計画は御破算となってしまう。目論見が外れたことでクレイマンは開き直り、ミリムに加えて配下の九頭獣(ナインヘッドと読み、後の迷宮十傑クマラ)、人形兵のビオーラをけしかけ、ついに戦闘に突入した。
最初はミリムを手駒に加えていたことで、自身の絶対有利を疑わずシオンを相手取る。
しかしクレイマン自身はシオンの予想以上の実力に劣勢となり、ミリムは突然ヴェルドラが乱入したことで標的をリムルから彼に切り替えてしまい、ランガと戦っていた九頭獣は呪詛による契約をリムルに解除されて離脱、ビオーラもギィの許可が下りて参戦したベレッタの手でスクラップに変えられてしまった。
追い詰められ戦闘形態に移行してもリムルには太刀打ち出来ず、それでもリムルの示す証拠を悉く否定し、意地汚く弁明と反撃に執着するが、このタイミングでミリムがあっさりと離反し、さらにカリオンもフレイの従者の振りをやめて正体を現し、フレイも最初からミリムと共犯だったことをバラして孤立無縁に陥る。
実はミリムは今回の騒動の黒幕を炙り出すためにクレイマンの傀儡になったフリをしていたに過ぎず、クレイマンの「操演者」自体が通用していなかったことが発覚。
そもそもとして、クレイマンはアルティメットスキルを持つ者にユニークスキルでの催眠・洗脳等の精神干渉は通用しないという原則自体を知らなかった。自身の頭脳を妄信するが故の不勉強がもろに祟ってしまう結果となった。
そのままリムルに殴られてノックアウトされるが、土壇場でこれまで貯蓄した魂を使って「魔王覚醒(ハーベストフェスティバル)」を成功させて反撃に出る。
だがリムルとの実力差を埋めることは叶わず、今までの鬱憤を爆発させたリムルによってボロボロにされ、すべての目的を洗いざらい白状させられる。最後の手段として死を偽装して逃走を試みようとしたが、既に偽装のカラクリすらもリムルにはバレており、その上で復活は不可能だと告げられついにチェックメイト。
そして今まで散々に他人を利用して破滅させ続けたツケが回り、最期は心身ともにボロボロの状態でリムルの「暴食之王(ベルゼビュート)」によって捕食されて消滅した。
クレイマンの目的
クレイマンの真の目的は「魔王カザリームの復活」であった。
クレイマンも元は中庸道化連の一員であり、「喜狂のクレイマン」と呼ばれる道化師としてカザリームに忠誠を誓って活動していた。
ところがカザリームが魔王レオン・クロムウェルの存在を疎んで衝突した結果、レオンに敗北して肉体を失ってしまう。
その後、消滅の危機を迎えたカザリームだったが、異世界人の青年に憑依させてもらうことで一命をとりとめ、その青年からカザリーム復活の方法として「魔王を目指す」道を示される。
以後、カザリーム復活のために魔王の地位を目指し、傀儡国ジスターヴを根城に勢力を拡大し続けて「覚醒魔王」への道を模索し続けていた。
その一環で人間の奴隷5000人ほどを買い取り、彼らを虐殺するという非道な行為にも手を染めている。
しかしこれも魔王カザリームによる暗示であり、彼の存在意義はカザリームの復活用の代用ボディとして成長させられていたにすぎす、結局目的が達成されたとしてもクレイマンが生き残る道は皆無でしかなかった。
附録:「魔王達の宴」までのクレイマンの生存率
蛇足になるが、実際クレイマンは「魔王達の宴」時点でかなりの死亡フラグを乱立させている。
具体的には――
- 危険因子であるリムルを即刻始末せず、カリュブディスやファルムス王国の襲撃頼みの計画で悠長に構える。
- 結果、カリュブディスはミリムが魔国連邦に遊びに出たことを計算に入れ損ねて失敗。さらにミリムがリムルと友誼を交わし、リムルに肩入れするきっかけを与えてしまう。
- ファルムス王国と西方教会の連合軍は、功を焦ってクレイマンの予想より早く魔国連邦を襲撃。そのせいでクレイマンが介入をする前にリムルの覚醒魔王化を許してしまう。
- ミリムをただの脳筋と侮る。
- 彼女が最古の魔王の一角である所以を吟味せず、手駒に利用できると慢心。
- そのうえ、覚醒魔王が持つ究極技能の存在を熟知しておらず、能力に溺れてミリムの演技を見抜けず致命的な陥穽を作ってしまう。
- 同様にリムルのことも最期まで「ただのスライム」と格下扱いし続けており、リムルが流した「ヴェルドラの復活と乱入による連合軍の壊滅」という偽情報をまったく精査せずに信じ込むという大チョンボをやらかし、挙げ句は「ヴェルドラの威を借る下賤な魔物」と益々格下と認識して侮っている。
- さらに「魔王達の宴」で参加時にミリムに罵声を浴びせて横顔を張り倒す。
- 実はこの時点である魔王の逆鱗に触れており、よしんば宴をうまく切り抜けられたとしても、後日その魔王から報復があってもおかしくない状況だった。
- また十大魔王でもミリムは特に別格の位置にあるため、下手を打つとさらに敵を増やす危険さえあった。
- そもそも魔王達の政治的な駆け引きの方針を理解していなかった。
- ぶっちゃけてしまえば、ギィを筆頭に「問題は当事者間の意思」「自分の正義は自分で推し通せ」が魔王達の問題解決の基本方針であり、クレイマンが目論んだように損得勘定や打算で義憤を装うようなものは誰もいない。
- そのためいくらクレイマンがリムルの非を大仰に訴えたところで、リムルに反論の余地を与えて会議がごたついた時点で、「面倒だから喧嘩で始末を付けろ」という流れは避けられなかった。
- 固有能力「操演者」の利便性と自身の知性に驕ってしまっていた。
――等々
分かりやすいものだけ列挙してみたが、よくもまあ、これだけフラグを建築して見せたものである……。
特にいくつかは、能力に驕らずしっかりと精査していればリムルでも対処に苦慮するはずだったフラグ見られる。
もしクレイマンに勝機があったとすれば、豚頭魔王を倒した直後の魔国連邦へ惜しまず戦力を割くべきだっただろう。だが「ジュラの大森林」という政治的に複雑な位置にある中立地帯を大々的に攻めること自体、かなりのリスクを伴うことだとを考えると、これもクレイマンとしては避けたかったという観点もある。
いずれにせよ、敵の本当の実力をしっかりと精査する慎重さ、諫言を上奏する配下、それを信用できる寛容さを持たなかったことが、クレイマンにとって最大の敗因だったのは確かと思われる。