概要
『ポケットモンスター X・Y』には「神話」という言葉こそ登場しないが「神」にまつわる伝説がいくつか登場する。
そのため、この記事ではカロス地方の伝説について記述する。
ゼルネアス
『ポケットモンスター X』に登場する伝説のポケモン。
1000年の寿命が尽きようとするとき、持っているエネルギーを放ち、周りに分け与えるありがたいポケモンとされている。
公式サイト『ポケモンだいすきクラブ』では「生命を司る神」と解説されている。
ヒャッコクシティに住む老人はゼルネアスの伝説について以下のように語っている。
800年ほど前のこと、ゼルネアスと呼ばれるポケモンがきらめくツノを広げカロスの大地を照らした途端、辺りの人もポケモンも体に活力がみなぎり…… ゼルネアスを中心に深い森ができたそうです。
そうしてエネルギーを放ったゼルネアスは、まるで枯れた大木のような姿になり、森の奥で身を潜めている…… そう伝わっております。
3000年前カロスで起きた戦争でも、姿を現し傷ついたポケモンたちを救ったポケモンがおり、それをゼルネアスだと考える人もいるようです。まあ、悲しい話に救いを求めるため、伝説のポケモンの出現を願っただけかもしれませんが。
イベルタル
『ポケットモンスター Y』に登場する伝説のポケモン。
1000年の寿命が尽きようとするとき、エネルギーを蓄えようとして周りの魂を吸いとる恐ろしいポケモンとされている。
公式サイト『ポケモンだいすきクラブ』では「破壊を司る神」と解説されている。
ヒャッコクシティに住む老人はイベルタルの伝説について以下のように語っている。
800年ほど前のこと、イベルタルと呼ばれるポケモンがまがまがしい翼を広げカロスの大地を包みこんだ途端、辺りの人もポケモンもばたばたと倒れていった…… イベルタルは鋭く叫ぶといずこかへ飛び去ったそうです。
そうしてエネルギーを蓄えたイベルタルは、まるでマユのような格好になり山奥に潜んでいる…… そう伝わっております。
3000年前のカロスで起きた戦争でも、姿を現し無数の魂を奪ったポケモンがおり、それをイベルタルだと考える人もいるようです。まあ、戦争や疫病を伝説のポケモンとして伝えているのかも知れませんが。
3000年前の戦争
3000年前、カロスで大きな戦争が起こり、当時のカロスの王が愛した一匹のポケモンも戦争に使われた。
数年後、小さな棺が王の下に届いた。王は悲しみの末、「命を与えるキカイ」を造り、愛したポケモンに永遠の命を与えて生き返らせた。
王は愛したポケモンを傷つけた世界が許せず、キカイを最強の「最終兵器」にした。破壊の神となった王は最終兵器を起動し戦争を終結させた。
そして、王が愛したポケモンはキカイおよび最終兵器の動力源が大量のポケモンの命であることを知り、王のもとから去った。
解説
- 「王」の名前はAZ。最終兵器が発した光を浴びたことで寿命が極端に伸びてしまい、現代まで生き続けている(光を浴びただけであるため少しずつ歳は取る)。
- 「王が愛したポケモン」はフラエッテ(えいえんのはな)。現代の通常のフラエッテとは姿が異なる(永遠の命を与えられる前からこの姿)。
- セキタイタウンやその付近にある多くの列石は最終兵器作動のためのガソリンタンクのようなものであり、そこにポケモンを張り付けることでポケモンの生体エネルギーを奪い、「最終兵器」の動力源としていた。
- 『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』のデボンコーポレーションはこれを真似たシステムを作ってしまい、それが「∞エナジー」である。
そもそもなぜ戦争が起こったのかは語られていないが、一つの推測としてカロスの戦争をしていた相手はイッシュ地方ではないかと言われている。
その理由としてはイッシュとカロスは交流があったというパルファム宮殿にいるモブキャラのセリフやイッシュにも王族関連の話が出ていること、そして、イッシュにも戦争関連の話がいくつか出ていることが挙げられる。
コバルオン、テラキオン、ビリジオンの3匹は戦争からポケモンを守っていたと図鑑で記載されており、彼らは本来はカロスの準伝説だったのではないかという説も存在する(元ネタの『三銃士』はフランスの小説である)。いずれにしても憶測の域は出ず、いつか出るであろうリメイクで詳細が明らかになるかもしれない。
北欧神話との関連
あくまでネット上の説でしかないが、諸々の要素には北欧神話と共通する点が多く見られるのは確かである(とはいえ、カロス自体のモデルは疑いもなくフランスであり、北欧神話——より広く取ればゲルマン神話——を使うのであればドイツのほうがまだしも望ましかったわけだが)。
地理
北欧神話の世界はユグドラシルという世界樹の元に成り立っており、ユグドラシルからは三本の根が各世界に伸びているという。同様にカロス地方もセントラル、コースト、マウンテンの三地方に分かれているのが特徴である。
余談だが、劇場版第8作『劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション ミュウと波導の勇者 ルカリオ』に登場するはじまりの樹はユグドラシルがモデルとなっており、本作で初登場したルカリオは『ポケットモンスター X・Y』にてメガシンカのチュートリアル役として登場している。
ポケモン/人物
その風貌から北欧神話に登場する牡鹿エイクスュルニル、または世界樹の中腹にいる四頭の牡鹿に対応するのではないかと言われている。
エイクスュルニルはヴァルハラにいてレーラズの樹(ユグドラシルと同一かどうかは不明)から葉を食む存在であり、四頭の牡鹿ダーイン・ドヴァリン・ドゥネイル・ドゥラスロールはユグドラシルの中腹で枝葉を食べているという。
生物学的には生命を生み出す側であり、樹木のような姿をしていることから、生産者の側に位置するものと推測される。
猛禽類を思わせるその姿と生命エネルギーを吸い取るという設定からフレースヴェルグに対応するものと思われる。
フレースヴェルグは「死体を飲み込むもの」を意味するワシのような魔獣であり、ラグナロクの折には死体を啄ばんで回るという。フレースヴェルグもまた、ユグドラシルに直接の関わりがあり、ユグドラシルの頂上で風を起こしているのだという。
また、生物学的にはゼルネアスと対になっていることから、消費者の側に位置するものと考えられる。
大蛇を思わせる風貌から元ネタはユグドラシルの根を齧る大蛇ニーズヘッグなのではないかと考えられる。
この他、イヌ科→ヘビ系→巨人というフォルムチェンジの仕方から、ロキの子供たちと結びつける説もある。
そのロキの子供たちというのが大神を食らう魔狼フェンリル、トールと相打ちになった大蛇ヨルムンガンド、ニブルヘイムの主人であるヘルの三人である。特にヘルは右半身と左半身で肌の色が分かれているが、パーフェクトフォルムも同様に右側が青く左側が赤いのが特徴的である。
ビジュアルではAZは片目だけを隠しているが、オーディンも同様に片目を隠している。オーディンが片目を隠しているのは知識を手に入れるために右目を犠牲にしたためであり、AZも同様に、最終兵器の使用と引き換えに長大な寿命を手に入れてしまうというある種の呪いを背負わされている。
加えて、オーディンは戦争と関わりの深い神とされているほか、彼の名前は「怒れる主人」を意味する言葉であり、AZが最終兵器を使った動機も大切なものを失ったことによる「怒り」であった(余談だが、報復を行ったのはオーディンではなく、彼の息子であるヴァーリとヴィーザル、戦争後を生き延びるのも彼らである)。
AZがオーディンに相当し、彼女が最終兵器使用の切っ掛けになったことを考えるに、光の神バルドルのポジションに位置するのではないかと思われる。
バルドルはオーディンらをはじめとする万神・万物(ロキだけが例外)にこよなく愛された存在であり、ロキの策略に端を発する彼の死がきっかけとなってラグナロクが起こったとされる。しかし、バルドルはラグナロクの後に蘇ると言われており、実際に戦争から3000年後の世界で蘇ったフラエッテはAZと再会を果たすことになる。
また、バルドルの死因はヤドリギとされているが、このヤドリギが寄生した木から養分を吸い取るように、フラエッテもまた他者の命を糧にして甦らされた存在である。
余談だが、AZのフラエッテが覚える技は「はめつの"ひかり"」であったりする(この他にもフラエッテの持つフェアリータイプはマジカルシャインやムーンフォースといった光に関連する技を多く覚える傾向にある)。のちに続く特殊個体ポケモンの先駆けであるが、これまで公式での配信がなく封印されたままだった。
フレア団
ボスのフラダリはAZの弟の子孫とされているが、この弟こそ、カロスを手に入れるために策謀を張り巡らせて戦争を引き起こした元凶であることがフラダリラボの資料から示唆されている。
フレア団のシンボルは「炎」であるが、北欧神話と炎は切っても切れない関係性にあり、ラグナロクを引き起こす原因を作ったトリックスターロキの司る権能は火である他、世界は最終的にスルトに率いられた火の巨人族ムスペルによって滅ぼされるとある。スルトは炎の剣で世界を焼き尽くすとされるが、これが最終兵器のモデルになったと考えられる。
戦争
一国を揺るがすほどの大戦争や終末論の類はマハーバーラタのクル・クシェートラの戦いや新約聖書のハルマゲドンなどの例があるが、『ポケットモンスター X・Y』という作品の節々に北欧神話の要素が見受けられることから、元ネタは北欧神話の最終戦争ラグナロクではないかと思われる。