概要
イギリス英語を構成する英語方言の一種で、国際的に英語の標準語とみなされている方言、すなわち基幹方言である。イギリス英語は方言が極めて多様な英語区分であり、その多様性は本項で解説する容認発音とアメリカ英語の差異をも大きく上回ることも多いため、イギリス英語がどのような英語かをはっきり定義づけることは困難であるが、一般に特にどこの訛りと言及せず単にイギリス英語と言った場合はこの容認発音を指す。
ただし、21世紀現在この英語を母語として用いる人間は英国内にもほとんどおらず、容認発音をベースにコックニーが折衷し、アイルランドなどの方言の影響を多分に受けた新方言(河口域英語)が広く話されている。
容認発音、コックニーともに実生活においてはほとんど死語であり、ロンドンにおける「容認発音-コックニー-河口域英語」の立ち位置は、東京における「山手弁-江戸弁-首都圏方言」や大阪における「船場言葉-河内弁-関西標準語」の関係に非常によく似ている。
BBCの放送で用いられるため、BBC英語の別名でも呼ばれる。また、王族はこの英語で話すことが社会的に求められているため、クイーンズイングリッシュとも呼ばれる。略称は「RP」。
評価
ハリウッドやディズニーといったサブカルチャーの台頭の影響もあって、国際的にアメリカ英語の話者が増大している今日この頃であるが、未だに敬語表現が乏しく、労働者階級の低俗な印象が残るアメリカ英語よりは、「正しい英語」「正しい発音」「美しい英語」としてこの容認発音、もしくはそれに近い発音の英語を話せる人間は、教養と品位のある証として好意的に受け取られる傾向がある。そのため、格式の高い学会などの場では必須スキルともなる。たとえアメリカ人であっても国際的かつ公式な場では容認発音風の発音を練習してから臨む場合があるほか、極めて訛りのきついオーストラリアでも、格式の高い場では容認発音とほとんど違いのない「Cultivated」という英語を使うのがマナーとされている。
一方、ビジネスの世界では社風や業界にもよるが、気取った印象のある容認発音を過度に古典的であり、「家父長的」「見栄っ張り」「偉そう」「意識高い系」と見做すような雰囲気も、若い世代を中心に存在する。特にアメリカ英語が教育の標準になっている日本やフィリピンではその傾向が強く、あえて容認発音を使う人間が「KY」「ぶりっ子」「気取っている」などのレッテルを貼られることもある。かつて植民地だった影響で対英感情の極めて悪い地域では旧支配者の象徴である容認発音、場合によっては英語そのものがひどく嫌われることもあり、中には英語を公用語としながら英語そのものの学習を拒否する国民が多い国も存在する。
マレーシアやニュージーランド、オーストラリア、ナイジェリアなどの日常的に英語が用いられる英米以外の国では、イギリス英語がベースの英語が用いられる傾向が強いものの、すでにイギリス英語かアメリカ英語かを論じるのも馬鹿らしくなるほどの凄まじい訛りを伴っていることが大半であり、住民も独自の訛りの英語に誇りを持っているため、あえてどちらにも直さない傾向さえある。中にはシンガポールのシングリッシュのようにもはや別言語と化している例もある。
このようにイギリス英語とアメリカ英語はある意味二重規範のような状態で双方が国際共通語として共存している関係にあるため、会話はともかく、聞き取りは容認発音、米語の双方に精通しておくことが社会人として必須とも言える。加えて話者人口増加の著しいヒングリッシュなども問題なく聞き取れるようになるのが理想である。なお、自身の発音についてはイギリス英語かアメリカ英語かということは、すでに英語に堪能な人間でない限りは意識する必要はない。というのも、日本人のEngrishは国際的には印象の良し悪しを通り越して嘲笑の対象であるため、まずは英語として正しい発音を身につけることが必須であるため。「This is an apple.」を「じすう、いずう、あんー、あっぷるう。あっぷるう。」などと言っていたのでは話にならない。誰にも通じない。
特徴
アメリカ英語との比較で記述する。
- 「car」「park」などの母音の後の「r」の音が直前の母音を長母音化する事で発音する。例)She is a good tennis player.(shiiz a gud tanis pleier:米、shii iz a gud tenis pleiyaa:英)
- 上述の無音化したrが、直後に母音で始まる語がきた場合リエゾンにより復活する。例)The car is hers.(dha kaa riz haaz.)
- 「can't」の代わりに「cannot」 を用いることが好まれる。
- 「what」「why」などの「wh」の音が「w」化せず、「ホワット」「ホワイ」のように読まれる。
- 「c」の音を「カ行」で読む傾向が強い。例)I can speak the BBC English.(Ai kyan spiik δa bii-bii-sii Inglish:米、Ai kan spiik dha bii-bii-sii Inglish:英)
- 母音を伴わない子音をはっきり発音せず、曖昧化させるため、そこはかとなくセクシーな雰囲気を醸し出す。
- 「ウー」と読む音を「ュー」と読む。例)cartoon(kartuun:米、kaatyuun:英)
- 結果として音韻学的に綺麗な言語と言われる傾向が強い。国際的に「音が綺麗な印象のある言語」「音が汚い印象のある言語」の双方のアンケートをとったときに、英語はどちらにもランクインする傾向があるが、前者に投票した人間はイギリス英語を、後者に投票した人間は米語やヒングリッシュを思い浮かべて投票している傾向が強いとされる。