概要
ポケットモンスターXYの舞台であるカロス地方に伝わる神話。
この神話では珍しく、パッケージポケモンについてはあまり語られないのが特徴であり、人とポケモンの戦争、そしてカロス滅亡について語られている非常に重い話となっている。
三千年前にポケモンと人同士の戦争が起こり、当時のカロス地方の王の愛したフラエッテも戦争に使われた。フラエッテはそれによって死んでしまい、王は「命を与えるキカイ」を造り、フラエッテを生き返らせた。しかし、愛したポケモンを一度失ってしまった悲しみにより怒りは収まらず、キカイを最強の「最終兵器」に変え、破壊の神となった王はカロスを滅ぼし、戦争は終結した。その後、フラエッテは王の元から去っていった。
最終兵器
実はこの最終兵器の動力源は膨大な生きたポケモンの生命エネルギーである。これは「命を与えるキカイ」も同様であり、これにより、多くのポケモンがこの兵器の動力源の犠牲となった。ちなみにセキタイタウンやその付近にある多くの石は最終兵器作動のためのガソリンタンクのようなものであり、そこにポケモンを張り付けることでポケモンの生体エネルギーを奪い、「最終兵器」の動力源としていた。フラエッテはこのことに気付き、王の元から去ってしまったのだ。
そして、カロス地方の王とはAZのことであり、「最終兵器」の副作用により寿命が極端に伸びてしまい、三千年以上生き続けていた(不死になったわけではないらしい)。AZのフラエッテも「キカイ」により蘇生しているため、おそらく不死であると思われる。これを真似て作ったシステムをホウエンのデボンコーポレーションが使っており、それが「∞エナジー」である。
戦争について
そもそもなぜ戦争が起こったのかは語られていないが、一つの推測としてカロスの戦争をしていた相手はイッシュ地方ではないかと言われている。その理由としてはイッシュとカロスは交流があったというパルファム宮殿にいるモブキャラのセリフやイッシュにも王族関連の話が出ていること、そして、イッシュにも戦争関連の話がいくつか出ていることが挙げられる。コバルオン、テラキオン、ビリジオンの3匹は戦争からポケモンを守っていたと図鑑で記載されており、彼らは本来はカロスの準伝説だったのではないかという説も存在する(元ネタの三銃士はフランスの小説なので)。いずれにしても憶測の域は出ず、いつか出るであろうリメイクで詳細が明らかになるかもしれない。
伝説のポケモン
カロス地方には永遠の命を持ち、あらゆるものに命を与えると言われる聖獣ゼルネアスとあらゆるものの命を奪い取り、破壊する魔鳥イベルタル、そして、この世界の秩序を司り生態系を監視するジガルデが存在する。本編ではただ単に電池にされていただけだったが、おそらく(直接明言されてはいないが)「最終兵器」を造る上で何かしらの関係があったと推測できる(ジガルデも関係している可能性がある)。XYは珍しく、パッケージポケモンの扱いが雑であり、彼らについて語られることは殆どなく、謎が多いポケモンたちでもある。詳細はマイチェンで語られると思われたがポケットモンスター20周年記念で発売されたポケモンSMによりマイチェンはなくなってしまい、真相は闇の中である。リメイクを待つばかりである。
北欧神話との関連
あくまでネット上の説でしかないが、諸々の要素には北欧神話と共通する点が多く見られるのは確かである(とはいえ、カロス自体のモデルは疑いもなくフランスであり、北欧神話——より広く取ればゲルマン神話——を使うのであればドイツのほうがまだしも望ましかったわけだが)。
地理
北欧神話の世界はユグドラシルという世界樹の元に成り立っており、ユグドラシルからは三本の根が各世界に伸びているという。同様にカロス地方もセントラル、コースト、マウンテンの三地方に分かれているのが特徴である。
余談だが、劇場版ポケットモンスター第8作である『波導の勇者』に登場するはじまりの樹はユグドラシルがモデルとなっており、本作で初登場したルカリオはXYにてメガシンカのチュートリアル役として登場している。
人物/ポケモン
AZ
ビジュアルではAZは片目だけを隠しているが、オーディンも同様に片目を隠している。オーディンが片目を隠しているのは知識を手に入れるために右目を犠牲にしたためであり、AZも同様に、最終兵器の使用と引き換えに長大な寿命を手に入れてしまうというある種の呪いを背負わされている。
加えて、オーディンは戦争と関わりの深い神とされているほか、彼の名前は「怒れる主人」を意味する言葉であり、AZが最終兵器を使った動機も大切なものを失ったことによる「怒り」であった(余談だが、報復を行ったのはオーディンではなく、彼の息子であるヴァーリとヴィーザル、戦争後を生き延びるのも彼らである)。
フラエッテ
AZがオーディンに相当し、彼女が最終兵器使用の切っ掛けになったことを考えるに、光の神バルドルのポジションに位置するのではないかと思われる。
バルドルはオーディンらをはじめとする万神・万物(ロキだけが例外)にこよなく愛された存在であり、ロキの策略に端を発する彼の死がきっかけとなってラグナロクが起こったとされる。しかし、バルドルはラグナロクの後に蘇ると言われており、実際に戦争から3000年後の世界で蘇ったフラエッテはAZと再会を果たすことになる。
また、バルドルの死因はヤドリギとされているが、このヤドリギが寄生した木から養分を吸い取るように、フラエッテもまた他者の命を糧にして甦らされた存在である。
余談だが、AZのフラエッテが覚える技は「はめつの"ひかり"」であったりする(この他にもフラエッテの持つフェアリータイプはマジカルシャインやムーンフォースといった光に関連する技を多く覚える傾向にある)。
ゼルネアス
その風貌から北欧神話に登場する牡鹿エイクスュルニル、または世界樹の中腹にいる四頭の牡鹿に対応するのではないかと言われている。
エイクスュルニルはヴァルハラにいてレーラズの樹(ユグドラシルと同一かどうかは不明)から葉を食む存在であり、四頭の牡鹿ダーイン・ドヴァリン・ドゥネイル・ドゥラスロールはユグドラシルの中腹で枝葉を食べているという。
生物学的には生命を生み出す側であり、樹木のような姿をしていることから、生産者の側に位置するものと推測される。
イベルタル
猛禽類を思わせるその姿と生命エネルギーを吸い取るという設定からフレースヴェルグに対応するものと思われる。
フレースヴェルグは「死体を飲み込むもの」を意味するワシのような魔獣であり、ラグナロクの折には死体を啄ばんで回るという。フレースヴェルグもまた、ユグドラシルに直接の関わりがあり、ユグドラシルの頂上で風を起こしているのだという。
また、生物学的にはゼルネアスと対になっていることから、消費者の側に位置するものと考えられる。
ジガルデ
大蛇を思わせる風貌から元ネタはユグドラシルの根を齧る大蛇ニーズヘッグなのではないかと考えられる。
この他、イヌ科→ヘビ系→巨人というフォルムチェンジの仕方から、ロキの子供たちと結びつける説もある。
そのロキの子供たちというのが大神を食らう魔狼フェンリル、トールと相打ちになった大蛇ヨルムンガンド、ニブルヘイムの主人であるヘルの三人である。特にヘルは右半身と左半身で肌の色が分かれているが、パーフェクトフォルムも同様に右側が青く左側が赤いのが特徴的である。
フレア団
ボスのフラダリはAZの弟の子孫とされているが、この弟こそ、カロスを手に入れるために策謀を張り巡らせて戦争を引き起こした元凶であることがフラダリラボの資料から示唆されている。
フレア団のシンボルは「炎」であるが、北欧神話と炎は切っても切れない関係性にあり、ラグナロクを引き起こす原因を作ったトリックスターロキの司る権能は火である他、世界は最終的にスルトに率いられた火の巨人族ムスペルによって滅ぼされるとある。スルトは炎の剣レーヴァテインで世界を焼き尽くすとされるが、これが最終兵器のモデルになったと考えられる。
最終戦争
一国を揺るがすほどの大戦争や終末論の類はマハーバーラタのクル・クシェートラの戦いや新約聖書のハルマゲドンなどの例があるが、XYという作品の節々に北欧神話の要素が見受けられることから、元ネタは北欧神話の最終戦争ラグナロクではないかと思われる。