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概要編集

シリンダーが3つ直列に並んでいるレシプロエンジンのこと。2020年代の現在、二輪車での採用は限定的だが、コンパクトカー軽自動車のような小排気量の四輪車では最も一般的なエンジンレイアウトである。


メリットは同じ排気量の直列4気筒エンジンと比較すると冷却・摩擦などによる損失が小さくなり、加えて低回転でも高トルクを得られるので低燃費化しやすくなること。また複雑なエキゾーストマニホールドが不要になるため、排気系を簡略化でき軽量化・低コスト化にも繋がる。一言で言えばコスパに優れているのである。


デメリットは爆発回数の少なさに起因する騒音や振動、トルク変動である。構造上一次振動・二次振動ともに打ち消すことができるが、エンジン全体が円を描くように動いてしまう「偶力振動」(味噌擂り運動)が発生する。そのためエンジンマウントの工夫をしたり、出力の一部を代償とする"バランサーシャフト"を搭載してこれを抑え込む必要がある。

(なお偶力振動自体は単気筒や直列2・5気筒でも発生するが、単気筒はバイクのみで排気量も小さい分大きな問題とはならず、2・5気筒は欧州のごく限られた車種でしか採用が無いため、メディアや一般消費者の間では自動車の直列3気筒の偶力振動が取り沙汰されやすい)


また回転域が高くなるほど、あるいは排気量が大きくなるほどこの振動の不快感やエキゾーストノートの雑味が目立ち、質感が劣るようになる。そのため高級車に直3が採用されることは最近まで無かった。ちなみに直列2気筒と比較すると、これらのメリット・デメリットは反転する(直2の方が燃費・コスト面で有利だが、雑味も増す)。


↑直列3気筒と直列4気筒の振動の大きさの違いを、水の振動で可視化した動画(比較は3:20〜)。

ヤリスクロスの直列3気筒『M15A-FKS』はバランサーシャフトが採用されているが、それでもここまで振動してしまう。


V型6気筒は仕組みとしては片バンクが直3となるため、やはり偶力振動が発生する。また同じく3の倍数の気筒数である直列6気筒だが、こちらは一次振動・二次振動・偶力振動ともにうまく消し合えるため、逆に「完全バランス」と称される形式に変貌する。


二輪車の直3編集

二輪車では2気筒と4気筒の中間という、ややもすると中途半端な立ち位置から定期的に流行ったり廃れたりを繰り返しており、現在はトライアンフヤマハMVアグスタのような特定のメーカーが盛んに作っている。

MVアグスタは1960年代に直3でWGP(今のMotoGP)を席巻していたこともある。またトライアンフも2019年から現在まで、Moto2に直3エンジンをワンメイク供給している。


二輪車から派生したサイド・バイ・サイド・ビークル(四輪バギー)も、直3を搭載することが多い。


四輪車の直3編集

四輪車では主に1,500cc以下の小排気量のガソリンエンジンに採用されている。四輪車の2気筒は非常にレア(先進国で買えるのはフィアット500くらいしかない)なため、事実上の最小気筒数である。軽自動車は、最後まで直4エンジン(4A30)を採用していたパジェロミニの廃版に伴い、全て直3となった。


2ストロークエンジンを得意としていた西ドイツのDKWは2ストローク3気筒エンジンを「4ストローク6気筒に比肩する」スムースなエンジンとして宣伝。自社の小型車に積極採用し、同じく2ストロークエンジンを得意としていたスウェーデンのサーブや日本のスズキに影響を与えたが、排ガス問題で1970年代までに姿を消した。


一方、4ストロークエンジン用の直列レイアウトとしては、メリットが薄い割に問題が多いとされ、長らく廃れていたが、1977年にダイハツシャレードに搭載したCB型エンジンでリバイバル。バランサーシャフトを付けて直3特有の振動を低減する工夫を施したもので、オイルショック後のガソリン価格が高騰していた世相から大いに注目を集めた。スズキも対抗して軽自動車向け4ストローク直3のF5Aエンジンを世に送り出す。コストダウンと出力ロス低減のためにバランサーなしで騒音を低減する工夫を施しており、後の直3はダイハツも含めてこちらの形式が主流となった。ダイハツは1983年に直3ディーゼルエンジンのCL型を開発、当時としては驚異的な30km/L超えの燃費を誇ったが直3+ディーゼルの激しい振動と騒音はいかんともしがたく、これを逆手に取った「Rock’nディーゼル」のキャッチコピーで売り出していた。


その後、エンジンマウントの進歩などでネガな点が潰されていき、コスト削減と効率向上(熱効率向上とフリクションロスの軽減)の両立ができることから、BMWメルセデス・ベンツといった欧州高級車ブランドや、GRヤリス/GRカローラのようなスポーツカーも積極的に1.5L級の直列3気筒をターボと併せて採用。エンジンのダウンサイジングと燃費向上のトレンドの中で、最も注目度の高いエンジンレイアウトとなっている。


しかしトヨタは2024年に、フリクションロスで不利なはずの1,5L直列4気筒を再開発(エンジンの全高を下げて空気抵抗を減らすため)して直列3気筒に置き換えることを表明しており、トレンドが再び転換するかどうかが注目される。

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