あんちゃーん、概要じゃ!!
戦中から戦後にかけて
原爆投下前は広島市水主町(現広島市中区加古町)に父母と共に住んでいたが、原爆投下で天涯孤独となった少年。家で作業をしていた父は木に刺さって即死し、足を怪我した母は彼を殴って石を投げるなどして逃がして死んだため、トラウマになっている。その後、ムスビはじめ仲間達と出会って食料を探し、生き延びていた。
ある日、昼食中だった中岡元と母の隙をついて米を奪った隆太は、仲間の子供達と米を分け合って食べたり、炊き出しの握り飯を受け取っていた時にゲンと遭遇し、弟の進次だと勘違いして追って来た彼をぶん殴る。その後、餓えて江波地区で盗みを働いて捕まった際にバイトの報酬を全額支払ってまで自分を助けてくれたゲンの優しさに感銘を受けて改心し、彼を「あんちゃん」、母の君江を「おばちゃん」と呼んで仲良く暮らす。
疎開先や予科練から帰還した元の兄達と仲良くなったり、林のばあさんと孫を懲らしめるなどしていた隆太は、ゲンを利用して半殺しにしたヤクザとその兄貴分をピストルで撃ち殺して行方をくらます。その際に岡内組のヤクザ者である政に匿われて手先となっていた矢先にゲンと再会し、家族ぐるみの付き合いを始める。だが、彼の更生を快く思わないヤクザの追撃や君江の原爆症を治すために賭場荒らしをして少年院(後に脱走)に送られるなど波乱も多かった。
後半の活躍と旅立ち
少年院から脱走した隆太はお父ちゃんと慕う小説家にして元記者の平山松吉老人が書き残した小説を出版して米兵に捕まったり、母のように思っていた君江を京都旅行に連れて行くも彼女を看取る羽目になるなど苦汁をなめる。その後、孤児仲間でガールフレンドの勝子とゲンの知人大原夏江が縫った洋服を売りさばいて生計を立てていたが、原爆症で夏江やゲンの彼女だった光子が死んだりと悲報が続いた上に相棒のムスビまで失う。
激怒した隆太はムスビを薬物中毒にして殺したヤクザとその組長や仲間を殺し、バーのホステスを半殺しにして仇を討つ。警察に出頭すると言う彼に勝子は愛していることを改めて打ち明け、「戦争の犠牲にされたお前が捕まり、責任者である天皇や大臣らが罰されないのは不公平だ」と憤慨して隆太に逃避行を進める。結果、隆太はゲンと別れて勝子と共にトラックの荷台に乗り込み、東京へ行くのであった。
これがわしと出会った人々じゃ
家族、仲間など
- 父と母:名前は不明。家族で仲良く過ごしていた所に原爆を投下され、父は木に突き刺さって即死。母は足がちぎれて動けなくなったので「しっかりするんじゃ。お前だけでも生きなさい」と隆太を叩き、石をぶつけて追い払って自らは焼け死んだ。隆太は兵隊さんが火葬にしたガイコツを拾って両親の代わりにするなど寂しがっていた。
- 中岡家の人々:兄貴分である中岡元(ゲン)と、その母君江、ゲンの兄である浩二と昭、妹で赤ちゃんの友子。ゲンは家の下敷きになった弟の進次と隆太を間違えて殴られるが見捨てることができず、吉田政二の兄から受け取ったバイト代を全額払って捕まった隆太の身柄を引き取る。君江もまた、進次に哀しい思いをさせた償いとして隆太を愛育する。隆太にとっては実の家族にも勝る絆を培った人々。
- ノロ:鼻水をたらした大柄な少年。本名を中里年男と言い、油屋の息子だったが性根の悪いおじさんに財産を横領された上に妹を虐待されて失う。空腹で盗みをしたために少年院送りにされるが、そこで会った隆太と共謀して脱走し、道中で衣食(男の子を騙して身包みを奪い、大根を盗み食い)を調達しつつ広島を目指す。おじさんに報復しようと目論んで失敗するが、隆太とゲンの協力でおじさんを懲らしめて財産を取り返した。
- 平山松吉:元記者で小説家の初老男性。原爆で家族を皆殺しにされたトラウマで無気力化し、職場や親戚からも嫌われてホームレス化したところを隆太と出会う。隆太達に「お父ちゃん」と呼んで貰えたことで勇気を出し、原爆の体験談を小説化して亡くなる。
- 太田先生:元軍人で波川中学教諭。ゲンの担任だったが反戦思想のために追放され、下宿にいたところをゲンやクソ森達に乞われて授業をし、学校に行けなかった隆太も加わる。だが、その目的はラブレターを書くことだった。
- 山本富士子:実在の人物。第1回ミス日本に輝いた女優で、隆太は彼女そっくりな美人の先生がキッスをしてくれるなら必死で止めるとデレデレしたため、次元が低いとゲンにぶたれた。
隆太軍団
原爆孤児の集団で、食べ物集めの上手な隆太を「食糧隊長」と敬称(愛称?)で呼んでおり、変わったあだ名で呼びあっている。3巻の途中で窃盗を働いて逮捕され、離散したが一部メンバーは隆太と合流して活躍している。
- 勝子:隆太のガールフレンド。いつ頃加入したか不明だが、ヤクザの岡内組で隆太と共に働かされていた所をゲンの説得で脱退。原爆で家族が全滅した上にケロイドが顔に残っている事で苦痛を抱えて生きていたが、洋裁の才能を花開かせる。最後は自分を嫁さんにすると言ってくれた隆太を刑務所に入れることをよしとせず、彼と共に東京へと逃避行した。
- ドングリ:食糧隊長・隆太を死んだ弟と間違えて追いかけてきたゲンを隊長の指揮下で繰り出した「必殺チ●ポかみ」で撃退する。少年院を脱獄して隆太と再会し、米軍基地で盗みを働いたり岡内組の鉄砲玉として闘うが相手方のヤクザに射殺される。遺体は家があった紙屋町に埋葬された。
- カッチン:炊き出しの飯(焼きおにぎり)を貰った帰り、隆太や仲間達とともにゲンを迎撃し、ケツにかみつけと指示された少年。タヌキやムスビと共に少年院から脱獄し、米軍基地で食糧泥棒をした時に銃弾を受けて死亡。アニメとコミックでは扱いが違うキャラクターでもある。
- 明夫:隆太軍団では珍しくあだ名のない構成員の一人。飢えて農家で盗みを働き、警察に連行された後の消息は不明。
- 信平:隆太を追いかけてきたゲンの足を噛んで妨害した構成員。明夫と同様、連行後の行方は分からない。
敵対者
- 江波地区の住民:被爆者で孤児でもある隆太達を嫌いぬき、警察に突き出すことも厭わない(林キヨや吉田家の主人など例外もいる)。戦争と言う異常な環境が生んだ荒んだ状況を如実に描くが、その非情さは隆太をスレたリアリストにしてしまうに足りるものだった。
- 島田組:ワイルドな風貌で犬肉を食べたり、憎いアメ公の基地で略奪をする復員兵・大場と、着流し姿の義弟三次。その正体はヤクザ。妹にミルクを飲ませたいと願ったゲンを騙して米軍基地で粉ミルクを奪うと闇市で転売し、抗議したゲンに暴行した。そのため、激怒した隆太にピストルで撃たれて二人とも死んでしまう。
義弟の三次の方は造形がそっくりなキャラクターがアニメに登場しているがモブキャラ扱いで、大量の粉ミルクの缶を売っており、元がミルクを買うためにバイトで得た収入を差し出すと快く大量のミルクの缶を渡した。
- 岡内組:初老の親分と、その配下である首切りの政、政の弟分である秀。組を復興させつつある大場と三次を警戒していたが、彼らを殺した隆太をスカウトして極道者に育てる。ドングリを鉄砲玉に使ったため隆太、勝子とムスビに逃げられ、追撃するがゲンの抵抗に遭う。怒り狂った隆太に恩着せがましく命乞いするが撃たれてしまい、命からがら逃げていった。
- 打山組:岡内組のライバルで、ドングリが死ぬ原因になったマイトの竜造(ダイナマイト所持)が幹部を務める組だが、情けない組長や隆太に些細なことで暴行したクロなど構成員や上層部は間抜け。悪徳医師の倉田や政治家の鮫島を呼んで博奕を開くが、隆太に賭場荒らしをされてしまう。彼らの恨みと怒りは大きく、包囲網が張られたため隆太は逃亡できず警察行きになる。
- 豊子と少年:男女二人連れ。島根の少年院から逃げ出した隆太とノロが「川に財布を落とした。礼をするから探してくれ」と頼み込むと彼らは裸で川に飛び込んだ。そこをついた隆太とノロに脱いだ服を奪われてしまう。大柄なノロは男物しか着られなかったため、隆太は女装して逃げる羽目に…その際に隆太は「人のものはわしのもの~」とジャイアニズム発言をしている。その後、裸にされた二人はどうなったのか不明。
- ノロのおじさん:親類のノロに辛く当たり、妹を虐待死させて財産を奪ったと彼に恨まれて殺されかけた男性。「ノロに今までのお詫びとして犬を買ってあげた」とノロを騙して猛犬をけし掛けるなど卑怯な手段を使うがゲンと隆太に懲らしめられる。実は戦争で全てを奪われた被害者であり、身内や仲間(結託している男女や若者)と共にノロの財産を奪ったのは、金しか信じられなくなったからだった。それを見ておじさんに同情したゲンのとりなしで、財産を返すことで今までの事を許してもらうこととなった。
- 麻薬密売組織:バー「マドンナ」のマスターでサングラスをかけた大男と、その恋人大場ミチや雇人で構成されるスナックだが、正体は麻薬売人ヤクザ。ムスビを薬漬けにして死なせたため、マスターは殺されてミチは手を撃ち抜かれる。その直後に組長と護衛のスキンヘッド男も呼び出され、隆太から皆殺しにされる自業自得の末路を迎えた。