プロフィール
概説
ヨウムの警備隊の前に現れた美しい女魔導師。
ヨウムが魔国連邦と協力関係にあると聞き、自分も警備隊に加えてほしいと志願。
既に部隊に魔法使いがいたことであしらわれたが、ヨウムの腕試しを基本的な地属性と風属性の魔術だけで完封し見事に勝利。女だからとて只者ではないのを認めさせて警備隊の参謀として快く迎え入れられた。
魔国連邦に入ってからは、リムルから接近戦闘に偏っている魔国連邦の戦力陣営のために「術理戦」の手解きを頼まれ、客人兼指南者として迎えられた。
しかし、彼女には別の顔と使命があり――
人物
冷たく麗しい容貌を備えた知的な美女。
長い髪を後ろで一つ結びにまとめており、額にフェロニエール(額飾り)を装着している。
知的で冷淡だが、根は善良で常識的。
一方でどこか影を感じさせるものがあり、魔国連邦に出入りするようになってからは魔国の人々からの善意と歓待を面喰いつつ楽しむ一方で、挙動に不審な点が見られる。
ヨウムの明るく前向きな姿勢に徐々に感化され、次第に彼に対して淡い想いを募らせるようになっていく。
そのヨウムからも好意を向けられていて、獣王国からの使者であるグルーシスには最初は腕っぷしで戦わない魔術師に負けやしないと見くびられていたが勝利した事で見直され同じく惚れられる。
しかしその気持ちが強まるたびに、彼女の憂いは深くなっていく……。
正体
十大魔王の一人クレイマンによって放たれた幹部の一人で魔国連邦へのスパイ。
ヨウムたちに取り入ったのも、魔国連邦に疑われることなく侵入し、その内情を調査するためだった。
クレイマンとは心臓を通じて、通信魔術でのテレパシーでコミュニケーションをとることができる。
本来の種族は「魔人」であり、既に数百年の時を生きている。
元は森に棲んでいた魔女だったが人間に迫害され師匠を殺されてしまい、なんとか逃げ延びて、師匠の「自分達の魔法はいつか誰かの役に立つためにある」という言葉を支えに数百年魔法の研究だけのために生きてきた。
寿命が近づくとクレイマンが尋ねてきて、老いのない肉体を与えるという甘言に騙され彼に従う魔人にされた。
クレイマンによる秘術「支配の心臓(マリオネット・ハート)」で本来の心臓を人質にとられ、生殺与奪の権利を握られて彼の手駒として使役される運命となった。
元の心臓の代わりにクレイマンから疑似心臓を埋め込まれ、奪われた心臓はクレイマンが専用の入れ物で保管している。のちにこの疑似心臓には、ミュウランも知らなかった盗聴機能が付属していたことが発覚する。
迫害の過去と長らく魔女として隠遁してたためか、実は人付き合いが苦手。
スピンオフ作品『転スラ日記』では、事前に冒険者としての登録をする際も非常にしどろもどろになっており、完了後ヨウム警備隊と接触する際に「クレイマン様よりはマシ」と必死に自己暗示をかけて平静を装っていた。
クレイマンには表向き従順に傅いているものの、内心では他人の心臓を握って優越感に浸るその姿に相当にストレスをため込んでいた。
先の自己暗示を見るに、クレイマンからブラックな扱いを受けていた様子。
そんな生活で唯一の安らぎがテレパシーを返してくれる薬草の育成だったのだが上述の冒険者としての成果を得ようとした中、薬草採取の依頼があったため、罪悪感を感じながらも手放す破目になってしまっている(薬草達は許してくれたようだが)。
クレイマンから五本指という自陣営の幹部として「薬指のミュウラン」の称号を与えられるが、技術を盗み取られていた事もあり平然と「捨て駒」呼ばわりもされていた。
魔人としての姿は、額に第三の目が現れ、右眼は白目が黒くなって瞳が金色に変わり、耳や手足に羽毛が生え、額の右側と左頬に刺青状の文様が浮かぶというもの。
能力
魔女として魔術の研鑽と探求に明け暮れた、研究熱心な魔導師。
魔術においては、登場当時においてパワーゲーム一辺倒だった「転スラ」キャラクターでも珍しい術戦特化型(一応リムルも術理戦は可能だが、規格外な魔力量を利用した威力重視のパワーゲームに終始しがち)で、初歩的な地属性魔術で相手の足元に落とし穴を形成し、風属性魔術で標的周囲の酸素濃度を下げて酸欠に追い込むなど、省エネで最大の戦果を挙げることができる。
本気を出せば街一つを結界で覆い、結界内外への出入りと魔術発動の阻害も可能にする。
こうした手数と練度への自信が強いので腕っぷしや武器だけで押し通せると豪語する者や魔法使いをせこい手立ばかりを使う奴と見下してくる者にはその過信に呆れや反感を覚える。
活躍
ジュラの大森林に新たに誕生した勢力である魔人の一行(リムル達)の実態の調査をクレイマンより命じられて魔国連邦を密かに監視し続けていた(同じく調査しに訪れた勢いで街に住み着いたミリムには早々に気づかれていたがリムル達をどうするかは早い者勝ちと魔王間で事前に決められていたため幸い危害は加えられなかった。この事についてクレイマンは見つかった事への失態を咎めた意味もあるが「ミリムが惨殺してくれれば処分する手間が省けたのに」とミュウラン本人の前で言っている)。
しばらくして密命を受け、ヨウム警備隊に入隊するかたちで魔国連邦に侵入。
クレイマンからは――
- 魔国連邦の内情偵察
- リムルとの接触
- ファルムス王国の進軍に合わせ、戦場となった魔国の首都リムルに封鎖結界を展開
の3つの指令を与えられていた。
最初は魔国の在り方に不安を抱いていたが、住民達の善性に戸惑いを覚え、同時にヨウムたちとの触れ合いから徐々に「人と触れ合う喜び」に目覚めていく(この世界の人や魔物が皆魔国の住民達ようであれば師匠が殺されることなく共に生きられたかもしれないと内心で思うようになる)。
しかし魔国が人間達と友好関係を築きつつあった状況を目ざわりと考えていた西方聖教会とファルムス王国が、リムルが国を留守にしていたの利用して予定より早く魔国襲撃を決行し、良心の呵責に苛まれながらも「自分に逆らうならヨウムも殺す」と脅してきたクレイマンに押し切られるかたちで使命を全うする。
結果、首都リムルは外部との通信ができなくなるものと、西方聖教会が仕掛けた魔物のエネルギーである魔素濃度を低下させるものの二つの結界により、魔物達は弱体化した上援軍要請が不能となり、大勢の住民が虐殺されることとなってしまった。
その後、ヨウムとグルーシスが引き止めるのを振り切り、事態を知って戻ってきたリムルの前で正体と自分のしたことを告白。
結界で魔国の外部との通信が阻害されていることを利用し、贖罪とクレイマンへの最後の抵抗として、そのまま処刑されるつもりでいた。
しばらく身柄を軟禁されたあと、擬似心臓を通して盗聴していたクレイマンに「ミュウランは死んだ」と錯覚させるために処刑のような形でリムルに疑似心臓を破壊され一瞬死んだあと瞬時に新たな疑似心臓を与えられ、クレイマンの呪縛から解放してもらう。
この時初めてクレイマンが埋め込んだ擬似心臓に盗聴機能があったことをリムルから伝えられて知った。
自由の身になった後、罪滅ぼしの一環で、死んだ魔物たちの魂が拡散せず結界内に留まっているよう、シュナと協力して新たな封鎖結界を形成し、国民復活のために力を貸した。
そしてリムルが覚醒魔王へと進化、休眠状態となっていたリムルの代行者が結界ごと魂と魔素を吸収、それを魔物達の肉体に戻して蘇生させるという本来自我を持たないはずの存在が主人の意思がない状態で自律行動を取り、それも主人だった魔王ですら到底できないであろう膨大な力と非常に高度な技術を要する秘術を施すという規格外といえる一連の流れの一部始終をグルーシスと共に目撃した。
戦後処理として、ヨウムをファルムス王国の新国王にすることが決まると、それに応じて「人間の一生分の時間くらいなら、もう少し束縛されてもいい」と告げてヨウムの好意を受け入れて彼と夫婦になった(グルーシスもヨウムが死んだ後にミュウランが回ってくるのを待つという口実の元、二人を助けていく道を選んでいる)。
ファルムス王国はファルメナス王国と名を改め、新しい国の初代王妃となり、ミュウ・ファルメナスと改名。
しばらくのちに、ヨウムとの間に第一子となる王女ミームを儲けた。尚、元は荒くれ者だったため気品のある言動に不慣れなヨウムとは違い、貴族のような暮らしをするクレイマンの元で学んでいたため上流階級としての振舞いに支障はない。
一方のクレイマンは、ミュウランの心臓が灰になったことと疑似心臓を壊される直前の会話から処刑され死んだものと誤解(上述の通り盗聴機能を見抜いたリムルは、クレイマンが追っ手を向かわせないよう本当に殺すような演技をしていた)。「魔王達の宴(ワルプルギス)」でリムルと話すまでミュウランが存命であると知らず、彼女の死をも利用して被害者としてリムルの処断をほかの魔王に訴える肚積もりだった。
しかしいざ宴が始まると、リムルからあっさりとミュウランの生存を告げられたうえ、ギィ・クリムゾンの「力こそ正義」という方針でリムル・ランガ・シオンと直接対決に持ち込まれて当初の目論見が御破算となってしまい、最終的にリムルの手で敗死、魔王の座を奪い取られる形となった(これによりクレイマンの追っ手がミュウランに及ばなくなったのは言うまでもないだろう)。
クレイマンrevenge
クレイマンが主役のスピンオフ漫画『クレイマンrevenge』にも当然登場。
しかし、クレイマンとの関係は元の歴史とは全く異なる道を歩む事となる。
初登場時は死に戻り(タイムリープ)したクレイマンから労いの言葉を掛けられ、それまでのブラックっぷりとは一転として突如ホワイト上司に変わったクレイマンに動揺していた。
軍団の修行を命じた際は、「人見知りを直すため」として同僚の小指のピローネと共に旅行(女子会)に出て、他の五本指や部下の行動と共にクレイマンを悩ませる事となる。
その後は3年も旅行していたようで、その先の温泉で偶然にも魔王ミリムと対面、クレイマンと部下たちが修行している事を伝え、彼女がクレイマンの元へ定期的に訪れるきっかけを作る(もう一つのきっかけは滝行をしていたヤムザの話)。
そして9話にて表向きは「忠誠は強制するものではないと気付いたから」、本心ではいずれ自分の元から去るはずだから好きにさせるとして、クレイマンから心臓を返却される。
クレイマンはミュウランが去って行くものだと考えていたが、同作でのクレイマンのミュウランに対するホワイトな対応が実り、「クレイマン様を誤解していた」と考えを改めて、裏切るどころか本心でクレイマンに忠誠を誓う忠臣となった。
またこれ以降、クレイマンが信頼できる君主となったためか自らに自信が付いたようで人見知りも無くなり、逆に毅然とした振舞いが目立つようになる。
同話後半では、修行のはずがくつろいでいるレインやアダルマン、意味があるか怪しい滝行に励み続けるヤムザに対して「クレイマン様がお優しいからと甘えるのはいい加減にしなさい!!」と魔人姿になって激怒するという転スラ本編ではありえない発言も飛び出す事となった。また、この一件でミュウランは普段温厚な分(クレイマンは怒ったのそれまで見た事が無かった模様)、怒らすと恐ろしく怖いことが判明した。
クレイマンの忠臣となった為に、彼を本心では馬鹿にしているレインの事は彼女の本性を見抜いた上で警戒しており、オービックの戦い終息後に魔王カリオンたちが来て何故クレイマンたちが遠征したのが質した際はこの発端であるレインに睨みを利かせて弁解させたりもしたが、10話でのレインと模擬戦で彼女が相当な実力と知って12話ではお互いに呼び捨てで話すよう約束するなど、一目置いている関係でもある。
ちなみに単行本3巻掲載の11話のオマケイラストによるとかなりの酒豪のようで、嬉しそうに大量の麦酒(エール)を飲み干していた。