概要
基準は地域や時代によって変わり一定しない。
元々コンパクトカーとは、アメリカ合衆国で従来の「フルサイズ」や「ミッドサイズ」よりもサイズが小さく、購入や維持のコストが低い乗用車を意味していた。その後、欧州や日本でもこの用語が使われるようになるが、欧州車や日本車の乗用車は、北米の基準ではほとんどがコンパクトカーかそれより小さいサブコンパクトカー(Subcompact car)に当たる。
北米におけるコンパクトカー
北米(アメリカ合衆国とカナダ)では全長5.5 m、全幅が2mにも及ぶようなラージカー(Large car、ホイールベース120インチ=3048mm以上の乗用車)がフルサイズカー(Full-size car)と呼ばれファミリーカーの基準となっており、これよりも大幅に小さいサイズの車をコンパクトカーという。概ねホイールベース100インチ(2540mm)以上110インチ(2794mm)未満の乗用車で全長にすると4300 mmから4,00 mmくらいである。フルサイズとコンパクトの中間的なサイズの車をミッドサイズ(Mid-Size)とかインターミディエイトなどと呼んでいる。
日欧でいうコンパクトカーのほとんどは、北米ではその下のクラスであるサブコンパクトカーに入る。
欧州におけるコンパクトカー
欧州では一般的にAセグメント(同3800mm以下)とBセグメント(同4200mm以下)が該当するとされる。過去には高速走行が楽になるよう2000cc以上の比較的大きなエンジンを搭載したモデルも多かったが、近年は燃費を向上させる目的で小排気量エンジンにターボチャージャーを装着した「ダウンサイジングターボ」が主流となっている。
日本におけるコンパクトカー
日本では、事実上標準的な大衆車となっている軽自動車よりも一回り大きいクラスを指す。日本では基本的に、車幅1.7m、全長4.7m以内の「小型自動車」枠(乗用は5ナンバー)に入る乗用車が「狭い道で取り回しやすく、駐車場で乗り降りしやすい」として好まれるため、1990年代~2000年代にはこのクラスのハッチバックやミニバンが大衆車として人気であった。
ただし、コンパクトカーはその中でもハッチバック型(いわゆるトールワゴンを含む)に限り、5ナンバーであってもステーションワゴンとかセダン(カローラアクシオしかないが)とかミニバンはコンパクトカーとは区別されるのが一般的である。また後述の事情から近年は全幅が1.7mを若干超える3ナンバーのコンパクトカーも増えている。
特徴
軽自動車と同様、車内空間を確保する都合上、現行車の大半が前輪駆動(FF)またはFFベースの4WDである。エンジン排気量は1000~1500cc程度、過去には直列4気筒エンジンを搭載した車種が多かったが、近年は直列3気筒エンジンを搭載するものが主流となっている。燃費対策は欧州と異なり自然排気エンジンか電気モーターを組み合わせたハイブリッドカーが主流で、ダウンサイジングターボの普及は進んでいない。
上級クラスと比べると新車価格が比較的安価であり、また軽自動車と比べると中古車価格が割安になる傾向がある。2010年代以降はコンパクトカーの肥大化(後述)もあって取り回しが楽で維持費が安価な軽自動車にユーザーが流れた。このためコンパクトカーは売上を落としつつあるものの、長距離走行や高速走行が楽などの理由からコンパクトカーを好む人もいる。
ステーションワゴンとの違い
ステーションワゴンとは同じハッチバックタイプであり、使い勝手が似ている面があるが、イメージ的にはコンパクトカーはセダンからトランクルームを切り落とした車、ステーションワゴンはセダンの屋根をトランク部分にまで延長した車と言える。そのため、荷室部分はかなり切り詰められており、積載性はステーションワゴンに劣る。とはいえ、セダンとは異なり後部座席が折り畳めるため、定員乗車に拘らなければセダンよりは大きな荷物を乗せられる車種が多い。基本的には、後席ドアとリアハッチの間に窓があるものがステーションワゴン、窓がないか、あっても小さいものがコンパクトカーであると考えてよい。日産ノートやスバルインプレッサスポーツなど、両者の中間的な特徴を有する車種もあり、区分は厳密ではない。
レンタカーにおけるコンパクトカー
車格が手ごろないためにマイカーと運転感覚が異なっても車体感覚が掴みやすい、慣れない旅先でも小回りが効くなどレンタカー向きの条件が揃っているため、レンタカーとしての登録台数が多い。料金も軽自動車よりやや高い程度の比較的リーズナブルな価格が設定されている。無人貸出のレンタカーであるカーシェアリングにおいてはこの傾向がいよいよ顕著であり、例えば最大手のタイムズカーの場合、2023年1月6日現在の在籍車両数はヤリス3861台、ノート3218台、ソリオ2330台、デミオ2300台と、登録台数上位の車種は軒並みコンパクトカーばかりである(同日の公式サイト参照結果。必要に応じて適宜更新願います)。参考までに軽自動車最多のウェイクは963台、ミニバン最多のシエンタは873台と、遠く及ばない。人気のプリウスはわずか161台、車種群としては人気のあるSUVで最多のライズも1248台しかない。
コンパクトカーの肥大化
1990年代以降、乗用車の大型化(特に横幅)が進んでいることから、日本ではユーザーが上位車種からコンパクトカーへ、さらには軽自動車に流れる「ダウンサイジング」の流れが目立っている。
現行の国産コンパクトカーはソリオ(1645mm)やマーチ(1665mm)など一部を除き、5ナンバー枠一杯(1680〜1695mm)の車幅である。これはワンクラス上のCセグメントハッチバックや中型ミニバンと同等の数値であり、バブル期前のミディアムセダン並みである。アクアの「クロスオーバー」、4代目フィットの「クロスター」など、車幅が小型車枠を超えてしまった「コンパクトカー」もある。
輸入車に至ってはさらに肥大化が顕著であり、3代目MINIをはじめ、VWポロ、プジョー208、アウディA1などその多くが車幅1.7mを超えてしまっている有様で、車幅1.7m以内の現行車種はルノートゥインゴ/スマートフォーフォーなど数少なくなった。